第二百十四話 今日の作業が終了
夕方になり、ようやく俺たちは治療から解放された。
間違いなく、ブルーノ侯爵家で無料治療した時よりも疲労が濃い。
とはいえ、教会の治療を邪魔してはいけないので三日間限定で行うことになった。
思った以上に仕官希望者がいて、捕縛された人数を考えると三日間あれば十分という話になった。
そして、国境に行っていた軍務大臣たちもランドルフ伯爵家の屋敷に戻ってきた。
こちら側も色々あったみたいなので、話を聞くことになった。
「国境を警備する軍にも、人神教に関与していたものが複数いた。それは捕まえたから良いのだが、問題は国境の施設の状況があまり良くないことだ。サトーのスライムが仮の土壁を作ったが、宿舎を含めて根本的に改善しないとならない」
夕食時に軍務大臣が愚痴をこぼしていたが、施設環境の改善は急務だ。
となると、土魔法が使える面々が国境の施設に行った方がいい。
すると、この人が手を挙げた。
「ふむ、なら妾が行った方が良いじゃろう。ある程度の補修なら、妾でもできるのじゃ」
「キュッ!」
ビアンカ殿下とともにホワイトも手を挙げていたけど、ホワイトが抜けると貴重な回復魔法使いが減ってしまう。
更に、フランソワまで主であるビアンカ殿下についていく気だ。
なので、代わりにスライムのおもちが屋敷に残ってくれることになった。
そして、更に助っ人も来るという。
「妻とヴィルが、竜化したドラコに乗って明日やってくるらしい。全く、昔からやんちゃなことばかりするのだから」
軍務大臣は思わず苦笑しているけど、ブルーノ侯爵家に軍務大臣の馬車があるのだから乗ってくればいいのに。
ドラゴンに乗るのってどんなものか、試してみたいという。
皆さん、怪我だけはしないで下さい。
更に、軍務大臣がとんでもないことを言ってきた。
「明後日までの住民への無料治療が終わったら、サトーは国境の施設に言ってくれ。治療は既に済ませているが、兵が聖女様に会いたいと言っているのだ」
あの、わざわざ女装男子を見なくても良い気がするのですが。
そんな物珍しい人がどこにいるのかと思ったら、もの凄い数がいるらしい。
今日軍務大臣と同行したリーフも、兵がそんなことを言っていたとウンウンと頷いていた。
「まあ、サトーは二日間住民の治療に専念すればいい。明日からはエステルも兵希望者の手合わせに回せるし、私もエステルがぐちゃぐちゃにした資料を直さなくて済む」
「お兄ちゃん、流石にその言い方はないなあ」
エステル殿下がお肉を食べながらぷりぷりと怒っていたが、とうとうアルス殿下から書類整理も戦力外通告を受けてしまった。
なので、力仕事をしつつ兵希望者の手合わせというブルーノ侯爵領と同じ仕事をすることになった。
何も仕事がないよりかは、いいと思わないと駄目ですね。
「「あぐあぐ」」
「ふふ、二人とも美味しそうに食べていますね」
コタローとアステルちゃんは、美味しそうにご飯を仲良く食べていた。
ルキアさんが面倒をみてくれているけど、二人は赤ちゃん同士とても仲良くなっている。
アステルちゃんにとっても、色々な人と触れ合うのは良い機会なのでしょう。
そして、アルス殿下があることを話した。
「時期を見て、アルテルのランドルフ伯爵家当主就任の謁見をしないとならない。まあ、ランドルフ伯爵家のゴタゴタと国境の件が落ち着いてからだな」
「むにゅ?」
アルス殿下がアステルちゃんの頭を撫でながら話をしていたけど、当主就任の話はキチンとしないといけない。
暫定統治者の話もあるし、本当に面倒くさいことですね。
そして夕食後はみんなでお休みなのだけど、何といつの間にかコタローとアステルちゃんが手を繋いで寝てしまっていたのだ。
流石に引き離すのは気が引けるので、しょうがなく他の子どもたちとともにアステルちゃんも俺のベッドで寝ることになった。
ふう、何だか本当に一日が長かったよなあ。
そんなことを思いながら、俺もベッドに潜り込んだのだった。




