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溺愛王子と寡黙令嬢  作者: 御節 数の子
ダレルの人生
23/31

ダレルの人生3

父に続いて母が口を開いた。


「お茶の生産も始めたって聞いたわ」


この質問にはファニーが答える。


「はい。恥ずかしながら蓄えが少ないため、あまり高価なお茶は使えません。娘への教育にもよくないので、安価な茶葉を栽培できれば、と考えております」


「いい試みね。うまくいけば民も喜ぶわ」


母もロマンへの言及はない。


「ロマン」


俺の婚約者であるエマは、流石に俺を蔑ろにしたことを咎めるだろうと思ったが、そうではなかった。


「将来はどうしたいの?」


「はい!父上、母上のような立派な領主になりたいです!そして、エマ様のような女性と結婚したいです!!」


「あらあら。ロマンはもう立派な次期領主よ。きっと、私よりもいい女性と巡り会えるわ」


エマの言葉に、ロマンは頬を染めた。


俺が怒れる雰囲気ではなくなってしまった。


「では、下がって良いぞ」


「は、はぁ」


「この場のことは咎めるつもりはないから、安心しなさい」


父のその言葉を発すると、ようやくホッとした表情で下がっていく。ロマン自身だけはことの重大性を理解できておらず、ニコニコと笑いながら下がっていった。


「皆のもの、少し中座するが、引き続き楽しんでくれたまえ」


ようやく会場の食事を楽しめると思った矢先、父がそういうので俺は会場から離れざるを得なかった。ただ、先ほどのことを聞きたかったから、そういう意味ではちょうどよかった。


「父上。さっきのカントナ子爵の長男になぜ、叱責しなかったんだ?俺の面子はどうなる?」


「お前に潰れる面子があったのか」


父が驚いたように返す。予想外の反応に、俺はむしろたじろぐ。


「まず、この場で私はお前の父ではない。国王だ。まずは話し言葉から治せ」


父が怒りを見せたのはいつ以来だろうか。強い印象は残っていないから、その場から逃げたのだろう。今も逃げ出したかったが、流石にこの場から逃げることはできない。


逃げ道を探し、助けを求めるべく母とエマに目を向けるが、こちらのことは気にせずに笑っている。なぜこの空気の中、笑えるのかは謎だ。


「まぁ、お前はまだまだ子どもだ。子どもにも色々な者がいる。お前はロマンと同じか、それ以下だ。子どもに潰れる面子があるはずなかろう」


父は怒りをおさめ、呆れたように言い放った。俺は何かを言い返したかったが、何を言えばいいかわからないまま、3人とともに会場に戻った。


会場に入ると、父と母が一緒に貴族たちとの会話に参加した。エマもすぐに女性を中心とした貴族に囲まれた。中には男性も混じっており、満更でもなさそうな表情で会話している姿を見ると、少し苛立ちを感じた。


その後、新成人を含めた貴族とも話をしたが、会話が盛り上がることはあまりなかった。


その中でカントナ子爵が声をかけてきた。


「ダレル殿下。先ほどは愚策が大変失礼なことをしました。陛下はお許しになられましたが、罰は受けるつもりです。しかし、領民もいます。何卒寛大な措置をお願いしたく存じます」


子爵は頭を下げる。


「カントナ子爵。頭をあげていい。陛下がお許しになっているのだから、俺も子爵を罰するつもりはない」


俺は正直に言った。怒りを覚えていたのは事実だが、今はその気持ちは霧散していた。それよりも気になることがある。


「ロマンはなぜ、俺のことを言わなかったのだ?正直にいってくれ。先ほども言ったが、罰するつもりはない」


しばらくカントナ子爵は黙っていたが、意を決して口を開いてくれた。


「ご存知の通り、我々の領地は辺境にあります。中央との繋がりも薄く、貴族というよりは平民に近い生活をしております。愚息もその環境で過ごしましたし、辺境まで来てくれる家庭教師も限られますので、恥ずかしながら出来がよくないところがあります。なんとか、形にはしました。しかし・・・」


カントナ子爵は言い淀んだ。もう一度、俺が話せと言うと、少し小さくなった声で言った。


「正直、殿下が参列されるとは思わなかったのです。これまでの成人の儀では参列されるのは両陛下とエマ様だけでしたので。慌てて口上を修正しようとしたのですが・・・」


カントナ子爵は再び頭を下げる。


「わかった。よく話してくれた」


俺がそういうと、ホッとした様子でカントナ子爵は家族の元へ帰っていった。


俺は複雑な気持ちで彼の後ろ姿を見送った。


両親は連れ立って高位貴族たちと話をしている。時折笑顔も混じる。エマは1人だが、こちらも新成人を含めた貴族たちと盛り上がっているようだ。挨拶だけで終わってしまった俺は、手持ち無沙汰になった。


必然的に俺は壁のシミになる。だが、誰も声をかけることはない。気にしていないわけではないが、遠巻きにこちらの様子を伺っていることはわかる。


声をかけようかどうか迷ってる間に音楽が鳴りだす。

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