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異世界転生は苦労がいっぱい 〜いきなり高貴な人の面倒ごとに巻き込まれたけど、仲間と一緒に難題を解決します〜  作者: 藤なごみ


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第二百話 軍務卿夫人が到着

 朝食後は、またまたブルーノ侯爵家の前で治療と家臣受付の申し込みを行うことになった。

 家臣申し込みは一段落したのもあり、だいぶ数は少なくなった。

 そのため、受付は縮小してミケとシロは馬とともに町の巡回に出ていた。


「あの、なんで治療は一向に人が減らないのでしょうか……」


 何故か、治療には未だにかなりの数が並んでいた。

 とはいえ、これ以上無料治療をすると本来の教会の有料治療の邪魔をしてしまうので、本日限りとなった。

 聖女様に会えないと言っているものがいるが、俺はただの女装男子だぞ。


「うーむ、連日聖女として振る舞っておるから、女性としての所作に違和感がなくなっておるのう」

「だよね。私も、そう思うよ!」


 あの、ビアンカ殿下とエステル殿下の王女様お二人がとんでもないことを言ってきたが、他の女性陣も否定することはなかった。

 俺は、心の中で涙したのだった。

 ちなみに、ヴィル君は直ぐに俺の女装を見破った。

 骨格に違和感があったという。

 そして、ドラコは未だに俺のことを女性だと思っていた。

 なんとも悲しい事実である。


「じゃあ、植木鉢にお花の苗を植えましょうね」

「「「はーい」」」


 そして、ミミを含むちびっ子たちは、ルキアさんと一緒に庭で小さい苗を植木鉢に植えていた。

 普通は屋敷の使用人が行うが、今日はあえてちびっ子にやらせていた。

 情緒教育にも良いし、感情に乏しいミミにとっても良い勉強でしょう。

 コタローも、バハムートと一緒に楽しそうに土をスコップでペタペタとしていた。

 しかし、俺としてはルキアさんとちびっ子たちの直ぐ側で軍務卿とエステル殿下がブルーノ侯爵領兵希望の獣人を訓練しているのがかなり気がかりだった。


 パカパカパカ。


 そんな中、一台の馬車がブルーノ侯爵家の屋敷に到着した。

 よく見ると、軍務卿と同じ家紋が馬車に彫られているぞ。

 そして、馬車の中から白髪の髪を綺麗に頭に纏めている背の小さい品のあるご婦人が出てきた。

 多分だけど、あの人は軍務卿の奥さんだろう。

 しかしタイミングが悪いのか、こんな時に限って軍務卿がやらかしてしまった。


「そうだ、もっと力を込めて木剣を振る……」


 バッキャーン!


「「「あっ……」」」


 なんと、軍務卿が指導しながら後ろに下がった時に、ちびっ子たちが苗を植えた植木鉢の一つを思いっきり踵で蹴っ飛ばしたのだ。

 軍務卿は、無残な姿になってしまった植木鉢とスコップを持ったまま固まってしまったちびっ子たちの姿を見て「ヤバい!」と思っていた。

 時が止まったかのように、治療を受けていた人も含めて全員が動きを止めて壊れてしまった植木鉢を見ていた。


「ミミの、植木鉢……」


 しかも、よりによってミミが苗を植えた植木鉢を破壊してしまったのだ。

 ミミは、呆然としながら壊れた植木鉢を眺めていた。

 これは、流石にヤバいでしょう。


「ミミ、すまん。この通りだ」

「ぐすっ、ぐす……」


 軍務卿が慌ててミミのところに駆け寄ったけど、ミミは初めて泣くという感情を見せていた。

 その間に、スライムたちが吹っ飛んだ苗の側に行ったけど、何とか辛うじて大丈夫みたいだ。

 そして、この一連の流れを見ていた人がゆっくりと軍務卿に近づいていった。


「あなた、直ぐに新しい植木鉢を持ってきて苗を移し替えなさい。それが終わったら、その子と一緒に私とお話しましょうね……」

「イエス、マム!」


 軍務卿は、ミミを抱っこしたまま綺麗な敬礼を夫人に見せていた。

 そして、急いで新しい植木鉢に苗を移し替えた後、ミミを抱いたまま夫人が乗ってきた馬車に入っていった。

 きっと、「お、は、な、し」という名の何かが行われるのだろう。


「お祖母様は、調子に乗っているお祖父様が失敗すると本気で怒るんです。多分、一時間は説教をすると思います」


 一緒に兵希望者を鍛えていたヴィル君が、馬車を見つめながら話をしていた。

 時折馬車の中から大声が聞こえてくるが、アルス殿下ですら馬車に近づくことはなかった。

 そして、気にしては駄目だと思い、それぞれが活動を再開した。

 その間に、スライムたちが植木鉢の手入れをしてくれていた。


「皆さま、夫が本当に申し訳のないことをしました」


 二時間後、馬車から降りてきたウェリン公爵夫人は、僕たちに深々と頭を下げていた。

 そして、何故かミミは怒られていたはずの軍務卿にピタリと抱きついていた。

 きっと、人には言えない何かがあったのだろう。

 軍務卿の頬が赤く腫れているのが、何よりの証拠だった。

 俺たちは、ウェリン公爵夫人には逆らってはいけないと心に誓ったのだった。

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