第百九十二話 三人との再会
治療開始から二時間が経った。
俺とリーフ、そしておもちの一人と二匹は、列に並んでいる人をひたすら治療していた。
しかし、中々どころか全然列に並んでいる人が途切れない。
いったい、どれだけの人が並んでいるのだろうか。
「その、サトーさんの治療がとても良くて、『聖女様は確かに聖女様だった』という噂が町中を駆け巡っておりまして……」
シスターが申し訳無さそうに言ったけど、とにかくとんでもない数の人が並んでいるらしい。
中には孤児とかスラム街からやってきた人もいて、教会の孤児院で保護されているものもいる。
そして、年配の人が俺のことを見てありがたやーって拝んでいた。
握手をして下さいとかは常に言われていて、流石にサインとかは断っていた。
なんというか、体力魔力ともにまだあるのに気力が無くなってきた。
そんな時、教会に予想外の人物が姿を現した。
ととととと、ぽす。
「おねーちゃん!」
「「ママー!」」
なんと、フェア、レイア、コタローが姿を現したのだ。
思いっきり、俺にギュッと抱きついてきた。
馬と頭に乗っているタラちゃんが顔を見せたけど、もうバスク子爵領からやってきたのか。
どうやら軍と一緒に来たらしく、バハムートも姿を見せていた。
そして、レイアとコタローが俺のことをママと呼んだので、周りがざわざわとし始めた。
「そ、その、サトーさんにはお子さんがいたのですか?」
「あの、この子たちは違法奴隷として囚われていた子です。助け出した後、私に懐いたのでそのまま養育しています」
「そうなのですか。孤児の面倒をみるなんて、サトーさんは素晴らしい方なのですね」
あの、シスターがなんか勘違いし、更に周りの人に波及していった。
身寄りのない子どもを養育する、素晴らしい聖女様って言われているぞ。
あと、三人は俺から離れないしコタローもいるからバハムートも側にいる。
なので、屋敷に向かう馬とタラちゃんに、三人とバハムートが教会にいると伝えて貰うことにした。
では、治療再開の前にコタローを連れて長椅子に。
おむつ交換をしないと。
「ママと一緒で良いわね」
「うん!」
そして、コタローは俺の膝の上に乗って抱きついていた。
治療に来た人に頭を撫でられて、とってもご機嫌だった。
フェアとレイアも治療を手伝うと言ってくれたので、正直なところかなり助かった。
やはり、この人の数では治癒師が二人増えるだけでもかなりありがたい。
「バハムートも、ずっとコタローの面倒を見てくれてありがとうな」
「グルル」
俺の隣に座っているバハムートの頭を撫でてやると、バハムートも気持ちよさそうにしていた。
聖女様は飛竜も手なづけているのかと余計な噂が立っていたが、もう気にしないことにした。
そして、いつの間にか聖職者による炊き出しも始まっていて、昼食もその炊き出しを食べていた。
「ねーねー、全然人が減らないねー」
午後になっても人の数が減らず、リーフも少し愚痴を言っていた。
うん、無心だ。
こういう時は、無心で治療するのだ。
「すー、すー」
コタローはお昼寝タイムになったので、長椅にタオルとかを敷いて寝かせていた。
こうして、夕方まで怒涛の治療が続いたのだった。
「つ、疲れた……」
「聖女様、お疲れ様でした。とても素晴らしい治療で、町の人もとても喜んでおりましたわ」
とうとうシスターまで聖女呼びをしてきたけど、もう疲れてツッコむ元気もなかった。
リーフとおもちもヘロヘロになっていて、バハムートの背中の上に乗って休んでいた。
対して、フェアとレイアは久々に俺に会えたからかとても元気だった。
後片付けはお願いするとして、俺はコタローを抱っこしながら他の面々とともに教会を後にしたのだった。
「あの、サトーさんはいったい何をしたのですか? 真の聖女様が現れたと、町中の噂になっていますよ」
ブルーノ侯爵家に寄ったら、ルキアさんがかなり不思議そうな表情で話しかけてきたよ。
俺だって、特別なことはしていないのになんでこうなったか知りたいよ……
ちなみに、明日また治療するかどうかは決まっていないらしく、明日朝話をするそうです。
「「「ツンツン、ツンツン」」」
「へぁ……」
応接室では、別の意味で燃え尽きていたエステル殿下の姿があった。
無事にレポートは終わったらしいが、途中でフランソワの電撃を浴びたのか微妙に髪にパーマがかかっていた。
ちびっ子三人がエステル殿下を突っついていたけど、特に反応はなかった。
自業自得なのだから、誰も何も言わなかったけど。
そして、今日からブルーノ侯爵家に泊まることになったが、案の定ちびっ子三人に加えてミケとシロが俺と同じ部屋に泊まることになった。




