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第二話 誤解(ロリコン疑惑)の中での異世界デビュー

 ちゅんちゅん。


 風が木々を揺らす音と、日差しの温もり。

 心地よい感覚の中、俺は目覚めた。


「うーん、ここが新しい世界か」


 俺は背伸びをしながら、周りを見渡した。

 街道と思わしき整理された道。

 街道の遠くには、防壁と思わしき大きな石造りの壁がそびえ立っていた。

 そんな中、俺は道の端にある木によりかかった状態で目覚めた。

 服装は普段着ていたスーツではなく、通勤中にスマホの漫画で見た異世界ものの服装だった。

 周りの景色と自分の服装を見ると、日本から異世界に来たって実感するな。


「「うーん」」


 ふと、誰かが俺の足を枕にして寝ている感触がする。

 視線を下げると、真っ白な耳とふさふさの尻尾を持った犬っこの女の子と、三毛の耳とすらりとした尻尾を持った猫っこの女の子が、俺の膝枕ですやすやと寝ていた。

 

「「うーん、さとーお兄ちゃん」」


 わーお。

 俺の膝の上で寝ている犬っこと猫っこは、尻尾をフリフリしながら何やらキケンな事を寝言でしゃべっているぞ。

 普段なら犬耳と猫耳に目がいって頭を撫でたくなる俺だが、今は汗がダラダラ流れている。

 異世界に来て早々、俺は何かやってしまったのか。

 何故、犬っこと猫っこが俺の膝枕で寝ているのか。

 いや、何も記憶はない。

 俺は何もやっていないはずだ。

 そう信じよう、というか信じたい


「「うーん」」


 もぞもぞと動いてしまったせいか、犬っこと猫っこがパチリと目を覚ました。

 そして目をこすりながら、俺の顔を見上げていた。

 

「あ、お兄ちゃんだ!」

「また会えたね!」


 目を覚ました犬っこと猫っこは俺の胸に飛び込んで来て、頭をぐりぐり押し付けて来る。


「えへへ、お兄ちゃんの匂いだ」

「間違いないよ、お兄ちゃんの匂いだ」


 俺の胸に飛び込んだまま、犬っこと猫っこはうっとりしながら俺の匂いを嗅いでいる。

 犬っこと猫っこは、俺の匂いを嗅ぎながら尻尾をぶんぶんと振っていた。


 一体何が起きているんだ?

 異世界について起きたら、いきなり犬っこと猫っこに抱きつかれている。

 俺は全く状況が理解できなかった。

 

 からからから。


 ふと何か音が聞こえたかと思ったら、その音が俺の前で止まった。

 顔を上げると、一台の馬車が止まっていた。

 結構豪華な馬車だ。

 馬車の窓が開いていて、貴族っぽいダンディな男性とドレスを着た少女がこちらを見ていた。

 豪華な馬車の前後には、馬に乗った騎士っぽい人が護衛している。

 そうか、ここは街道っぽい所だった。

 という事は、色々な人が街道を通っているのか。


 あれ?

 少し冷静になって考えよう。

 もしかして俺が犬っこと猫っこに抱きつかれている所を、色々な人にばっちり見られている?

 馬車の御者の人も、馬車の中にいる高貴っぽい人も、騎士の人も、皆ニヤニヤしている。

 

「「ヒヒーン」」


 おい、馬もニヤニヤかよ!。


「「お兄ちゃん!」」

 

 犬っこと猫っこは、相変わらず俺にくっついたままだ。

 もしかして、目の前の馬車に気が付いていない?


 ピュー。

 ふと風が吹いたタイミングで、馬車は何事もなかった様に動き出した。


 からからから。


 馬車の音が遠ざかって、俺から見えなくなっていく。

 俺の異世界ライフは、開始十分で終わったかもしれない……

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