第七十五話 バスク子爵領のギルドマスター
俺達は職員に案内されて、受付の奥にあるギルドマスターの執務室に案内された。
「失礼します、皆様をお連れしました」
「おお、そうか。入ってくれ」
執務室に通されると、何だか普通のおじさんって感じの人が書類にサインをしていた。
役場の窓口にいそうな普通の職員って感じで、バーコードヘアにメガネをかけていて中肉中背の体格だ。
この人がバスク子爵領のギルドマスターなのか?
「これはこれは、リン様。わざわざご足労頂き感謝致します」
「いえいえ、ギルドマスターにもお忙しい中時間を作って頂きありがとう御座います」
リンさんも普通に中年男性と握手をしていた。
この中年のおじさんが、バスク子爵領のギルドマスターで間違いなさそうだ。
俺達はソファーに座って、ギルドマスターと話をする事になった。
「皆様、ようこそバスク子爵領の冒険者ギルドへ。私はこの冒険者ギルドを預かっております、ノームと申します。どうぞ宜しくお願い致します」
ギルドマスターのノームさんは、とっても腰の低い人だった。
もしかしたら、ノームさんは事務上がりのギルドマスターなのかな?
「ノームさんは、格闘技の達人なのですよ。私も昔お世話になりました」
「うむ、妾も子爵領にきた際に型を見させて貰ったが、かなりの物じゃったぞ」
「だよね。私も簡単に投げ飛ばされちゃったんだよ」
「「おお、凄い!」
「いやはや、王族の皆様に褒めていただけるとは、光栄で御座います」
マジか、ノームさんは武術の達人だったのか。
しかもエステル殿下を手玉に取るレベルの力なのか。
この事実には、かなり驚いたぞ。
とりあえず、話を続けよう。
「ノームさん。先ずは、ビルゴの仲間が目撃されたという情報を教えて頂けますか」
「はい、ビルゴの仲間は、主に商会が立ち並ぶエリアで複数回確認されております。どうも、ワース商会に出入りしているとの事でした」
「ワース商会、ですか」
出ました、ここでもワース商会です。
リンさんもびっくりしているけど、ビアンカ殿下は特に表情を変えなかった。
ビルゴの仲間が出入りしているとなると、闇組織とワース商会が繋がっている可能性が極めて高くなったぞ。
「ただ、ギルドは依頼があれば基本受け付けます。勿論、ワース商会の依頼も問題がなければ受付を致します」
「ふむ、それは致し方ないじゃろう。奴らとて、変な依頼をギルドに出す訳にはいかんじゃろう」
「ワース商会からの依頼は、依頼料が他の商会よりも高めに設定されております。その為、特に若い冒険者が依頼を受ける事が多い様です」
若い冒険者はお金がない事が多いから、ワース商会の依頼は魅力的なのだろう。
しかし、俺は少し気になる事があった。
「ノームさん、ワース商会の依頼を受けた冒険者が行方不明になる事はありますか?」
「いや、特に調べていないけど気になりますね。何人か依頼履歴を確認してみましょう」
「もしかしたら、冒険者が闇組織に勧誘されている可能性もあるか。確かに調べる必要性はありそうじゃな」
冒険者の動向は、ノームさんの調査を待つ事になった。
明日には結果が分かるらしいので、明日の朝再度冒険者ギルドに寄る事になった。
ギルドマスターとの話が終わったので、俺達はギルドの依頼掲示板を見る事に。
朝の受付が終わったけど、幾つか依頼が残っている。
「どれも護衛か荷運びか店内の荷物整理だな。力仕事がとても多いな」
「商会も多いので、自前で人員を賄えない場合は冒険者を積極的に使います」
力持ちの冒険者にとっては、魅力的な依頼が多いのだろう。
そう言えば、バルガス公爵領の冒険者ギルドと比較しても筋肉ムキムキの男性が多かったな。
地域によって、依頼内容にも差が発生するんだな。




