第百八十八話 アルス王子の到着
庭に四頭の飛竜が着陸するのが見えたが、間違いなくアルス殿下御一行だろう。
既に闇組織の面々は制圧したが、家宅捜索などが残っている。
ということで、この場にいる人たちにはもう少しいてもらいましょう。
「はぁぁぁ、サトーさんって綺麗な上にとってもお強いのね」
「それに、王女殿下とも対等に話をしているし、本当に聖女様ではないのでしょうか……」
うん、集まっているご婦人が何か変なことを言っているが、気にしないことにしよう。
そうこうしているうちに、アルス殿下が大部屋の中に入ってきた。
「王国第三王子アルスだ。王命により、これからブルーノ侯爵家への捜索を行う。いま暫く、この場に待機するように」
まあ、既に大事件が起きているからこの場にいる人も納得していた。
そんな中、俺はアルス殿下に歩み寄った。
「アルス殿下、ガッツ以下四名を倒しました。あと、リンさんたちがワース商会の制圧に向かっています」
「サトーか。なら、軍のものをワース商会に向かわせよう」
アルス殿下は、部下に魔獣化した四人の成れの果てを回収指示させつつ、俺に話しかけた。
すると、またもやご婦人たちがざわめき出したけど無視しておこう。
そして、回収が終わったところで血で汚れたこの部屋の中を綺麗にすることにした。
シュイン、ぴかー!
「おお、なんという魔法なのか」
「この広さの部屋を綺麗にするとは……」
来賓の皆さんがかなり驚いているけど、このくらいなら普通だと思いますよ。
やる気になれば、この屋敷全体を生活魔法で綺麗にできるし。
だいぶ落ち着いたところで、ブルーノ侯爵がルキアさんに車椅子を押されながらアルス殿下に話しかけた。
「アルス殿下、この度は本当に申し訳ない。どのような処分でも受け入れるつもりじゃ」
「ブルーノ侯爵が悪いわけではありませんが、結果的に闇組織の介入をさせてしまった。いずれにせよ、暫くはルキアとともに領内の統治に専念して下さい。そのうち、国からの処分が通知されるでしょう」
「かたじけない」
まあ、下手すれば闇組織の乗っ取りにあった可能性もあったし、資金流出の可能性もある。
とはいえ、そこまで厳しい処分にはならないはずだ。
すると、多くの使用人がテーブルと椅子を並べ始めた。
いったい、何が起きるのだろうか。
更に、料理まで運ばれてきたぞ。
念のために鑑定魔法で料理を確認したが、毒とかは入っていなかった。
すると、ルキアさんがジュースの入ったグラスを手にして一歩前に出た。
「それでは、こうして無事に父を助けることができました。闇組織の魔の手を止めることができた記念として、皆さまと一緒に祝いたいと思います。では、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
なるほど、来賓を食事に集中させることで俺たちが捜索しやすいようにしてくれたのか。
なら、その間に乾杯の音頭を済ませたルキアさんを中心にして屋敷内の捜索をすることになった。
「うーん、美味しいわ。流石は、ブルーノ侯爵家の料理ね」
「もしゃもしゃ、サラダもおいしいよー」
通常モードに戻ったエステル殿下とリーフは普通にオース商会の店長たちと料理を食べているけど、ある意味料理を食べた方がこちらとしても気が楽だ。
では、アルス殿下とビアンカ殿下も加わって屋敷内の捜索を始めよう。




