第五十一話 犯人の醜い本性と魔獣化の薬
「因みにだが、既に王都のオーカス子爵邸にも捜査の手が入っている。関連している貴族にもだ」
グランに向けたアルス殿下の言葉が起因となって、事態が一気に動いた。
バビルがグランに詰め寄ったのだ。
バビルはグランに今まで騙されていて、主人と王家殺害未遂というとんでもない事をしてしまったからだ。
「グラン様、私に言っていた事は全て嘘だったのですか?」
「ふん、ようやく気がついたか。やはり平民は使えないな」
グランの冷たい一言に、バビルは頭を抱えてしゃがみこんでしまった。
「あ、ああ、わ、私は何と、何という事を、ぐふ、ごぶあ」
「うるさい。もう黙れ、平民」
あろう事か、グランは混乱しているバビルの背中に躊躇なく剣を突き立てたのだ。
急所を刺されたのか、バビルは血を吐きあっという間に動かなくなった。
「グラン、貴様何をしている!」
「使えないクズを処分したまでですよ」
あまりの愚行にバルガス様が怒号を放つが、グランは全く意に返してなかった。
「そもそも平民の為に金を使うのがおかしいんですよ。お金は、天より選ばれ者貴族が使わないといけないですよ」
「グラン、黙れ!」
そして、グランは全てがバレて開き直ったのか、貴族主義の主張をベラベラと喋っていた。
これにはアルス殿下もビアンカ殿下もエステル殿下も、グランに対して怒りを見せていた。
そして、別の人物も俺達に向かって吠えてきた。
「お、俺は金持ちになるんだ! お金を得る為には、正義だろうが悪だろうが何にだってなってやる!」
「「バン……」」
既にバンは、お金の魔力に取り憑かれてしまった様だ。
バンは血走った目で俺達を睨んでいて、そんなバンの様子にザシャとクレアもかなり困惑していた。
「ははは。素晴らしい、素晴らしいですよ。こんなにも醜い欲望が見られるなんて」
そんなグランとバンの様子を見たビルゴが、手を叩き笑いながら二人を賞賛していた。
しかし、ビルゴはグランとバンの背後に立つと、急に真面目な顔を俺達に見せた。
ビルゴは、二人に何かをするつもりだ。
「しかし、二人の欲望は余りにも強い。余りにも強い欲望なので、闇組織でも受け入れられないでしょう。であるなら、ここは二人には駒になって貰いましょう」
「ビルゴ。何を、が、グガアア」
「ギガガガ!」
ビルゴは、グランとバンの背後から二人の首筋に注射の様なものを突き刺した。
途端にグランとバンは、うめき声を上げて苦しみ始めた。
「ビルゴ、貴様二人に何をした!」
「アルス王子、魔獣化の薬といえば分かるのでは?」
「まさか、魔獣化の薬だと?」
ビルゴの言葉に、アルス殿下はびっくりしていた。
「アルス殿下、魔獣化の薬とは何ですか?」
「最近、闇組織で出回っている薬だ。一種の強制ドーピング剤だが、理性を失い魔獣の様に暴れるぞ」
「え! と、止めないと。皆!」
俺はアルス殿下の話を聞いて、まだ魔獣化していない苦しんでいる今ならとスライム達の魔法一斉射撃を行った。
「ふふふ、まあ待て。実は新薬を試しているんだ。結果を待とうじゃないか」
スライム達の一斉射撃は、前に出たビルゴがバリアみたいなものを張って防がれてしまった。
そして、薬を打たれた二人に変化が現れた。




