2大歓迎です!
「わかりました。ミシャール家との婚約破棄。それからポエジー家への嫁入りに関して承知いたしました。お父様、お母様、そういうことですので手配をお願いしても?」
私があまりにも冷静に言うもんでパルパラは面食らった様子だ。面白い。
「お、お、おお姉さま! ポエジー家は田舎で牛糞臭ーい農場で暮らさなければならないのですわよ。それに、農業や酪農のお勉強だってまだなのに……」
「あら、パルパラ。私は緑が豊かでかわいい動物たちと過ごしながら新鮮で美味しいお野菜がいただける暮らしを嬉しく思ってましてよ」
パルパラの表情は予想できたが、見ていると笑ってしまいそうなので私は背を向けて部屋へと戻った。本当は小躍りしたいくらい嬉しい!
だってだって、ミシャール家のお堅い重圧から解放されてのんびり農場で暮らせるんだから!
***
私は荷造りを始める。
「ドレスはいらないわね」
私は格上のミシャール家にふさわしい女性になるために小さなコルセットや好きでもないドレスに身を包むのはうんざりだ。私は赤より青の方が好きだし。
私はぽいっとドレスを部屋の隅に放り投げる。
「あぁ、牧場の牛さんと羊さんと……かわいいワンコたち……。美味しいパンを焼いて、それから、それから」
私の頭の中はこんな妄想でいっぱいである。正直、私はパルパラと違って煌びやかな都会はあまり好きではない。そもそも私が首席で卒業できたのは「勉強ばかりしていた」からだ。
普通、貴族の御令嬢は毎晩パーティーをしたり、休暇になればどこかへ旅行へ行ったりして結婚前の自由な学園生活を楽しむのだが……、私はあまりそういうのが好きではないのだ。
どちらかといえば庭のお花の手入れをしたり、知識を身につける方が好き。
そんなおとなしい私を気に入ってミシャール家が縁談を持ってきたと聞く。そう、あのお姑さんが私を気に入ったからだ。
「お嬢様、お迎えがいらっしゃいましたよ!」
メイドに急かされて私は急いで荷物を詰めると立ち上がる。といっても持っていくのは地味な普段着とたくさんの本くらいである。
私が急いで玄関へ向かうとそこにはパルパラがいた。ミシャール家との結婚式を終えたパルパラは私の泣き顔でも見ようと訪ねてきたらしい。
「パルパラ、お別れを言わせて」
「何よお姉さま」
「これは、そうねアドバイス」
パルパラは不可解そうな顔で眉を上げた。
「ミシャール家のお義母様には気をつけて。嫁にだけ厳しい方だとそう伺っているわ」
「わ、私なら大丈夫よ!」
私を突き飛ばしたパルパラは
「どうぞ、身分の低い伯爵家の奥様。さようなら」
と捨て台詞を吐いて両親の元へと消えていった。
私は玄関から我が家を眺めた。幼い頃から過ごしたこの家を出ていくのはほんのちょっとだけ寂しい気持ちになる。でも、昨夜の出来事で私は家族の絆というのもを疑わざるを得なくなってしまった。私を裏切る妹、何も言えない両親……。
なら、私も好きに生きてもいいのじゃないかしら!
「それでは、ごきげんよう」
私は見えない妹と両親に挨拶をして、実家を出ることにした。