第七十三話 朝の訓練開始
翌日の朝、俺達は屋敷の裏庭に集合しています。
これから毎日、とある訓練を行う事になります。
「それでは、これから魔法の訓練を開始します」
そうです、バルガス公爵領でも話のあったマリリさんが先生役の魔法訓練です。
バルガス公爵領でのビルゴと魔獣化したバンとの戦いで皆力不足を実感したので、これから毎朝訓練を行います。
「では、基本の訓練ですね。魔法剣の柄を使って魔力循環をしましょう」
マリリさんの合図で、基本訓練が始まります。
各々魔法剣を発動させて、魔力循環を行います。
実はバルガス公爵領を出る前に、エステル殿下とアルス殿下にも魔力制御の腕輪と魔法剣の柄を渡しています。
二人とも、あっという間に魔法剣を使いこなしていました。
因みに従魔達は、皆で手を繋いで魔力循環をしています。
「では、次の訓練です。防御魔法の魔法障壁を使ってみましょう」
ここからが実践編です。
ビルゴとうちのホワイトが使っていた魔法障壁です。
「魔法障壁は、基本誰でも使えます。属性を帯びる事で、更に強度が増します」
「となると、ホワイトが使ったウインドシールドは、魔法障壁の強化版なんですね」
「そうなります。私もまさかネズミが使うとは思いませんでした」
「おお、凄い!」
「ホワイト凄いな」
マリリさんからも褒められて、ホワイトは少し照れていた。
とはいえ、俺達もホワイトの様に魔法障壁を使えるようにならないと。
早速、訓練開始です。
「魔法障壁には、前面にバリアの様に展開するものと、丸く展開して体を覆うものがあります。先ずは簡単な前面に展開するタイプをやってみましょう」
「「はーい」」
魔力を前面に展開するイメージで、魔力を放出する。
おお、始めは魔力を維持するのが難しいな。
「サトーさん、魔力の維持とか言っていますけど、魔法障壁をいきなりできる人の方が少ないですよ」
「でも、周りの人も一回でできていますよ」
「ですね。私の中の価値観が崩れそうです」
俺以外の人も、一発で魔法障壁が使える様になっている。
マリリさんもびっくりした様に、周りの人を見ていた。
これは魔力制御の腕輪のおかげで、全員の魔力制御が上がっていたからだと思いたい。
「おお、水の壁ができた!」
「ミケも火の壁ができたよ!」
シロとミケに至っては、ホワイトから属性の魔法障壁まで習っていた。
シロがウォーターシールドで、ミケがフレイムシールドか。
正直なところとてもカッコいい。
俺も、早く属性のついた魔法障壁を覚えたいものだ。
「今日は、このまま魔法障壁の扱いに慣れましょう。時間になるまで、魔法を維持できる様に頑張ってみましょう」
「「おお、頑張る!」
俺も頑張って、魔法障壁の維持をできる様に集中する。
体を覆う様に展開する事までは、時間前までに何とかできた。
後は、展開した魔法障壁の強度がどれくらいか試してみないと。
「では、残りは実技の方ですね。魔法タイプの人は私が引き続き指導します」
「リーフは魔法使う!」
基本従魔達は魔法を使うので、マリリさんに色々と教えてもらいます。
ホワイトが超やる気になっているので、頼もしい限りだ。
さて、俺は剣技なので、リンさんがエステル殿下かオリガさんだな。
と思ったら、俺の前に現れた二つの影。
「「お兄ちゃん、一緒にやろう!」」
あの、俺は格闘タイプではないのですが。
「「お兄ちゃん、一緒にやろう!!」」
だから、俺は剣技の練習をするよ。
「「「お兄ちゃん、一緒にやろう!!!」」」
「はい、分かりました」
嗚呼、シロとミケに強引に押し切られてしまった。
周りの人も、くすくすしながら俺達の事を見ているよ。
流石にシロとミケに剣は使えないので、アイテムボックスに収納します。
「それで、先にどっちがやるの」
「「両方!」」
「はっ?」
シロとミケの回答に、思わず固まってしまった。
と、思ったら、聞き返す前に二人が攻めてきた。
「「とー!」」
「同時攻撃かい!」
俺は慌ててさっき習った魔法障壁を展開して、シロとミケのパンチを防いだ。
良かった、ちゃんと機能しているよ。
「むう、防がれたよ」
「流石はお兄ちゃん、まだまだ行くよ」
「ちょっと待て!」
俺の叫びも無視されて、二人は俺に容赦ない攻撃を仕掛けてきた。
二人の攻撃は、当たったら骨折で済むか分からないものだった。
「とう」
「やあ」
「うおあ!」
俺は、二人の攻撃を避けるので精一杯だった。
反撃などできる余裕もなく、たまに攻撃が直撃しそうな時は魔法障壁で防いでいた。
「はあはあはあはあ、死ぬかと思った」
「むう」
「全部防がれたよ」
ここでタイムアップ。
朝食の時間になるので、訓練は終了です。
俺は、シロとミケの攻撃を何とか避ける事ができた。
シロとミケは俺に攻撃を当てる事ができなくて、かなり不満な顔をしている。
「いやはや、サトーの回避能力は凄いのう」
「獣人の身体能力を使った攻撃なのに、全て避けたね」
「正直なところ避けないと死ぬかと思ったので、必死になっていました」
まだ膝をついて動けないでいる俺の所に、ビアンカ殿下とエステル殿下がやってきた。
魔獣化したバンをぶっ飛ばすシロとミケのパンチなんて食らったら、俺の腹に穴が開きますよ。
そんな事を思っていたら、シロとミケがとんでもない発言をしてきた。
「お兄ちゃん、明日もう一回やろう」
「明日こそ、お兄ちゃんに勝つんだよ!」
「ええ! 勘弁してくれ」
「はは、兄は大変じゃのう」
ビアンカ殿下、笑い事ではないですよ。
こうして、明日も俺はシロとミケの相手をする事が決まってしまったのだった。




