第百七十五話 ならずものを撃退
なにやら宿屋の前で押し問答が繰り返されていた。
中年夫婦が、四人組のたちの悪そうな男から若い女性を庇っていますね。
この瞬間、女性陣が一気に動き出した。
というか、リーフたちもだ。
俺は、全員を止めるために急いで走り出した。
くっ、女性ものの靴は走りにくい!
「「こらー!」」
「あっ、何だ何だ?」
「何をしたいんだ、おチビちゃん?」
ミケとシロが、中年夫婦とならずものの間に割り込んだ。
手をめいいっぱい広げて、ここは通さないぞってならずものをけん制しています。
ならずものは、突然の展開に困惑しながらも二人を睨みつけていました。
すると、駆けつけた俺たちを見て急にニヤニヤとした表情を見せてきた。
「ほほう、これはこれは」
「べっぴんさんがたくさんじゃねーか」
もうニヤニヤとした下衆な笑顔を隠さないでいて、俺たちのことを品定めしているみたいだった。
しかし、このならずものは気がついていなかった。
俺たちが、物すごい殺気を放っていることを。
そして、流石に女性を奴らの前に出す訳には行かないので、俺が一歩前に出た。
「あなたたち、いったい何をしているのかしら?」
「はん、みかじめ料を払わないから代わりに娘をもらいに来ただけだよ」
如何にも軽薄そうなチャラチャラした男が、俺にニヤニヤしながら答えてきた。
もしかしたら、状況はかなり逼迫しているのではないか。
俺だけでなく、多くの人がそう悟った。
そんな余計なことを考えていたのが悪いのだろう、ならずものがとんでもないことを俺にしでかした。
「へへへ、代わりにねーちゃんが俺たちと遊んでくれればチャラにしてやるよ!」
ガッ、もみもみ。
なんと、チャラチャラした軽薄そうな男が、だらしない顔をしながら俺の胸を揉んできたのだ。
と言っても女装用のパッドなのだけど、流石に俺も怒り心頭だった。
「てめ……」
バキン!
「ゴブッ……」
「「何をする!」」
俺がぶん殴ろうかと拳を作ったところで、俺の脇から二発のパンチが飛んできた。
エステル殿下とリンさんが、怒りマックスのダブルパンチを男の顔面にぶち込んだのだ。
どうやら二人とも、俺にセクハラをして怒り爆発したみたいだった。
というか、他の面々も既に動いていた。
ガシッ。
「せい!」
ブオン、ドタン!
「ぐはっ……」
一人は、オリガさんに思いっきり地面に叩きつけられていた。
頭を打たないように引き手をする辺り、オリガさんに辛うじて理性が残っていたのだろう。
しかし、こちらは容赦なかった。
「「ふん!」」
ブオン、きーん。
「あがっ、そ、そこは……」
マリリさんとビアンカ殿下が、男の股間を思いっきり蹴っ飛ばしたのだ。
股間を蹴られた男は、口から泡を吐きながら崩れていった。
さて、残るはあと一人です。
ポキポキ、ポキポキ。
「や、やめ……」
「どうやら、ワース商会は潰さないとならないみたいですね……」
氷のように冷たい表情でこれまた冷たい言葉を吐くルキアさんに男は完全に気圧されていて、尻もちをついて後退りをしていた。
しかし、悪あがきもほんの一瞬しかできなかった。
ガシッ、ブオン、ブオン、ブオン!
「あー!」
ルキアさんは、男の足を掴んでジャイアントスイングで投げ飛ばしたのだ。
しかも、魔法障壁を展開しながら突っ込んでくる馬の目の前に。
ドドッ、ドドッ。
「「ヒヒーン!」」
ズガドーン!
「うがあーー!」
うん、馬も怒っていたのか全速力で男を跳ね飛ばした。
地面に落下した男はまだピクピクと動いているけど、流石にボロボロなので回復魔法が使えるスライムのおもちがある程度まで回復させた。
「フランソワ、こやつらを同じように縛り上げるのじゃ!」
「畏まりました」
「「手伝うよー!」」
こうして、三匹のアルケニーと馬によって、ワース商会の軒下にまたミノムシのようにぐるぐる巻きにされて繋がれたのが増えた。
あの馬鹿のことよりも、コマドリ亭や今起きていることについて話をしないとならないぞ。




