第百七十九話 誰か手伝って……
翌朝、起きて窓からワース商会を見ると大きいミノムシが幾つかできていた。
夜中にコマドリ亭もしくはオース商会を襲おうとしたのだろうが、全部馬とアルケニーたちが防いだみたいだ。
しかし、奴らも勝てない相手に再び喧嘩を売るとは懲りない連中だ。
そんなことを思いながら、俺は別のベッドに寝ていたのにいつの間にか俺のベッドに潜り込んでいたミケとシロを起こしたのだった。
「しかし、髪型と髪色が変わるだけでこうも分からなくなるとは……」
「ウィッグならたくさん買ってありますよ。サトーさんは今つけているウィッグがよく似合っているので、予備に数個用意してあります」
朝食時、女性陣は全員昨日と違うウィッグを身に着けていた。
女性は化粧で化けるというが、まさにそんな感じだった。
服も違うので、同一人物とは全く見えなかった。
リンさん曰く、変装セットはまだまだあるし組み合わせ次第で無限に対応できるという。
「サトーさんも、女装が板についてきましたね。仕草も女性らしいです」
「リンさん、それはやめてくれ……」
きっとリンさんは悪気がなく言っているのだろうけど、俺には女装癖はありません。
本当に普通の男ですよ。
ビアンカ殿下やルキアさんなんかは、俺の心の叫びを分かっているのかクスクスとしていた。
そして、朝食を食べ終えたらさっそく行動開始です。
昼食は、各自で食べることになった。
俺は準備を整えて、リーフとともにオース商会へと向かった。
「今日も、いっぱい売るよー!」
リーフは、朝から元気いっぱいだった。
そして、裏口から店内に入ったら更に商品が積み上がっていた。
俺から見れば、過剰在庫にも見えるが……
「これくらいは直ぐに売れるよ。なんていったって、美人の嬢ちゃんが店員なんだからね!」
「そうだよ! サトーなら大丈夫だよ!」
店員のおばちゃん、俺は男ですよ……
リーフも一緒になって俺の背中をバシバシと叩くけど、他の店員もうんうんと頷いています。
トホホと思いながら、俺は開店準備を始めた。
そして開店直後、俺は現実を知ることになった。
「あ、あの、店員さんのお勧めは何ですか?」
「ちょっと、私が先に聞くのよ!」
「私なのよ!」
「順番に、順番にお願いします!」
まさか、開店と同時に多くの人が俺に詰めかけるとは思わなかった。
そのため、順番に並んで貰ってぱぱっと似合うのを選んでいった。
それでも、さばいてもさばいても人の波が止まらない。
時間をかけずに女性に似合うものを選ぶのは、かなりハードルが高いぞ。
ちなみに、人が多すぎるのでサインは無しになった。
「これも似合うよー」
小さな店員さんも大車輪の活躍で、これまた多くの人に商品を売っていた。
会計を増員しているのだが、それでも多くの会計待ちが発生していた。
店長も手伝っているけど、ウハウハが止まらないみたいだ。
バシッ、ドカッ!
時折馬が店頭でならずものをぶっ倒している音が聞こえるけど、確認する余裕すらなかった。
こうして、まさかの大忙しが午前中から続き、あっという間にお昼になった。
「サトー、手伝いに……」
「「おおー、人がいっぱいだ!」」
予定通り変装したエステル殿下、ミケ、シロがやってきたが、店内のお客様の多さにビックリしていた。
そして、忙しく接客している俺をスルーして、商品の補充を始めていた。
誰か、俺のことを手伝って……




