第九十四話 アルス王子の到着
翌日も、俺は子ども達の相手を一日中する事になった。
子ども達も少し元気になったのか、屋敷の庭を走り回っていた。
コタローはまだテトテトとゆっくり歩くだけなのだが、シロとミケにも慣れ始めて一緒に手を繋いで歩いていた。
そして更に次の日、少し早目にお昼前にアルス殿下が飛竜に乗ってやってきた。
「「「おおー!」」」
子ども達は飛竜を怖がるかと思ったけど、意外や意外の大興奮。
あの飛竜はとても頭が良いので、早速子ども達の相手をしています。
何故か馬も飛竜に対抗心を燃やして、子ども達と遊び始めています。
そしてコタローを抱っこしている俺を見て、アルス殿下が一言。
「サトー、いつの間にか子持ちになったんだな」
アルス殿下、俺にはまだ実の子はいませんよ。
「いやあ、久々にサトー見たら子どもをあやしていたのだから、ビックリしたよ」
「その子どもは、サトーに特別に懐いているのじゃ。常に一緒にいるぞ」
「そうなのよ。コタローちゃんは、私にも抱っこさせてくれないのよ」
久しぶりに兄妹が三人揃ったので仲良く応接室で話をしているが、何故か話題は俺とコタローだ。
因みに、今も俺はコタローを抱っこして話に参加しています。
応接室にはテリー様とエーファ様とリンさんもいて、一緒に話を聞く事に。
アルス殿下から、俺達に話があるそうです。
「さて、そろそろ話をするか。サトー達には、正式に王城で謁見する事が決まった。勿論、バルガス公爵領とバスク子爵領での闇組織討伐の件だ」
「前にちょっと話を聞いた件ですね」
確かバルガス公爵領でも、勲章を貰うとかなんとか話をしていたな。
しかし、話はもっと大掛かりなものになっていた。
「サトーは、バスク子爵領の件に加えて王都で闇組織に繋がりのある貴族を追求できた事が高く評価された。ほぼ決定だが、サトーには法衣男爵が与えられる事になった」
「はっ? 法衣男爵?」
「そうだ、法衣男爵だ」
俺はアルス殿下の言葉にびっくりして、思わず自分の事を指していた。
あの、いきなり貴族になるという事ですよね?
頭が話に追いつかないのですけど。
「リンとシロとミケは、名誉男爵が与えられる。オリガとマリリにも、国から勲章が与えられるぞ」
「えっ? わ、私もですか?」
「そうだ、リンも叙爵対象だ」
更には、リンさんとシロとミケも名誉男爵に叙されるという。
リンさんもビックリして、アルス殿下に聞き返していた。
「ほほ、これはめでたい事ではないか。リンが名誉男爵になり、オリガやマリリにも勲章が与えられるとはな」
「ええ、バスク子爵家の誇りですわ。そうだわ、今日はお祝いにしましょう」
「そうだな、そうしよう」
一方のテリー様とエーファ様は、リンさんの名誉な話を聞いて大盛り上がりだ。
この勢いだと、今夜はパーティだな。
「謁見は十日後になる。今回は闇組織に関わった貴族への処罰もあるので、王都に在住の貴族は全て謁見に呼ばれる事になった」
「バルガス公爵やバスク子爵は、事件への対応もしている。犯罪に関わった貴族への処罰は、書面通知になるじゃろうな」
「ご配慮頂き、感謝します」
謁見は十日後か。
じゃあ俺達は、謁見に間に合えば良いのかと思ったら、そうでは無かった。
「そして、サトーには悪いが母上がサトーに会いたいと言っている。リンにも会いたいと言うので、早めに王都に来てくれたら助かる」
「となると、準備が必要じゃ。出発は明後日になるな」
「お、王妃様と面会ですか。とんでもない事になりましたね」
まさかの王妃様から、俺とリンさんに面会要請が来るとは。
流石のリンさんも、叙爵と並んでかなりビックリしていた。
そして、出発は明後日に決定して明日の内に準備をする事になった。
「あ、エステルに伝言がある。フローラ母上より定期連絡をずっと忘れているから、帰ってきたらしめると言っていた」
「ええー!」
アルス殿下からの追加報告に、エステル殿下が崩れ落ちていた。
でも、エステル殿下が悪いのであって、誰も崩れ落ちたエステル殿下を慰めようとはしなかった。
そしてお待ちかねの夕食です。
「「「わあ、ご馳走だ!」」」
リンさんの叙爵祝いもあって、エーファ様の宣言通り豪華な夕食になった。
子ども達も、思わぬご馳走に大喜びだ。
子ども達の食の細さも少しずつ改善していて、皆喜んで夕食を食べていた。




