第二十話 バルガス公爵領のギルドマスター
「では、受付をしましょう。話は通してありますので」
「「はーい」」
昨日の内に冒険者ギルドに連絡がいっていたのか、俺達は騎士の案内で受付奥の個室に通された。
「失礼します。登録用紙をお持ち致しましたので、こちらにご記入ください」
「「はい」」
直ぐにギルドの職員が部屋に入ってきて、お茶を出しつつ登録用紙を持ってきてくれた。
俺とシロとミケは、職員から登録用紙を受け取りそれぞれ内容に沿って記入していく。
シロとミケも、真剣な表情で登録用紙に記入していった。
時々スライム達から指摘を受けているのはご愛嬌としておこう。
「「できました」」
「はい、問題ありませんね。では、もし個人カードをお持ちでしたら提出下さい」
「私だけ持っています。こちらになります」
「確かに受け取りました。では、ギルドマスターが来るまで暫くお待ち下さい」
「「はーい」」
職員に登録用紙と俺の個人カードを渡して、後は登録を待つだけだ。
登録の間に、本命の冒険者ギルドとの話し合いが行われるらしい。
出されたお茶に口をつけつつ、俺はビアンカ殿下と話をする事に。
「ビアンカ殿下、本日はギルドマスターとどの様な話をするのですか?」
「襲撃事件がなくても、とある組織の事について話を聞くつもりじゃった」
「とある組織、ですか」
「うむ、間違いなく今回の襲撃事件に絡んでいる組織じゃ。サトーも良く聞いておくが良い」
「分かりました」
ビアンカ殿下が真剣な表情で俺に話をしてくれたけど、それだけ重要な組織の事なんだ。
昨日の襲撃事件に関与しているとなると、恐らく犯罪組織なのだろう。
すると、部屋のドアがノックされて小柄な女性が入ってきた。
「失礼します。ビアンカ殿下、お待たせして申し訳ありません」
「いやいや、ギルドマスターにも忙しい所来て頂き感謝する」
ビアンカ殿下と騎士がソファーから立ち上がったので、俺達も急いで立ち上がった。
そしてビアンカ殿下は、ギルドマスターとガッチリ握手をしていた。
なんだろう、ギルドマスターは小柄な女性なのに、隙が全く感じられない。
「こちらにおるのが、サトーとシロとミケじゃ。昨日の襲撃事件の時に、妾達を助けてくれたのじゃ」
「サトーと申します。どうぞ宜しくお願いします」
「シロだよ」
「ミケです」
「わざわざご丁寧にありがとうございます。私はギルドマスターのマリシャと申します」
とても礼儀正しい女性で、好感が持てる。
俺達はソファーに座って、話をする事に。
すると、部屋に新たな人が入ってきた。
「すまんすまん、遅れた。しかし、面白い事が分かったぞ」
スキンヘッドの大男が部屋に入ってきた。
如何にも冒険者って格好の男性だ。
そして、マリシャさんの隣にどかっと座った。
「相変わらずじゃのう。ガンドフ」
「これはこれは殿下ではありませんか。ここまでご足労頂き感謝します」
ビアンカ殿下が、少し笑いながら目の前の大男と話をしている。
ギルドマスターの関係者であるのは間違いないだろう。
「あなた、先ずは自己紹介しなさい。初めてきた人もいるのですよ」
「おっと、こいつはいけねえ。俺は副ギルドマスターのガンドフだ。よろしくな」
「シロだよ」
「ミケだよ」
「お、元気なお嬢ちゃんだな。ガハハ」
うーん、ガンドフさんは豪快な人だな。
シロとミケにも、豪快な笑顔で返していたぞ。
しかし、気になる発言があったぞ。
「もしかして、ガンドフさんとマリシャさんはご夫婦なのですか?」
「ええ、そうよ。実は子どももいますよ」
「「おお!」」
「へえ、そうなんですね」
あっさりと、マリシャさんがガンドフさんと夫婦だと認めたぞ。
シロとミケも、思わずびっくりしていた。
美人と野獣って感じだったけど、マリシャさんとガンドフさんの力関係は直ぐにわかった。
「こう見えて、マリシャの方が俺よりも年上、くぶぉ!」
「ふふふ、あなたは余計な事を言わない様にね」
「くっはぁ、おまえ、冗談にしてはキツすぎるぞ……」
ガンドフさんが余計な事を言った瞬間、マリシャさんの肘打ちがガンドフさんの脇腹に直撃した。
ガンドフさんは、悶絶した表情でソファーから床にまで吹き飛ばされたぞ。
うん、どう見てもマリシャさんの方がガンドフさんより力が上だぞ。




