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溺愛王子と寡黙令嬢  作者: 御節 数の子
サラの人生
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サラの人生1

新たな人物の登場です。

私は男爵令嬢、と言っても末端の末端。なんなら今にもその肩書きは無くなるかもしれない。商売を拡大させ、この地で男爵の肩書を賜ったのは曽祖父。祖父、そして父で3代目となる。3代の間で更なる成果を上げなければ、男爵の地位を継ぐことはできなくなる。


もともと平民だった祖父は貴族の肩書にそこまで執着はなかったようだ。一方、父は産まれながらにして貴族であり、貴族として自分の地位を確立させようと躍起になっていた。もっとも、それが成果を挙げているとは言い難く、肝心の商売も停滞気味であった。


そんな末端男爵家に産まれた唯一の赤子が私。零細貴族の娘を貰ってくれる貴族なんかいるはずもないのに、父は私を王都に送り出し、片っ端からお茶会に参加させた。私としては結婚相手は平民でも良かったし、なんなら商家の息子なら最高だった。


そんな私が彼と出会ったきっかけは本当に些細なことだった。


「すいません。お嬢さん。怪我はありませんか?」


街中で肩がぶつかった。軽くぶつかった程度だが、体重差によって思いがけない衝撃だった。尻餅をついた私に手を差し伸べてくれたのは、爽やかな青年だった。


今から思えば、あれは彼がわざと私にぶつかったのだろう。それほど人通りは多くなかった。それに平民にしてはいい服を着ているな、と思った。ただ、()()()()貴族が一人で歩いているわけもなく、王都でもそれなりの立場にある平民だと思い込んでしまった。


私と彼は逢瀬を繰り返した。忙しい彼と会うのは月3-4回がせいぜいだったが、お互いに心が開かれていくのがわかった。相手は平民なので、父には内緒にしていた。


いつもより少し格式の高いレストランに招待されたとき、私は浮かれていた。


「ここに来たのは実は君に言いたいことがあるからなんだ」


きた!と私は身構えた。


「実は僕はこの国の王子なんだ」


「・・・は??」


彼の言った言葉を、私は瞬時に理解することができなかった。まず、王子がなぜ、街中で私と逢瀬を繰り返し、食事を共にしているのか。そもそも、王子には数年前、婚約者がいるはず。


「その婚約者は、お互いに何も思ってないんだ。むしろ、向こうは僕との結婚を嫌がっている」


それはそれで衝撃だった。こんないい人との結婚を嫌がる女性がいるとは。でも、私が婚約者になってもいい、ということ?


「近々、彼女との婚約を破棄する。彼女も喜ぶだろう。そしたら一緒になろう?」


その時、私は色々あって混乱していた。


いや、それは言い訳に過ぎない。理性はガンガンと警鐘を鳴らしていた。婚約者の王子を好きになり、それだけならまだしも私が婚約者の座を奪うなんて。


だが、一度走り始めたら止まらないのが乙女心だ。理性とか関係がない。私は気がついたら彼の求婚に頷いていた。


その後、彼は計画を語ってくれた。やはり私の身分の低さは気になるらしい。1ヶ月後に開かれる夜会で婚約破棄を言い渡すのだとか。


「大丈夫かしら」


実際に話を聞くと、不安が込み上げてくる。


「大丈夫だよ。実は両親もこのことは知っててね。了解してくれてるんだ」


私はその言葉にホッとした。王子だけならともかく、国王皇后両陛下のお墨付きがあるなら、安心だ。


1ヶ月後。私は王子からもらった招待状を持って王宮に向かった。だが、王宮に入ると、私は後悔の念に駆られた。


私は末端の末端に位置する男爵家の娘。王宮に入ったのは12歳の時にデビュタントで入ったっきり。少し年齢を重ね、周りが見える歳になってわかる。


ここは私がいるべきではない。


私の精一杯のドレスも、周りにいるどのドレスよりも二段階は下だ。それに化粧や装飾品も素人目にも違いがわかる。何よりも聞こえてくる会話が高度過ぎてわからない。


いくら国王皇后陛下が了解してたって、ここに私の居場所はない。


王子への愛よりも王宮の雰囲気に飲まれてしまった私は、回れ右をして帰ろうとした。だが、一足遅かった。


「サラ、ここにいたのか。まあすぐ始まるよ。さぁ、おいで」


一刻も早くここから逃げ出したかったが、王子の声と手から逃げ出せるはずもない。声を出そうにも喉が渇いてヒューヒューと掠れた息しかできない。


王子の行動は当然、目立つ。他の貴族の目線が突き刺さる。


「あれは誰だ?」「見たことないぞ」「王子には婚約者がいたはず」


そんな声が聞こえてくる。心臓がはち切れんばかりに打ち鳴らす。冷や汗も出る。顔もおそらく青いだろう。だが、王子は気にもかけてくれない。


「みなのもの!静粛に!」


会場の真ん中で王子は大声を出した。みんなの視線が集まる。私はもう、意識を保つことで精一杯だ。


「私はエマ・ウォーカーとの婚約を破棄し、サラとの婚約を結ぶことを宣言する!」


視線が私と、そしてもう一人の女性に集まる。パッと見た感じ、私よりも2-3歳下。しかし、顔が青ざめて冷や汗を流す私と、平然と扇を構える彼女との差は一目瞭然だった。


叶わない。


私は瞬時に悟ったが、やはり声に出せない。

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