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溺愛王子と寡黙令嬢  作者: 御節 数の子
エマの人生
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エマの人生6


「ダレル殿下。アラン・ガーフィールドにございます。殿下のお役に立てるよう、精一杯頑張ります」


若干12歳とは思えない、しっかりとした男の子がダレル殿下に挨拶をした。私は名前だけで、直接お見かけたことはないが、2人は初対面ではないようだ。


人懐っこい笑みを浮かべるアランに対し、殿下は正反対の冷たい視線を与えた。


「なんだ。お前も親のレールに沿ってきたのか。つまらんやつだな」


殿下の発言の意味はあとで考えるとして、今は固まってしまったアラン様に気をかける。


「貴方がアラン様ですね」


私の言葉にアランが反応する。どうやら、硬直から溶けたようだ。


「私はウォーカー家長女、エマ・ウォーカーと申します。アラン様は殿下の側近になるお方で大変優秀だと伺っております。以後、お見知り置きを」


「あ、ご挨拶が遅れました。ガーフィールド家次男のアラン・ガーフィールドです。エマ様は王妃になるために日々努力されていると伺ってます。僕も負けないように頑張ります」


「ええ。お互いに殿下を支えていきましょうね」


私がアランと挨拶を交わしていると、ふん、という声が聞こえた。振り返るとアランが不機嫌そうな顔をしている。どうやらこの場から離れたいらしい。


「待ってくださいまし」


私がそういうと、またもやため息をつきながら右手を差し出す。私はその手を取って他の貴族に挨拶に回る。


私の実家であるウォーカー家やアランの実家であるガーフィールド家を含む、わずか数家を回ったところで、殿下はパーティ会場から離れようとした。


「どこに行かれるのですか?まだダンスも踊ってませんのに」


「どこに行こうと俺の勝手だろう?」


「しかし、今日は2人での社交界デビューの日。せめてダンスくらい踊らせてください」


「ふん!」


私は殿下とダンスをするのを楽しみにしていたのだが、殿下はそうではなかったらしい。


一人でトボトボと会場に戻り、家族のもとに向かおうとする。しかし、私の立場がそれを許してくれない。次から次へと話しかけてくる。お茶会などで顔を見たことのある貴族はわかるのだが、流石に男爵以下は全くわからない。家族のいる場所は遠く、助けを求めることもできない。


「あら?エマちゃん。大人気ね」


てんやわんやしていると、なんと皇后陛下が声をかけてくださった。周りにいた人たちがサッと引く。


「アラン殿下は休憩に行かれてるのかしら?」


「は、はい」


「仕方ない子ね。じゃあ、こちらにいらっしゃい」


「は、はい。ではみなさま。ごゆっくりお楽しみください」


私は周りにいた貴族たちにカテーシーをすると、皇后陛下についていった。


「ありがとうございます」


私は小声で皇后陛下にお礼を言う。


「礼を言われるほどのことではないわ。でも、これからは自分で相手をしないと、ね」


「はい」


ホッとしていた私に喝を入れられた気がした。まだまだ知らないことが多いことを再認識する。


「今日はダレルもいないし、ご家族とゆっくり過ごしなさい」


皇后陛下は私を家族のもとへと送り届けてくれた。


「そうそう」


皇后陛下は去り際に私の耳元で囁いた。


「エマの今日のドレス、とっても素敵よ」


私はボッと顔が赤くなるのを感じた。


その後、久しぶりに家族と過ごす時間はあっという間だった。家族も私のドレスを褒めてくれた。


しかし、ダレル殿下が再びパーティ会場に現れることはなく、私のファーストダンスの相手は兄となった。父は悔しそうにしており、少し心が安らぐ。


こうなるだろうという予感はなんとなくあった。私がプレゼントしたはずのブローチが、殿下の胸になかったから。


パーティを終えて、しばらくすると日常がやってきた。私は殿下に花や刺繍を入れたハンカチ、それに時々だが手紙を贈っていたが、その返事がくることはない。


3ヶ月ほどすると、私のところにアランが訪ねてくることになった。ちょうどお茶の時間が空いていたので、アランを招待した。最初は渋っていたアランだったが、「側近として殿下について回るとき、王妃とお茶をする機会もあるかもしれないし、その練習だと思って」と半ば強引に席に座らせた。1人よりも2人の方が楽しい。


お互いに一口ずつ紅茶に口をつけたのち、アランが喋り出した。


「実はエマ様にお願いがあって参りました」


「私にできることかしら?」


「できるかどうか、というよりも殿下からのご命令です」


「殿下から?」


命令とはいえ、頼まれごとをするということは、頼りにされているのだろうか。


「はい。誠に言いにくいのですが、殿下の仕事を少々手伝っていただきたく・・・」


「アラン様?」


アランが声を小さくなりながらも言い切る前に、マリーが低い声を出す。


「その仕事はダレル殿下に与えられたものであって、エマ様には関係ないはずでは?」


「確かにそうなのですが、殿下の仕事は徐々に多くなり、停滞気味なのです」


「それなら国王陛下に頼んで量を減らしてもらいなさい」


「しかし、エマ様も王妃教育を受けておられます。そのような時間は・・・」


「わかりました。お引き受けしましょう」


私はサリーを遮って言うと、アランは少し嬉しそうな、ホッとしたような表情を見せた。

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