第四十三話 予想以上の成果
失敗した。
俺の考えが甘かった。
冒険者は、料理ができない人が多いらしい。
「お、あんちゃんの作ったスープは上手いな」
「全くだ。こりゃ、嬢ちゃん達は幸せだな」
「「うん!」」
いつの間にか、昼食を用意してこなかった冒険者が俺達の周りに集まってきた。
そして、作ったスープやサラダをモリモリと食べていたのだ。
しかも昼食を食べていたのは、冒険者だけではなかった。
「おいしーね」
「人間にしてはやるね」
「この前きた人間の料理は不味かったよ」
いつの間にか、妖精も集まって俺のスープやらサラダを食べていた。
しかも話を聞く限り、以前も冒険者の料理にたかっていた様だ。
勿論、仲間になったスライム達やアルケニー達にネズミも料理を食べている。
まあ、ここまでは俺の料理が美味しと思えばいいだろう。
実際に美味しいと食べてくれている。
「ぺろぺろ、ジュルジュル」
もう一つの問題は、小さい妖精が俺の頬に張り付いて頬を舐めているのだ。
普通の妖精は手のひらくらいの大きさがあるのに、この小さな妖精は五百円玉くらいの小ささだ。
俺は妖精にとって樹液か何かでしょうか?
妖精の事は、妖精に聞いてみよう。
「そこで人参を食べている妖精や」
「私の事?」
「俺の頬にくっついているのは何だ?」
「その子はリーフだよ。まだ生まれたての妖精だよ」
うん、質問に失敗した。
名前ではなく、何をしているかを聞かないといけないんだ。
「恐らくお兄ちゃんの魔力を吸っているんだよ。私達はもう体が安定しているけど、小さい妖精は不安定だからたまに魔力を吸収するんだよ」
「それで、俺の頬を吸っているのか」
「お兄ちゃんの魔力が強いからだよね。その子もお兄ちゃんの事が気に入った様だよ」
このちっこい妖精に気に入られたのは確かだろう。
ひとしきり人の頬を吸っていたら、肩にちょこんと乗って大人しくしていた。
その代わりに、俺の頬がよだれでベロベロになっているぞ。
「つまりは、お兄ちゃんは妖精のご飯だね」
「お兄ちゃんって、美味しいのかな?」
シロとミケよ。
何度もいうが、俺は妖精の食べ物ではないぞ。
片付けは食べた人がしてくれるというので、俺は一旦ギルドに戻って紐を買い足す事にした。
「おお、にいちゃんは肩に面白いものを乗っけているな」
売店のおっちゃんにも、俺の肩に乗っているリーフをみてびっくりしていた。
そりゃ、妖精を引き連れていればびっくりするよね。
リーフはというと、俺の肩に乗りながら冒険者ギルドの中をキョロキョロと見ていた。
さて、紐も多めに準備したので森に戻ってきた。
すると、ビアンカ殿下が一言。
「サトーなら、鑑定魔法が使えるのではないか?」
「鑑定魔法ですか?」
「うむ、レア魔法の一種じゃな。物や人を鑑定して、詳細を得る事ができるのじゃ」
何だかまさに異世界っぽい魔法だな。
試しに、薬草と唯の葉っぱを鑑定してみた。
「おお、凄い。薬草と葉っぱだと、鑑定結果が違うぞ。これは凄いな」
アイテムボックスに収納していた薬草とその辺の草では、表示された結果が違う。
薬草は、ちゃんと採取場所と効能も表示されているな。
ふふふ、これは凄い魔法を手に入れたぞ。
「おお、ブドウちゃんも鑑定魔法使えるって」
「お兄ちゃんと結果が一緒だよ」
シロとミケが、さっき仲間になったスライムの事を褒めていた。
俺の天下は、僅か一分だった。
準備ができたので、午後の薬草採取を開始します。
「「いっぱい採るぞ」」
「「「おー!」」」
シロとミケが掛け声をかけて、それぞれ森の中に入っていきます。
仲間になったアルケニーやネズミも加わって、物凄い勢いで薬草を採っていきます。
「お兄ちゃん、紐頂戴」
「サトー、こちらにも紐を出してくれ」
「サトーさん、私にも紐を出してくれますか」
「ち、ちょっと待ってくれ!」
矢継ぎ早に紐をくれとそこら中から言われてしまったので、俺もてんやわんやとなってしまった。
そして、二時間も経たずに追加の紐も無くなってしまい、薬草採取は強制終了です。
「お姉ちゃん、いっぱい採れたね」
「沢山だね」
「そうだね、皆のお陰だね」
「従魔って凄いんだね」
沢山薬草が採れたので、シロとミケと話すザシャとクレアも初めて見せる笑顔だった。
しかし、冒険者ギルドについて薬草の買取りをして貰うと、ザシャとクレアは驚愕の表情に変わった。
「あの、この金額はあっているのですか?」
「薬草採取なのに、とんでもない金額になっていますが」
更新された個人カードには、百万に近い金額が記載されていた。
しかし、これはキチンと依頼をこなした結果だ。
「意外かと思われるけど、薬草採取も数をこなせばこの位にはなる。それに今は寒い時期だから、薬草の需要もあるんだぞ」
買取りブースのおっちゃんの言う通り、買取り金額が安くても数で補えばかなりの金額になる。
ちょうど、需要が高い時期にあたったのもあるのだろう。
「これだけ薬草があっても、直ぐになくなっちまうのだよ。だから、これからも頑張って薬草採ってきな」
「「はい、頑張ります」」
買取りブースのおっちゃんに薬草採取を認められて、ザシャとクレアは良い顔になっていた。
小さな事だけど、俺はこれが二人の自信になって貰いたいと思った。




