第三十一話 依頼完了
おばあさんと息子さんは、ちょうど同じ部屋にいるという。
という事で、孫に案内してもらいます。
コンコン。
「お父さん、お客様だよ」
「お、そうか。誰がきたか分かるか?」
「えっと、領主様の娘様のサリー様」
「な、なにー!」
おお、孫が誰がきたかを告げると、部屋の中から慌てた返答が返ってきたぞ。
そりゃ、いきなり領主の娘がやってくるなんて思わないよね。
ガタガタと、部屋の中を片付けている音がする。
「ど、どうぞお入り下さい」
中から声が聞こえたので、俺達は孫の案内で部屋に入った。
部屋ではおばあさんがベッドで寝ており、側には椅子があったが恰幅の良い男性は立って俺達を出迎えてくれた。
「サリー様、ようこそヒューズ商会へ。当商会会長のヒューズと申します。この度は、母をお救い頂き誠に有難う御座います」
「ご丁寧に有難う御座います。本日は冒険者として引越しの依頼を受けると共に、父より書簡を預かっております」
「りょ、領主様から私宛にですか? は、拝見させて頂きます」
書簡の確認もあるので、サリー様とビアンカ殿下が会長さんと話をする様だ。
その間に、俺達はおばあさんの様子を伺おう。
「おやまあ、久々の顔もいるね」
「ええ。おばあさま、お久しぶりで御座います。早速ですが、少し治療を行いますわね」
「ああ、頼むよ」
ルキアさんは、早速おばあさんの腰の治療を始めていた。
ルキアさんの治療は凄い、最小限の魔力で必要な箇所を治療していた。
俺だけでなく、他の人も思わずルキアさんの魔力制御の凄さに見入っていた。
特に昨日おばあさんの治療をしていたおもちは、ぴょこぴょこと動いてルキアさんを観察していた。
「成程、これは我が商会だけでなく街全体の安全にも関わる事ですね。早速商店街の各店舗に周知いたします」
「宜しくお願いいたします」
お、どうやらサリー様と会長の話は終わった様だ。
こっちもおばあさんの治療が終わったので、いよいよ引越しの作業に突入です。
おばあさんは腰痛で動けないので、孫が付き添ってくれる事になった。
「では、皆様宜しくお願いします」
「はい、頑張ります」
会長はサリー様に丁寧にお願いしていたが、ここに王女殿下と貴族令嬢が他にもいるとなると会長さんは倒れそうなので言わないでおこう。
他の人もサリー様を立てているので、特に何も言わないでいる。
早速、魔導具屋さんに移動します。
「そういえば、これだけの荷物をどうやって運ぶのですか?」
俺とシロとミケが店舗側で、女性陣が住居側の荷造りをしている。
そんな中、孫の男性が沢山の荷物をどうやって運ぶかを聞いてきた。
「サトー、これを仕舞うのじゃ」
ちょうど良いタイミングでビアンカ殿下が袋に纏めた衣類を持ってきたので、ここは一つ実践して見せよう。
「こうやりますよ」
しゅっ。
「え? あ、アイテムボックス?」
「はい。収納力には自信がありますので、まだまだいけますよ」
「は、はあ」
あ、孫の男性は理解が追いついていない様だ。
その間も、女性陣から頼まれた荷物を収納していく。
「サトーさん。一旦衣類を置いてきましょう」
「そうですね。じゃあ、シロとミケは引き続き頼むよ」
「「お任せだよ!」」
あらかたの衣類は収納したので、リンさんと孫の女性と共に商会に戻る事に。
「に、荷物が目の前で消えた」
あ、孫の女性も俺のアイテムボックスを見て、かなり驚いた顔をしている。
うーん、こればっかりは慣れて貰わないとな。
「うーん、これはどうしようか?」
何往復かして殆どの荷物を商会へ運んだのだが、タンスやベッドが残っていた。
ただ、だいぶ年季が入っているのか、かなりボロボロになっている。
流石に俺達では判断つかないので、一旦商会に運んだ。
「このベッドとタンスは、私にとっても思い出の品なので倉庫にしまっておきます。後で、業者に修理してもらいます」
会長は、懐かしそうにベッドとタンスを見ていた。
このベッドとタンスは、母と子の思い出の品なのだろう。
タンスについている傷を見て、会長は少し笑っていた。
「はあ!」
「「す、凄い。一瞬にして綺麗になった」」
全ての荷物を片付けてから、昨日と同じく建物を丸ごと生活魔法で綺麗にしていく。
次の人が気持ちよく借りれる様にしておいた方が良いよね。
これで、全ての引越し作業が完了です。




