第百七十八話 今日の成果は?
「予想外に疲れた……」
「たのしかったー!」
閉店時の俺とリーフの感想は正反対だった。
俺は接客をしつつサイン対応もしていたので、とにかく忙しかった。
握手とかもされたけど、とにかく目まぐるしい半日だった。
対して、リーフは元々マスコット的な存在なので、サインをしたり挨拶していた。
接客はほどほどだし、ちやほやされていたから疲れてはいないだろう。
元々の店員も忙しかったけど、過去最高の売上を叩き出したので店長はウハウハだった。
そして、明日も一日店員をすることがいつの間にか決定していた。
「サトーがここで店員をすることにより、何も問題のない市民をオース商会に集めることが可能じゃ。更に、不審者が現れても馬が全部撃退する。ある意味サトーを餌にした作戦をすることができるのじゃ」
夕方、オース商会に顔を出したビアンカ殿下が色々と話をしてくれたが、俺を見るためにそこまで人が集まるとは思わないけど……
そう思っていたら、店長がビアンカ殿下の話を補足した。
「私の感想になりますが、サトー様が当商会にいることにより、この領都の一割のものが集まるのではと思います。明日は、更に多くのものが集まるのではと思っております」
う、うーん、そう上手くことは進まないと思うけど。
ちなみに、馬二頭はもっと悪人が増えても余裕で対応できると自信を持っていた。
そして、今日ワース商会に潜入したポチも、捜査の片手間で大きなミノムシを作れるという。
ただし、多くのものが売れたために在庫不足になったので倉庫からの荷物運びをしないとならない。
「「よいっしょ」」
「これはこっちでいいかな?」
なので、現在力自慢の三人が荷運びをしていた。
ミケとシロに加えてエステル殿下が張り切っていて、もう明日朝からの営業は問題なかった。
追加の荷物も、明日の昼には到着するらしい。
なんというか、流石は店長と言えましょう。
なので、お昼頃には力自慢の三人がお手伝いに来るそうです。
あと、偵察の結果はコマドリ亭に行ってから話をすることになった。
話が外部に漏れるのを避けるために、コマドリ亭の俺が泊まる部屋に集まった。
「では、先に私たちから報告をしますね。やはり、二日後のパーティー資金を集めるのにみかじめ料などを請求している現場に遭遇しました。全て拘束して守備隊に突き出しています。その際に、私たちだとバレないように再度変装をしています」
リンさんが、市内巡回の件で話をしてくれた。
念には念を入れる辺り、流石だと言えよう。
明日も、今日とは別の変装をして町を回るという。
続いてブルーノ侯爵家の屋敷とワース商会に潜入した面々の報告なのだが、何故かビアンカ殿下が話していた。
「屋敷の地下に侯爵と囚われたものがいたので、おもちが治療したらしい。健康状態がよいのが何よりじゃ。複数の怪しいものの情報を集めたので、引き続き明日も情報収集にあたるという。ワース商会に囚われたものはおらぬが、怪しい武器や薬があったからホワイトのアイテムボックスに収納したみたいだのう。武器の無効化も行う予定じゃ」
みんながふむふむと頷いていたけど、重要人物のブルーノ侯爵が生きているのは朗報だ。
これなら作戦も立てやすいと思った中、やっぱりというかエステル殿下がむくれていた。
「あの、何でショコラは私じゃなくてビアンカちゃんに報告しているの?」
「ピィ」
本日ブルーノ侯爵家には空を飛べるショコラたちが侵入したのだけど、肝心の報告を主人のエステル殿下ではなく妹のビアンカ殿下に行っていた。
もちろんエステル殿下はぷりぷりとしていたけど、全員がしょうがない結果だと思っていた。
何はともあれ、明日も引き続き潜入調査を行うので、報告は俺、リンさん、ルキアさん、ビアンカ殿下にすることになった。
「ヒヒーン!」
ドカッ!
外で馬の声とともに何かを蹴っ飛ばす音が聞こえたが、馬も今日と同じく門番役だな。
今夜もワース商会や関連するものが襲ってくる可能性は高いけど、うちの馬なら全部撃退できるはずだ。
では、報告はここまでにしよう。
「じゃあ、夕食としますか」
「「「わーい!」」」
ミケとシロに混じって、リーフとエステル殿下が元気の良い声を上げていた。
うん、もはや全員がエステル殿下のことをスルーしていた。




