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溺愛王子と寡黙令嬢  作者: 御節 数の子
エマの人生
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エマの人生2

マリーに部屋まで案内してもらう。家でも自分の部屋を持っていたが、それと同じくらいの広さだった。あまりに広いと落ち着かないが、ちょうどいいと感じる。しかし、調度品に関しては家のそれとは一線を画していた。12歳の私にわかるくらいだから、相当なのだろう。


部屋の調度品を壊さないよう、恐る恐るソファで休んでいると、マリーが国王皇后両陛下との夕食会があることを伝えられた。


家から多くのドレスを持ってきており、すでにクローゼットに収納されていた。王族との食事の時にどのようなドレスを着ればいいか、マリーと相談しながら選んだ。殿下の心うちは不明だが、国王皇后両陛下の不興を買ってはいけない。


しっかりと髪型もセットしてもらい、外に出ようとするが、マリーに止められてしまった。


「お待ちください。エマ様は殿下の婚約者です。殿下のエスコートを待ちましょう」


当然だが、家ではエスコートされることはなかったので初めてのルールだった。


「いつもそのようにするのでしょうか」


「いえ、今日はエマ様が来られた初日です。国王陛下もお忙しく、なかなか夕食をご一緒することはないと思います。今日は特別ですから、エスコートも今日だけだと思います」


エマはホッとした。毎日エスコートされるのも、少し肩ぐるしい。


エマとマリーはダレン殿下の訪室を待ったが、ノックの音は聞こえなかった。仕方なく、エマとマリーは2人で食堂へ向かった。


食堂に入るとすでに国王皇后両陛下ともに席に座って待っていた。しかし、ダレン殿下の姿はなかった。


「遅くなって申し訳ありません」


私は待たせたことに対して頭を下げたが、2人は気にしていないようだった。一方、私がマリーと2人で来たことに眉をひそめた。


私がマリーに皇后陛下の隣の椅子を引いてもらって席に着くころ、やや乱暴に食堂のドアが開いた。そこにはダレン殿下の姿があった。


「ダレン」


ダレンが黙って席に座るのを待って、国王陛下が口を開いた。


「今日はエマ嬢、いやエマを我が王宮にお招きしためでたい日だからあまりお小言は言いたくないが、エマをエスコートしなかったのか?」


「部屋に行ったらもういなかったので」


「私が早くで過ぎてしまって、申し訳ありません」


私が立ち上がろうとすると、それを隣に座っていた皇后陛下が制した。


「エマは謝る必要はないわ。時間は伝えていたでしょう?なぜもっと早く迎えに行かなかったの?」


「ちょっと準備に手間取って」


ダレンは不貞腐れたようにそっぽを向いた。


「思うところがあるだろうが、今日のことを十分に反省してエマに恥をかかすことのないようにな。エマ。そういうことだから、今日のところは許してやってくれないか」


「いえ、許すも何も。これから私のほうがご迷惑をおかけすることも多いと思いますが、殿下を支えられるよう、頑張りますのでよろしくお願いいたします」


私にかけられる期待の大きさを感じ、私は身が縮こまる思いだった。その後、ややぎこちない雰囲気ではあったものの、夕食会は順調に進んだ。私はできる限り優雅に料理を口に運んだが、隣の皇后陛下とは比べ物にならないものであった。自分も皇后陛下のようになれるだろうか、と不安になる。


「エマ。王宮の料理はいかがだったかしら?」


「はい。とても美味しかったです」


「あら、そう言っていただけると料理人たちも喜ぶわ。マナーも、私の子どもの時と比べ物にならないくらい、上手だったわね。もう外交パーティーに出ても恥ずかしくないくらいだわ」


流石にすぐに他国の主要人物が集う外交パーティーに参加できる、というのはお世辞だろうが、皇后陛下に褒められたことは自信にもなった。


一方、ダレン殿下はマナーという点では王族らしからぬ振る舞いであった。


「ダレンもエマを見習いなさいね」


皇后陛下がチクリとダレンに苦言を呈する。決して汚しているわけではないのだが、優雅とは程遠い食事であった。


「さて、本当ならばエマやダレンと語らいたいところだが、今日はいろいろあって疲れただろう。もう休みなさい。ダレン。今度こそエスコートするんだぞ」


「はい。父上」


ダレンは椅子から降りると私に左手を差し出した。私は椅子から降り、殿下の手を取って2人に退室の挨拶をする。私はカテーシーをし、殿下は軽く頭を下げた。


食堂のドアが閉まると、殿下は昼と同様、私が速足でようやく追いつける速さで歩いていく。


「ダレン殿下」


私は思わずダレン殿下を呼び止めた。


「なんだ?」


「あの、少しスピードを落としていただけると助かるのですが」


体格は殿下も私もあまり変わりない。しかし、私は高くはないがヒールのある靴を履いている。いつも通りには歩けないのだ。


「わかった」


ダレン殿下はそういったものの、あまり変わらなかった。


結局、私を部屋の前に案内すると、そそくさとその場を去った。


私は両親や国王皇后両陛下のように殿下とうまくやっていけるか、不安になった。

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