第六十一話 盗賊を倒せ!
馬車が急いで野営ポイントに向かう。
そして、目の前に野営ポイントが見えてきた。
「あ、見えてきたよ」
「お姉ちゃんが襲われている!」
視力の良いシロとミケが、野営ポイントで誰かが襲われているのを発見した。
俺達も、女性っぽい人がならず者に襲われているのを確認できた。
「あれは、盗賊かそれに準ずる人物が女性を襲っているのか?」
「「「女性の敵ね!」」」
俺が状況を話すと、女性陣に火がついた。
確かに、目の前の女性を襲っている人物はまさに女性の敵といえよう。
「「ブルル!」」
心なしか、馬も目の前で起きている事に憤慨しているように見える。
そして、一気に馬車の速度が速くなった。
「な、何だ! 馬車が物凄い勢いで突っ込んできて、うごあ!」
「女性の敵よ、吹き飛べ!」
マリリさんが魔法の射程距離に入った所で、女性に覆い被さっている男を魔法で思いっきり吹き飛ばした。
うーん、男は十メートルは吹き飛んだぞ。
そして馬車は、女性の元に到着した。
「な、何だ何だ? 沢山の女性が馬車から降りてきたぞ」
「お、落ち着け。よく見れば、全員美女だ。どうにかすれば、こちらのものだぞ」
吹き飛ばされた男以外に盗賊と思わしき人物が六人いて、全員がうちの女性陣を見て新たにターゲットにした様だ。
確かにうちのメンバーは全員美人揃いだから、興奮するのも分かる。
しかし、今はタイミングがとても悪い。
「こいつらは、手加減不要で良いじゃろう」
「そうね。女の敵は、ボコボコにしても何も問題ないわね」
ビアンカ殿下とエステル殿下が、とっても不穏な事を言っている。
そして、全員武器を取らずに拳を組んでぼきぼきと鳴らしていた。
この女性陣の迫力に、今更ながら盗賊はビビり始めた。
「な、何を怯えている。いくぞ、お前ら!」
「「「おう!」」」
盗賊は、ビビりながらもこちらに突っ込んできた。
しかし、ここからは女性陣による一方的な殲滅戦だった。
「大丈夫ですか? 今、治療しますね」
「あ、はい。有難うございます」
女性陣が盗賊と戦っている間に、俺は襲われていた女性の元に駆けつけた。
女性は服がボロボロに引きちぎられていて素肌が見えてしまったので、ひとまず肩から毛布をかけておいた。
顔を殴られていて口から出血もしていたので、俺は入念に治療を行った。
年齢的には俺よりも下に見えるが、ビアンカ殿下よりも上だろう。
癖の強い赤いショートヘアの中々に美人だ。
「あ、え? 皆さん、凄いですね」
「今回は女性が襲われているので、余計に気合いが入っている様です」
助けた女性がびっくりしていたのは、うちの女性陣の強さだった。
盗賊が思ったより弱いのもあるけど、それでもうちの女性陣が容赦なく盗賊を攻撃していた。
「うりゃ!」
「おりゃ!」
「グフォ」
シロとミケが、盗賊に向かって飛び蹴りを喰らわしていた。
飛び蹴りを喰らった盗賊は、そのまま木に激突して気絶していた。
でも、シロとミケはまだマシに対応している。
「うりゃ、おりゃ!」
「がぼ、ぐえ」
他の女性陣は、拳で盗賊の顔面を容赦なくぶん殴っているのだ。
ぶん殴られた盗賊の顔面はボコボコで、歯も折れているぞ。
一部の人は、金的攻撃までしていた。
更には、従魔も一緒になって盗賊をボコボコにしていた。
そして、盗賊はどんどんと気絶していった。
「な、何だよコイツらは!」
ここで、マリリさんに魔法で吹き飛ばされた男が目を覚まして、目の前で行われている惨劇に度肝を抜かれていた。
ざっ。
ズザー。
「な、何だよこの糸は。切れねえ」
男はこの場から逃げ出そうと走り出したが、直ぐに足を糸で縛られて顔面から地面にダイブした。
まだ動く手で足に絡んだ糸を切ろうとしたが、糸は全く切れない。
シュッ。
「な、何だよ。今度は腕が縛られたぞ」
そして、直ぐに男の腕も糸で拘束された。
実は男の体にこっそりとフランソワがくっついていて、わざとタイミングをずらして男を糸で拘束したのだ。
ザッ、ザッ。
「ひ、ひぃぃ」
そして、身動きのとれない男のところに無言で歩いてきた女性陣。
全員、拳をコキコキと鳴らしていた。
「あー!」
男が幾ら叫んでも、既に助けてくれる仲間はいなかった。




