第二百一話 作戦会議
ウェリン公爵夫人がブルーノ侯爵家にやってきたのは、孫のヴェル君のことを心配してのことだった。
実際には来年一緒に学園に通うビアンカ殿下、ミケ、シロ、ドラコと仲良くしていて、問題ないと思ったみたいだ。
そして、何故かあの一件以来軍務卿とミミはかなり仲良くなっていた。
恐らく、ウェリン公爵夫人の恐いところを間近で見た者同士だからなのかもしれない。
当初ミミはブルーノ侯爵家で養育される予定が、軍務卿のところに変わった。
ウェリン公爵夫人もヴェル君も、ミミのことを歓迎しているし問題はなさそうだ。
「では、話し合いを行う」
そして、作戦決行の前夜となった。
俺たちは、応接室に集まって作戦の話し合いをすることになった。
アルス殿下と軍務卿が、この場を仕切るそうだ。
うちの馬とバハムートが応接室の窓から顔を覗かせて話を聞いているが、この三頭にも重要な役割がある。
「作戦決行は明日の早朝だ。夜明け前に、ランドルフ伯爵家の屋敷とワース商会に突入して一気に制圧する」
アルス殿下の説明に、俺たちはコクリと頷いた。
市街地戦を避けるために、奇襲作戦を仕掛けることになった。
「まず、ランドルフ伯爵家の屋敷へは私、エステル、ビアンカ、サトー、リン、ミケ、シロが飛竜に乗って向かう。ブルーノ侯爵家からランドルフ伯爵家までの距離を考えても、飛竜一頭につき三人は乗れるだろう」
ランドルフ伯爵家の屋敷ではなにが起こるか分からないので、主力級を投入することになる。
飛竜を操る近衛騎士もいることを考えると、かなりの戦力となるだろう。
「バハムートと従魔たちが、ワース商会制圧部隊になる。陽動も兼ねるから、派手に動いて構わない」
「グルル」
「ふふ、やっちゃうよー!」
アルス殿下の発言に、窓際にいるバハムートと俺の肩に乗っているリーフがやる気満々の声を上げていた。
ランドルフ伯爵領にあるワース商会には囚われているものはおらず、既にタラちゃんとブドウによって武器の殆どが無効化された。
恐らく楽勝で制圧できるけど、そこは念のために戦力を整えることにした。
ちなみに、リーフがリーダーっぽい発言をしているが、あくまでも従魔たちのリーダーはホワイトである。
「そして、更に陽動を仕掛ける為に軍も派遣する。この陽動班に、軍務卿とサトーのところの馬が加わってもらう」
「「ブルル!」」
またもや窓際から馬がやる気満々の声を上げていたが、あくまでも陽動なのだからやりすぎないように。
念のために、怪我した時用におもちが軍務卿と一緒にいることになった。
陽動部隊は、夜中のうちに出発予定です。
「王都とバスク子爵にも連絡をしている。もちろん、ブルーノ侯爵家も今夜は臨戦態勢だ。奴らがなにをしてくるか、全く分からない。警戒に警戒をする」
「畏まりました。万全を期すようにいたします」
既にルキアさんも色々と手を打っているらしく、ルキアさん自身も部隊の指揮を執るそうです。
何事もないように、全てが上手くいくようにしないと。
そして、別の意味で懸念がありました。
アルス殿下が、妹に向けて一言。
「エステル、朝早いが起きられるか?」
エステル殿下は、寝るのは早いけど朝起きるのがとにかく弱いのです。
いつも、訓練時間ギリギリまで寝ています。
全員の視線がエステル殿下に向く中、エステル殿下が胸を張って自信満々に答えた。
「お兄ちゃん、私はバルガス公爵領で動いた時もちゃんと起きているよ。今夜も早く寝るんだから」
なんというか、いつもよりも早く寝れば大丈夫という単純な思考だった。
とはいえ、誰もがそれしか方法がないと思っていたのだった。
ちなみに、エステル殿下に目覚まし時計型の魔導具を貸すかとアルス殿下に進言したら、遅れそうになったらアルス殿下が叩き起こすから気遣い不要というありがたいお言葉を頂いた。
俺は、絶対にエステル殿下は起きられないと思うぞ。




