第二百十五話 ドラコたちが到着です
「「えい、えい!」」
「そうそう、今は元気よく振ることが一番よ。もう少ししたら、型を教えてあげるわ」
翌朝、俺たちは毎朝の訓練をしていた。
フェアとレイアがリンさんに木剣の振り方を教えて貰っていたけど、今は剣技を楽しんで欲しい。
その他の面々も、思い思いに組み手を行っていた。
「うんしょ、うんしょ」
「「キャッキャッ!」」
俺はというと、何故かコタローとアステルちゃんを抱っこした状態でスクワットなどの筋トレをしていた。
どうやら、二人の赤ちゃんはこうして一緒に動くのがとても楽しいらしい。
ちなみに、治療する時だけ女装姿になればいいので今は何もしていない。
すると、訓練を終えたアルス殿下が俺にあることを告げた。
「今日の昼前に、バスク子爵もランドルフ伯爵家にやって来るという。なので、明後日国境の施設に行く予定だったが、予定を変更してランドルフ伯爵夫妻の葬儀を行うことにした」
周辺領地の当主に加えて閣僚と王家もいるから、葬儀に参加するメンバーとしては全く問題ない。
いつまでも棺の中に入りっぱなしも忍びないし、教会とも葬儀の日程を確認中だという。
そして、今日中にきちんとした棺が出来るので、教会に安置されてランドルフ伯爵領兵による警備がつくらしい。
それと共に、領民へも周知されるようになっていた。
ちなみに、ダインはビルゴによって爆死させられたが、こちらも棺を作って遺品などを入れて埋葬するという。
人柄は議論の余地があったが、ランドルフ伯爵家の息子であることは間違いない。
こうして少し日にちが経つと、俺もダインのことには少し思うところがあった。
バサッ、バサッ、バサッ。
すると、ブルーノ侯爵領の方角から一匹の赤いドラゴンが屋敷を目指して飛んできた。
間違いなく、ドラコが竜化した姿だろう。
そして、赤いドラゴンは庭に着陸して人型に姿を変えた。
「ふう、久々に空を飛んだなあ」
ドラコが肩をぐるぐると回しながらこちらにやってきていて、軍務大臣夫人とヴィル君も思わず苦笑していた。
そして、ドラコはコタローとアステルちゃんを抱っこしている俺のことを見てキョトンとしていた。
「あ、あれ? この匂いって。でも、サトーって女性だったはず……」
そういえば、いつもドラコの前ではいつも女装姿だったっけ。
同じ匂いがする人物が、男性の姿でいるのだから訳分からない状態になっているようだ。
そして、シロとミケがドラコに近づいて衝撃的なことを教えた。
「あのね、お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだよ!」
「ドラコの前だと、女装していたんだよ!」
「なんだってー!」
おお、ドラコがまるで漫画のように尻もちをつきながら見事な驚き方をしていた。
そして、俺の近くに来てもう一度匂いを嗅いできた。
「やっぱりサトーの匂いだ。何よりも、コタローがここまで懐く人ってそんなにいないはず……」
「パパだよー」
「うにゅ?」
ドラコは、未だに俺の正体を知って信じられないって表情をしていた。
俺に抱っこされているちびっ子二人は、そんなドラコのことを不思議そうに眺めていたのだった。
「サトーさんは、潜入任務があったので女装していたのです。まあ、私も聖女と言われるようになるなんてと思いましたよ」
「はあ、例の聖女様がサトーが女装した姿なんて。もうブルーノ侯爵領だと聖女サトーは崇拝対象になっていたぞ」
朝食時にルキアさんがドラコに色々と説明をしていたが、何だか聖女サトーが崇拝対象というとんでもないことをドラコが言っていたぞ。
ランドルフ伯爵領でも俺が治療を行えばとんでもないことになっているし、本当にどうしているのだろうか。
「えーっと、サトーさんが女装するととんでもなく美人になりますし、治療の評価もとても高いです。聖魔法が使えるようになったとなると、ますます聖女サトー様は有名になるかと……」
ルキアさん、そんなちょっと絶望的なことを苦笑しないで言わないで下さい。
聖女サトーは、あと二日で終了です。




