第二百十八話 王妃様とランドルフ伯爵夫人の両親が到着
翌朝、いつもの訓練をしていると王都の方角からランドルフ伯爵家の屋敷を目掛けて一頭の飛竜が飛んできた。
あれが、王妃様とランドルフ伯爵夫人の実家の貴族家を乗せた飛竜なのでしょう。
屋敷の庭に着陸すると、王妃様と二人の年配の夫婦が飛竜から降りてきた。
個人的には、王妃様はともかくとしてあの年配の夫婦が王都から飛竜に乗ってきて大丈夫だったのかとても気になっている。
そして、王妃様はアルス殿下ではなく今日もコタローとアステルちゃんを抱っこしながら訓練をしている俺に近づいてきた。
「サトー、色々大変だったみたいね。でも、王都でも聖女サトーの噂が広まっているから、サトーの聖女姿がとても楽しみよ」
あの、王妃様……
ちょっとニヤッとしながら、聖女サトーのことを言わないで下さいよ。
というか、王都でも人気が出ているっていったいどういうことでしょうか。
それよりも、俺はアステルちゃんを抱っこしたまま年配の夫婦の元に歩み寄った。
そして、アステルちゃんに話しかけた。
「アステルちゃん、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんだよ」
「うにゅ?」
アステルちゃんは何が何だか分からない表情をしていたけど、そのまま年配のご婦人にアステルちゃんを抱かせた。
その瞬間、年配の夫婦の号泣が止まらなくなってしまった。
「うう、こんなに幼い子を残さないといけないなんて……」
「ううっ、孫が不憫でならないですわ……」
「むにゅ?」
いきなり年配の夫婦に抱きしめられたためか、アステルちゃんは何だろうって表情をしていた。
しかし、この場にいる大人たちも涙を堪えることができました。
ランドルフ伯爵夫妻の最期などの詳しい話は、このあと応接室に行って説明することになった。
俺たちも訓練を終えたので、そのまま応接室に向かうことにした。
「そうですか。娘は仇を打って亡くなったのか」
「アステルを抱きながら亡くなるなんて。娘は最期は満足だったのでしょうか……」
主にアルス殿下と俺が、ランドルフ伯爵家と人神教の絡みとビルゴとの戦いについて話をした。
ランドルフ伯爵夫人の実家はフレイザー侯爵家といって、軍の重鎮だという。
国境を守るランドルフ伯爵家とは、軍の繋がりを持って結ばれたという。
すると、フレイザー侯爵夫人があることを話した。
「アステルがある程度大きくなるまで、私がランドルフ伯爵家に残ることにします。既に息子夫婦がフレイザー侯爵家を仕切っておりますし、我が家で飼育している飛竜もおりますので何かあれば直ぐに王都に戻ることができます」
「ふにゅ?」
アステルちゃんを膝の上に乗せながら、フレイザー侯爵夫人が話しました。
娘が育てることができなかったアステルちゃんを養育することで、娘の無念を晴らそうとしているのでしょう。
そんなフレイザー侯爵夫妻に、ルキアさんとテリー様が話しました。
「フレイザー侯爵ご夫妻様、ブルーノ侯爵家は元よりランドルフ伯爵家と繋がりがございます。今後も変わらずご支援いたします」
「バイザー子爵家についても、今以上の支援を約束しよう。私にとっても、ランドルフ伯爵家は隣領にある重要な貴族家です」
「ご支援頂き、誠に感謝する。本当にかたじけない」
フレイザー侯爵夫妻がルキアさんとテリー様に深々と頭を下げているけど、ランドルフ伯爵家にとって力のある貴族家が支援するのは大きいことだ。
もちろん、バルガス公爵家も支援を約束していた。
「後は、今やこの国で一番勢いのあるライズ子爵がランドルフ伯爵家に深く関わっているのも大きいわ。ブルーノ侯爵家並びにランドルフ伯爵家で起きた闇組織の騒動を迅速に対応しているし、アステルもこんなにも懐いているのだからね」
王妃様が俺のことを滅茶苦茶褒めているけど、結局のところ俺はランドルフ伯爵夫妻を助けることはできなかった。
そのことは、俺はかなりの心残りだった。
ビルゴをもっと早く倒せなかったのかと、そう思ってしまった。
俺はまだまだ力不足だなと、今回の戦いで痛感させられたのだ。
すると、王妃様が俺に話しかけてきた。
「サトーはまだ若い。それこそ、最上級生とはいえまだ学園生なのだ。今回のことは辛い経験だったかもしれないが、代わりに聖魔法を扱えるようになった。過去の自分を超えるように、これからも鍛錬を続けることだ」
俺は、王妃様に深く頷いた。
確かに、こんなところで足を止める訳には行かなかった。
もちろん、この場にいる多くのものが俺と同じように王妃様に頷いていたのだった。




