第百八十四話 ブルーノ侯爵家に到着
馬車に乗って程なくして、ブルーノ侯爵家に到着した。
なんというか、この地方で最大の貴族家だけあって庭も屋敷もかなり広かった。
事前に話がついているのか、屋敷の敷地内に普通に入っていった。
そして、ルキアさんとエステル殿下も、店長と俺たちについて行った。
ちなみに、従魔としてタラちゃんとフランソワがルキアさんたちについてきている。
リーフは普通に小さな店員扱いなので、俺の側でふよふよと飛んでいた。
既に町中にリーフの存在が広まっているのか、ブルーノ侯爵家の使用人も一瞬見ただけで特に気にすることはなかった。
そしてパーティー会場となる一階の大部屋に案内されたけど、ルキアさんとエステル殿下は廊下で待っている。
パーティーが始まった段階で、一気に作戦開始するためだ。
「これはこれは、オース商会の店長ではありませんか。噂の美人店員も一緒とは、とても羨ましいですな」
いわゆる社交の場なので、店長のところに多くの人が集まって来た。
巷で話題の俺とリーフの存在もあるので、この大部屋の注目度ナンバーワンだ。
俺にもたくさんの人が話しかけてきたが、総じて男性は頬を赤らめていた。
女装男子だと言って夢をぶち壊したいけど、今はとにかく我慢だ。
とにかくニコニコして、愛想良くしないといけない。
「ふむ、ここ数日で更に女性としての所作に磨きがかかっておるのう」
「だよねー」
おいこら。
ビアンカ殿下もリーフも、余計なことを言わないように。
俺は男だと、力強く言いたい!
すると、大部屋に何人かのものが入ってきたが、その中にあの偽物ブルーノ侯爵が含まれていた。
ニヤリ。
俺のことをジロジロとねちゃっとする嫌な目で見てきたので、思わずゾクリとしてしまった。
うん、あいつはぶっ飛ばさないと気がすまない。
どうやらそばにいたビアンカ殿下とリーフも俺と同じことを思ったらしく、少し殺気を垂れ流していた。
若い執事っぽい人もいるが、こいつもかなり怪しい雰囲気を醸し出していた。
そして、ターゲットを見つけた。
「ビアンカ殿下、あの無精髭を生やしたスーツを着たのがガッツです」
「うむ、妾も確認した。となると、ブラッククロウが背後にいるのは間違いない」
茶髪の短髪に無精髭を生やしたスーツの男こそ、あのビルゴの仲間でもあるガッツだった。
ガッツが偽物ブルーノ侯爵と執事とコソコソと話をしているのを見るに、偽物ブルーノ侯爵と執事もブラッククロウの一味か関係者なのは間違いなさそうだ。
となると、ヘタをしたら大規模な戦闘になるかもしれない。
人死は出したくないから、リーフに話して戦闘になったら魔法障壁を展開して関係者を守ってもらおう。
あと、探索魔法を使ってっと。
どうやら、これから本命のランドルフ伯爵令嬢がやってくるみたいだ。
ランドルフ伯爵令嬢が大部屋に入れば、ルキアさんたちも行動を開始する。
それまで、何とかして時間稼ぎをしないとならない。
ついでに市内を探索魔法で調べたが、今のところは問題なさそうだ。
何かあってもリンさんたちがいるし、もうそろそろバスク子爵家から駐留軍も到着する。




