第百七十四話 コマドリ亭へ
気を取り直して、店長から話を聞くことになった。
若干店長が俺のことを見ないようにしているので、話はリンさんたちにお願いした。
「実は、明後日の夕方にブルーノ侯爵家にてパーティーが行われるとの案内状が届きました。恐らく、ランドルフ伯爵家より無理やり押し入った令嬢の婚約披露パーティーではないかと推測されます」
いきなり核心に近い話が出てきて、俺たちは目の色を変えた。
なんというか、タイミングがいいのやら悪いのやら。
「私が確認したところ、各商会に案内状が配られております。恐らく、強引にことを進めようと計画しているのではないかと」
「その可能性が高いのう。なら、逆にその場を利用しようではないか」
ビアンカ殿下は、さっそく通信用魔導具で王城に連絡を取っていた。
そして、更に驚くことを話してきました。
「実はこの建物の向かいにワース商会が陣取っていて、強引にみかじめ料を要求してきています。そのため、閉店に追い込まれるところも出てきました」
「そちらも問題ですね。できれば、屋敷と合わせて偵察を行いたいです」
リンさんも、この件も非常に重要だと思っていました。
とにかく、この二つをどうにかしないといけない。
なので、二面作戦に出ることに。
「タラちゃんたちを二手に分けて、偵察と無力化をおこなおう。できれば、ブルーノ侯爵の居場所も特定したい」
「それなら、だいたいの場所は分かります」
ルキアさんが、タラちゃんたちに色々なことを教えていた。
タラちゃんたちは、この後さっそくブルーノ侯爵家に侵入するそうだ。
そして他の面々は町に出て話を聞くのだけど、ここで問題があるという。
「その、サトーさんが美人すぎて、人が集まってきそうです……」
「「「あーあ」」」
リンさんの一言に、全員が俺の方を向いて納得した表情を見せていた。
店長も何度も頷いていたけど、じゃあどうすれば良いのでしょうか。
すると、店長があることを提案してきた。
「それならば、私の商店で働くのはどうでしょうか? 目の前がワース商会ですし、監視もできるかと」
「では、それで行きましょう。サトーさんなら、接客スキルもバッチリなはずです」
念のために馬を店頭に置いておくそうだけど、そこまでしなくてもいい気がする。
とりあえず、ものは試しってことで宿泊先のコマドリ亭に行って宿を取ってからさっそく行動することになった。
「私どもも情報を集めますので、皆さまどうぞよろしくお願いします」
こうしてこの後の行動方針が決まったので、二階から一階に移動した。
すると、そこには何故か人だかりができていました。
馬の先の路上で、何かあったみたいだ。
すると、慌てた様子の店員が店長に駆け寄ってきた。
「て、店長。またワース商会がみかじめ料を要求してきました。でも、あの馬が全員撃退しました」
あっ、そういうことね。
なら、何も問題なさそうです。
馬はワース商会の手下の服の襟首を咥えて、ズルズルとワース商会の方に引きずっていった。
すると、ビアンカ殿下がフランソワにある命令をした。
「ふむ、フランソワよ奴らを縛り上げて軒下に吊るしておくのじゃ」
「ビアンカ様、畏まりました」
「「手伝うよ!」」
ということで、フランソワだけでなくタラちゃんとポチでワース商会の手下をぐるぐる巻きにして、軒下にぶら下げていた。
うん、まるで大きなミノムシみたいだ。
しかも、買い物客や町の人の反応を見ると、あれくらいしてもなにも問題ないって感じだ。
ワース商会、どれだけ悪どく動いているのだろうか。
そして、店長が軒先に出てコマドリ亭の案内をしてくれた時にさらなる事件が起きました。
「ちょうど三軒隣がコマドリ亭……おや? またワース商会のものが向かっておりますな!」
何と、宿泊予定の宿屋にもワース商会の手下が向かっていた。
俺たちは、急いでコマドリ亭に走っていった。




