第九十三話 一晩経った捜査の進捗状況
朝食後は、テリー様とラルフ様との話し合いです。
ビアンカ殿下とリンさんも話し合いに参加します。
「サトーは既に懐かれてしまったのう」
「ははは、何故か懐かれてしまいました」
「うにゅ?」
ビアンカ殿下にも指摘されたけど、俺は何故かコタローを抱いたまま話し合いに参加です。
話し合いがあるのでコタローをサーシャさんに預けようとするとコタローが大泣きをするので、止むなく抱っこしたままの話し合いです。
「きっとコタローは、今までまともな扱いをされてこなかったのだろう。なので、初めてサトーの事を安心できる存在だと思ったのだろうな」
二人の子どもの親であるテリー様が言うと、説得力がとてもある。
当面はコタローが他の人に心を許すまで、俺がコタローの面倒を見る事になりそうだ。
俺がコタローを抱っこした状態で、話し合いはスタートです。
「昨夜の各地の捜索と併せて、執務官のハンザを捕縛した。ハンザの部屋を捜索したら、誘拐した子どもの詳細なリストが出てきた。更にハンザは、闇組織と繋がっている事も自供した。捜索を途中で中断し、嘘の報告書を作成していた」
先ずは、テリー様がハンザを捕縛したと報告した。
やはりと言うか、ハンザは闇組織と繋がっていたのか。
幾ら自らの罪を自供したとは言え、相当重い罰になるだろうな。
「あと、拠点となっていた建物やワース商会からは、多数の盗品が出てきた。街道を通っていた商隊が襲われた事例もあるので、間違いなくその様な所から奪い取ったのだろう」
「この辺は、バルガス公爵領にいる調査隊の一部をバスク子爵領へ回して貰い、詳しく調べる事になった。因みに、アルスお兄様も明後日の夕方にはバスク子爵領に来るという」
商品になると、流石に俺達も誰のものかは分からない。
ここは専門家に任せよう。
「それよりも、王都の方が大騒ぎじゃ。今回闇組織から違法奴隷を購入しようとした貴族は、十にものぼる事が分かったのじゃ。とある貴族なんぞ、四人の違法奴隷を購入しようとしておったぞ」
「まさか十の貴族が関わっていたとは」
「購入リストには、伯爵家も存在していた。軍が勇んで屋敷を捜索しておるぞ」
ビアンカ殿下のため息もよく分かる。
違法奴隷絡みで十の貴族が捜索をうけているとなると、そりゃ王都は大騒ぎになるだろう。
しかも上級貴族と言われている伯爵家まで、捜索の対象となっているのだから尚更だ。
「それよりも、複数出てきた誘拐された子どもリストにサトー殿の鑑定もあって、全ての子どもの確認ができた。連絡が取れる所には、既に保護したと伝えている」
「一刻も早く、親御さんの元に子どもを返してあげたいですね」
テリー様の機嫌が、少し良くなるのも分かる。
朝食の終わりに、俺もまだ鑑定していない子どもをみて、書類に相違がないかを確認したのだ。
「ただ、コタローとフェアに関しては、親を殺害して誘拐されたのが確定だ。この子達には、別に保護者が必要だ」
「そして、レイアが誘拐されたエルフの郷には王国を通じて連絡を取る事ができる。しかし、エルフの郷は王国の端にある上、肝心のエルフが中々郷から出てこない。レイアも当面は保護者が必要じゃ」
「あの、俺に懐いた三人が、全部訳ありなんですけど」
「だからこそ、三人はサトーに懐いたのかもしれんな。王国としても、三人の所在が分かるのはとても都合が良い」
この会話で、俺がフェアとレイアとコタローの面倒を見る事がほぼ確定的になってしまった。
シロとミケを合わせると、十四歳にして五人の子持ちになるぞ。
しかも、うちには食い盛りの従魔も沢山います。
他の子は、バルガス公爵領などから連れ去られた子は一旦各領地の屋敷に運ばれて、バスク子爵領に関する子どもはこのままバスク子爵家の屋敷で面倒を見るという。
ただ、子どもが痩せているので、体力をつける為に一週間はこのままバスク子爵家で養育するという。
という事で、話し合いは終了。
俺達は昨晩頑張ったという事で、今日一日は静養する事になりました。
「「お兄ちゃん、お帰り!」」
「只今、子ども達はどうだ?」
「「皆元気だよ!」
保護された子どもがいる部屋には、遊び相手としてシロとミケの他にエステル殿下とエルシーの姿があった。
エステル殿下が話し合いに参加しなくて良いのかと思いつつ、俺はシロとミケの頭を撫でながら部屋の中に入った。
従魔達も子ども達の相手をしていて、時折回復魔法が使えるおもちが子ども達を見て回っていた。
ぽす。
「お、フェアにレイアか。元気にしていたか?」
「「うん」」
俺の姿を見て、フェアとレイアが抱きついてきた。
小さな声だけど、フェアとレイアは俺に返事をしてくれた。
このまま、元気になって欲しいものだ。
今日は一日中子ども達と遊び、寝るのも子ども達と寝る事になった。




