第十九話 バルガス公爵領の冒険者ギルドに到着
ちゅんちゅん。
ちゅんちゅん。
ぽよんぽよん。
ぽよんぽよん。
「うん? なんだこの感触は?」
翌日の朝、鳥の鳴き声と共に俺の体で何かが跳ねる感触で目が覚めた。
俺は目を開けて、顔を起こしてみた。
ぽよんぽよん。
ぽよんぽよん。
「お前達が跳ねていたのか」
何故かスライム達が、俺の体の上で跳ねていたのだ。
小さなスライムなので重さは殆ど感じないのだが、俺を起こそうとして俺の体の上で跳ねていたらしい。
俺が起きるとスライム達は満足したのか、次は分かれてシロとミケの体の上で跳ね始めた。
まだ朝食には時間がありそうだけど、せっかく起こしてくれたのだから身支度を整えるとするか。
「「うーん、むにゃむにゃ」」
因みに、シロとミケはスライム達が体の上で跳ねていても気にせず寝ていた。
最後はスライム達もシロとミケを起こす事を諦めて、俺にシロとミケを起こす様にすぴょんぴょんと寄ってきたのだった。
「ほら、シロ、ミケ、そろそろ起きろ」
「「むにゃむにゃ」」
「おーい」
結局少しの間、俺とシロとミケとの攻防が繰り広げられていたのだった。
「この後は冒険者ギルドに向かうが、ついでにスライム達も従魔登録しておくと良いだろう」
「従魔登録、ですか?」
「そうじゃ。従魔登録した魔物を、他の冒険者は横取りする事はできない。処罰の対象にもなるのじゃ」
「成程、それは良い制度ですね」
朝食時に、ビアンカ殿下からスライム達の事について助言してくれた。
折角なので、冒険者登録の際に活用させてもらおう。
ささっと朝食を済ませて、いざ冒険者ギルドへ出発です。
ビアンカ殿下もいるので、俺達は冒険者ギルドへは馬車に乗って向かいます。
「冒険者ギルドは、お館様のお屋敷から大通りを通り防壁の門のすぐ近くにあります」
「人々にとっても、とても分かりやすい位置にありますね」
「冒険者ギルドは多くの人が訪れます。その為に、お館様もギルドに援助をして今の位置に移転しました」
昨日も話をした騎士が馬車に同乗していて、冒険者ギルドについて色々と教えてくれた。
人々が使いやすい場所に配慮するとは、流石はバルガス様だ。
「あ、あのパン屋さんのパン美味しそう」
「ミケは果物が食べたいな」
シロとミケはというと、スライム達と共に馬車の窓に張り付いていて市場の品物を見ていた。
市場には沢山の店が軒を連ねていて、多くの買い物客が品物を買っていた。
昨日も市場の様子を見たけど、改めて栄えているなと感じるぞ。
「捜査の進捗次第だが、数日すれば少しは落ち着くじゃろう。そうしたら、市場で品物を買っても良いな」
「「おお、楽しみ!」」
ビアンカ殿下の言う通り、俺達も昨日の襲撃事件について色々と対応する事がある。
本当に数日で落ち着いて欲しいものだ。
そんな事を皆で話していると、馬車は冒険者ギルドに到着。
「「おお、大きい!」」
シロとミケが、冒険者ギルドの建物を見上げて驚いている。
冒険者ギルドは三階建ての石造りの建物で、一目見ただけでは役所の建物にも見えるぞ。
「「おお、凄い凄い!」」
建物の中に入ったら、更にびっくり。
シロとミケは、スライム達と共に大興奮だ。
受付ブースは沢山設けられていて、多くの冒険者が手続きを行っていた。
獲物などの買取りブースは別に設けられていて、人が混雑しない様に配慮されている。
依頼が掲示してある所も目的別に依頼を分けて掲示してあり、自分が受けたい依頼も直ぐに確認する事ができる。
そして、漫画などで描かれてあった居酒屋スペースはこの冒険者ギルドにはなく、冒険者も暴れる事はなくとても秩序が保たれていた。
「バルガス公爵領の冒険者ギルドは、一帯の領地の冒険者ギルドを統括しているのでとても規模が大きいのです。その為に、機能を分けてスムーズに対応する様にしております」
「成程、だからこれだけの冒険者がいてもスムーズに対応できているのですね」
騎士の説明にも、俺は納得だ。
そしてこれだけ大きい冒険者ギルドだからこそ、沢山の冒険者が訪れるのだろう。




