第二十三話 バスク子爵領令嬢
職員の説明が終わったタイミングで、ビアンカ殿下も話が終わった様だ。
受付奥の個室から、全員出てきた。
「おお、無事に手続きは終わった様じゃのう」
「「終わったよ!」」
ビアンカ殿下が俺達に声をかけると、シロとミケが自慢げにカードを取り出してビアンカ殿下に見せていた。
ビアンカ殿下が二人の頭を撫でているけど、どう見てもビアンカ殿下とシロたミケが同じ歳だとは思えないな。
「サトー様、昨日討伐した魔物をギルドに卸して貰いたいのですが良いですか?」
「分かりました。売却手順の良い勉強になります」
騎士団長に言われて、俺のアイテムボックスにオークとかを入れっぱなしだったのを思い出した。
「では、私達は戻りますので」
「お前らも冒険者活動頑張れよ」
「「ばいばーい」」
マリシャさんとガンドフさんと別れて、俺達はギルドの買取りブースに向かって行った。
「「こんにちは」」
「おう、元気なお嬢ちゃんだな」」
買取りブースの受付は、厳ついおっちゃんだった。
シロとミケに愛想良く返事をしている辺り、人柄は良さそうだ。
そして、俺がおっちゃんに話をしようとした時だった。
「もしや、ビアンカ殿下ではありませんか?」
「「「うん?」」」
俺達の背後から、急に声をかけられた。
振り返ると、三人の女性が立っていた。
声をかけてきたであろう女性は、金髪のセミロングヘアで白と赤を基調とした騎士服を着ていた。
胸当てや脛当てなども装備していた。
二人目は、青色の短髪でとても背が高く、重戦士みたくガッツリと鎧を装備していた。
そして三人目は、赤っぽいおかっぱで何故かメイド服を着ていた。
ビアンカ殿下は、話しかけてきた女性の胸当てに描かれていた模様を見て何かを思い出したようだ。
「おお、バスク子爵家のリンか。いつも姉上がお世話になっておる」
「いえ、私の方がエステル様に大変お世話になっております。そして、ビアンカ殿下が襲撃されたと聞きましたが、ご無事で何よりです」
なんと、話しかけてきた女性は貴族のお嬢様だった。
しかも、ビアンカ殿下のお姉様とも親しい間柄とは。
「ここにいるサトーとシロとミケに助けられた。サトーは春から学園に同学年として編入する可能性が高いので、良くしてやってくれ」
「リン様、サトーと申します。横にいるのがシロとミケになります」
「ご丁寧にありがとうございます。私はバスク子爵家のリンと申します。隣にいるのがオリガとマリリです。それと、私に様付けは不要です。どうかリンとお呼び下さい」
「では、リンさんと呼ばせて頂きます」
おお、とても丁寧な対応をしてくれた。
リンさんは、如何にも育ちが良いという感じだ。
「ちょうど学園は休みの時期か」
「はい。ですので、修行を兼ねて冒険者活動をしております。どうせならという事で、自領地ではなくお隣のバルガス公爵領にお邪魔になっております」
自領地ではなく、あえて別の領地で冒険者活動をしているとは。
リンさん達は、真面目に冒険者活動をしているんだな。
「ええ! そんなにオークを倒したのかよ」
「そうだよ」
「いっぱい倒したよ」
俺とリンが話をしていると、今度は買取りブースから声が聞こえてきた。
どうもシロとミケが、おっちゃんに昨日どれだけ魔物を倒したかを話したらしい。
おっちゃんは、かなりの驚きをみせていた。
「受付では対応できねえ。奥に来てくれ」
「「はーい」」
という事で、おっちゃんの先導で奥の広いスペースに案内された。
リンさん達も、ついでといった感じで俺達の後をついてきた。
「こ、これはたまげたぞ。これを、お嬢ちゃん達が倒したのか?」
「「そうだよ!」」
広いスペースには、十頭のオークにゴブリンの耳と魔石が沢山並べられていた。
買取りブースの職員は勿論の事、一緒についてきたリンさん達もびっくりしていた。
「凄い、これだけの数のゴブリンとオークを撃退したのですね」
「オークに関しては、ほぼサトーとシロとミケで撃退した。どうじゃ、中々の逸材じゃろう」
「はい、とても凄いと思います」
ビアンカ殿下、その言い方だと俺とシロとミケがとんでもない存在だと言っている様なものですよ。
リンさんも、俺達を尊敬した目で見ないで下さい。
「うーん。量が多いから、少し査定に時間がかかるな。三日程待ってくれないか?」
「俺は全然問題ありません。騎士団長は大丈夫ですか?」
「私共も問題ありません。査定が出来ましたら、お館様のお屋敷にご連絡下さい」
「了解だ。では、キチンと素材になる様に責任持って解体しておくぞ」
こうして、無事に買取も済ませる事が出来た。
まだお昼にもなっていないけど、この後はどうしようかな。




