第二百十一話 後始末開始
そして、皆が少し落ち着いてから僕たちも色々と動き始めました。
まず、ホワイトが生活魔法でランドルフ伯爵夫妻の遺体を綺麗にします。
更に、ラムネが氷魔法でランドルフ伯爵夫妻の遺体が腐敗しないように凍結しました。
ついでに、ブドウとおもちが屋敷の玄関ホールに入って、大量のオークをアイテムボックスにしまい込み、生活魔法で戦闘の跡を綺麗にしていた。
「ビアンカ、あとチョコもだな。このままではランドルフ伯爵夫妻が忍びない。正式な棺桶ができるまで、土魔法で棺桶を作ってくれ」
「了解じゃ、直ぐに行おう」
ズゴゴゴゴ。
すぐさま、土魔法製の二つの棺桶が出来上がり、兵が丁寧にランドルフ伯爵夫妻を棺桶の中に入れた。
そして、玄関ホールに棺桶を運んでいったのだった。
「では、次の手を打とう。屋敷の中と国境に分かれて、人神教に絡んでいるものを捕縛するのだ」
「「「はっ、」」」
「キュッ!」
アルス殿下が指示を出すと、国軍とランドルフ伯爵領兵、更にはホワイトたちも敬礼をしていた。
そして、従魔たちも半分に分かれてそれぞれ活動を始めた。
ちなみに、国境へはバハムートも向かうそうです。
「じゃあ、悪い人をどんどんと捕まえるよ!」
「ふふふ、ここはミケにお任せだよ!」
シロとミケも、張り切りながら再び屋敷の中に入っていった。
その間に、軍務大臣が通信用魔導具で各地に連絡をしていた。
ビルゴによって、ランドルフ伯爵夫妻が操り人形状態になっていて、ダインも魔獣化していたこと。
ダインが、ビルゴによって爆死したこと。
ランドルフ伯爵夫妻が、ビルゴを討ったこと。
そして、ランドルフ伯爵夫妻が亡くなり、一歳のアステルちゃんが暫定当主になったことです。
ちなみに、アステルちゃんはブドウと軍の鑑定魔法により間違いなくランドルフ伯爵夫妻の子と確認されました。
どうやら、ランドルフ伯爵夫妻は赤ちゃんを流産したことにしていて、侍従長に産まれたばかりの赤ちゃんを預けていたそうです。
「あぶあぶー」
「アステル様、なんとおいたわしいことでしょうか……」
侍従長は、再び涙にくれながらアステルちゃんを抱っこしていました。
何にせよ、いま赤ちゃんのアステルちゃんが人身教国と国境を接するランドルフ伯爵領を治めるのは不可能だ。
ということで、当面の対応について陛下からアルス殿下に連絡が入った。
「ふむ、そういうことか。取り急ぎは、現状のメンバーが状況が落ち着くまで仮統治をする。国軍を駐留させ、代官が決まり次第ランドルフ伯爵領へ寄越すそうだ」
こればっかりは仕方ないですね。
とにかく、ランドルフ伯爵領と国境の安定を優先しないとならない。
しかし、拠点となるランドルフ伯爵家の屋敷が安全でないとならない。
こうして、当分の間屋敷の中はかなりドタバタしていました。
幸いなことに、執事は問題ないと判定されました。
同じくランドルフ伯爵家を支えている侍従長とランドルフ伯爵領兵のトップも問題ないことが、この先のことを考えるととても助かる。
そして、次々とタラちゃんとフランソワによって拘束された人神教関係者や犯罪を犯したものが連行されていった。
バサッ、バサッ、バサッ。
屋敷の中がだいたい落ち着いたタイミングで、一頭の飛竜が屋敷の庭に着陸した。
どうやら、戦闘が終わったという知らせを聞いて、ルキアさんがブルーノ侯爵家からやってきたみたいです。
すると、予想外の三人が俺のところに駆けてきました。
「おにーちゃん!」
「「パパ!」」
「わっ、とと……」
フェアとレイア、それにコタローが僕に抱きついてきたのです。
そして、ルキアさんがちょっと苦笑しながら俺にこの三人を連れてきた理由を教えてくれた。
「目を覚ましたら、サトーさんがいないと大騒ぎをしていたんですよ。サトーさんはランドルフ伯爵領にいると伝えたら、一緒に行くと言ってきまして……」
ルキアさん、本当に申し訳ないです。
確かに、寝ている時は三人とも俺と一緒だったもんなあ。
そして、アルス殿下がルキアさんに今までの経緯を改めて話すと、ルキアさんはランドルフ伯爵家の執事に話しかけました。
「お久しぶりでございます、ブルーノ侯爵家のルキアです。この度は、ご愁傷さまです。ブルーノ侯爵家は、今後もランドルフ伯爵家への変わらぬ支援を行います。どうかご安心下さいませ」
「ルキア様、なんともありがたいお言葉です。きっと、旦那様と奥様もさぞかし喜んでいるでしょう」
この周辺の大物貴族であるブルーノ侯爵家がランドルフ伯爵家を支援することは、ランドルフ伯爵家にとっても大きな意味を持つ。
いずれにせよ、後は無事に国境の警備状況を改善出来ればとりあえずは大丈夫だ。
そして、別の問題が俺を襲っていた。
「アルス殿下、魔力が空っぽでもう限界です……」
ランドルフ伯爵夫妻を治療したことにより、俺の魔力は完全に尽きてしまった。
早起きをした上に体力的な疲労も重なっているので、ぶっちゃけいつでも眠れそうだ。
そんな俺の様子に、アルス殿下も思わず苦笑をしていた。
「サトーは、色々なことで無理をしたからな。客室を用意してやってくれ」
「畏まりました」
執事がアルス殿下に恭しく頭を下げていたが、俺の眠気はもう限界だった。
「「「うん?」」」
「すー、すー」
そして、抱きついている三人を抱っこしたまま、俺はいつの間にか寝てしまったのだった。




