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溺愛王子と寡黙令嬢  作者: 御節 数の子
ダレルの人生
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ダレルの人生5

「殿下は僕に話を振ってくれましたが、それ以上に話を広げることはできません。『自分から聞いといて、興味がないのか』と思われてしまいます」


「な、なるほど」


俺は納得した。思い当たる節は多い。


「この際ですからはっきりと言いますが、殿下の社交界での評価は低いです」


「低い?まだ数回しか顔を出してないのに?」


「ええ。成人して4年。今年の成人の儀で()()()()()()()社交界に参加した殿下に興味津々でした。しかし、実際に話をしてみるとその知識のなさを露呈しました。新成人の家を含め、殿下よりもエマ様に顔を覚えてほしいと思ってる家がほとんどでしょうね」


「そんなにか?」


本当にわずかな会話。その会話でそこまでの評価をされたというのか。


「逆に伺いますが、殿下に顔を覚えてもらって、メリットはありますか?先ほど、僕がお話しした課題を殿下に話して、僕は何か有益な情報を得ましたか?」


アランは書類をまとめて立ち上がった。


「ちなみに、エマ様は参加する貴族の家族構成や仕事内容はもちろん、彼らの趣味まで把握して臨まれてましたよ」


アランは「お昼休憩をいただきます」と言って退室した。


俺は自分の評価を知り、それと同時に、エマがどれだけ努力していたかを知り、呆然とした。


それでも、俺は社交界に出続けた。相変わらず1人で過ごすことが多かったが、それ以上にエマの姿を見るのが楽しかった。髪型やドレスを変えると、その度に違う印象を受ける。


俺はエマの隣に立ちたいと、努力を重ねた。


おかげで座学は半年程度で講師から卒業と言っていただいた。マナーに関しても恥ずかしくないと言ってもらえた。社交界でも努力の甲斐あって、少しは会話をできるようになってきた。


唯一の不満はダンスだ。社交界での会話では無理でも、せめてダンスはまともに踊りたい。


その一心で練習し、今では難しいステップもマスターした。だが、それを披露するには相手との呼吸も必要だ。だからエマを練習に誘っているのだが、一度も練習に来てくれない。本人は忙しいと言っているが、避けられている気もする。


仕方がないので折を見て花束やアクセサリーをプレゼントしてみるが、こちらも反応が薄い。


手紙も書いてみたが、これに関してはもっと酷かった。何通か送った後になってようやく返事が来たと思ったら、『仕事の書類に埋もれてしまうので返事ができない』という内容だった。


順調な自分の進捗と、全く進まないエマとの関係に悶々とした日々を過ごす中、父に呼ばれた。


「座学を修了したそうだな」


「はい」


俺は父に頭を下げた。


この半年で、いかに自分の態度が悪かったかを知った。今は父の執務室に呼ばれている。それはすなわち、親子ではなく仕事上の関係であるということだ。


「半年後、予定通りお前を王太子に任命する」


「はっ!引き続き精進いたします」


俺は頭を下げたまま応えた。


「明日から王子として仕事を与える。詳細はアランに聞くように」


父はこう言い放って退室を促した。俺はてっきり、父からいろいろ教えてもらえるものだと思っていたので、拍子抜けをした。


翌日。アランは書類を俺の机に置いた。


「とりあえず、殿下の課題はこれです」


俺は書類に目を通す。


「これは各領主から届いた意見書です。この中で国としてどうすべきかを考えてください」


俺は書類をちらりと見た。作業としてはやったことはある。数年前だが、苦労した記憶はないので簡単に終わるだろう。


俺は数時間かけて書類に目を通す。多くは人手と予算の要請であり、それに関してはできる限り応えるように返答をする。税率に関しては国が決めていることであり、一介の人間である俺が決めることではない。


中には意味がよくわからない意見書もあり、それに関しては無視した。


「できたぞ」


1日もあればこれくらいの仕事はできる。俺は意気揚々とアランに提出したが、アランは受け取らなかった。


「殿下。これでは仕事をしたと言えません」


「どういうことだ?」


「殿下の対応をすべて取り入れたら、予算が1.5倍、人員は2倍必要です。どこにそんな余裕があるのですか?国民から税を取り立てますか?徴兵しますか?」


アランはぶっきらぼうにそう言った。ここ1-2年は一緒にいる機会は少ないが、俺に対する扱いがぞんざいだ。


「おい、アラン。俺に対する扱いが雑じゃないか?」


「そうですか?確かに僕は国王陛下の信頼も厚く、2歳歳上の殿下に仕事を教える立場ですから、妥当かと思っていたのですが」


「しかし、限度というものがあるだろう?」


「まだ現実を見てないようですが、これが一般的な同年代の気持ちですよ。皆さんは大人ですから態度には出しませんが、一日中お付き合いしてる僕は気疲れしてしまいますので」


アランは立ち上がると、定時ですので、といって部屋を出ていった。


俺はアランの態度に憤慨し、夕食時に父に文句を言った。半年前は全く会話に参加できなかったが、今は世間話をしてもマナーを守れるくらいにはなった。


「アランに関してはワシが一任しておる。お前の側近として数年間働いた男だから、ダレルのことは一番知ってるだろう」


父は俺の訴えを退けた。俺は不服だったが、エマの手前、あまり駄々を捏ねたくない。渋々頷いて、俺は食事を続けた。

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