第百六十六話 何故か変装して偵察に行くことに
翌朝、食堂に行くとくまの濃くてゾンビみたいにヘロヘロなエステル殿下の姿があった。
朝イチでリンさんがエステル殿下の宿題をチェックしたが、問題なく終わっているという。
この後学園に宿題を郵送するそうで、これでエステル殿下の宿題は完了だそうです。
「ビアンカ様、任務完了しました」
「うむ。フランソワよ、よくやった」
「よくやった、じゃないよ! 遠慮ない電撃だったよ!」
他のホワイトたちもやりきったという清々しい表情をしていたけど、この分だとかなり激しい事になっていたのですね。
ちなみに、従魔たちは交代でやすんでいたので、全然元気です。
エステル殿下は徹夜明けでボロボロなので、朝食を食べたら休んでもらいましょう。
「この後は、バスクの町で情報収集か。少しでも有益な情報が集まればいいですね」
「ポチもとても張り切っていますし、ここは従魔も使って情報を集めましょう」
「うむ、妾も同意見じゃ。できる手は、使った方がよいのじゃ」
朝食を食べながら、リンさんとビアンカ殿下と打ち合わせを行います。
従魔たちは、前に偵察作戦をしているので要領は分かっています。
ルキアさんは、俺たちが不在の間ちびっ子の面倒をみてくれるそうです。
そんな中、エステル殿下がパンをもしゃもしゃと食べながら、ぼそっととんでもないことを言ってきた。
「偵察だから、サトーも女装すればー」
全員が、一斉に俺のことを見た。
というか、目がマジだった。
うん、とても怖いですよ。
「そうですね。私たちが、情報を集めているとバレるのは良くないですね」
「珍しくエステル姉様も良いことを言うのう。妾たちも変装するとしよう」
「「変装するー!」」
うん、これは流れを止められない展開になってしまった。
女性陣が、あーだこーだと言い始めている。
そして、この人がトドメを刺してきた。
「なら、私が女装のお手伝いをしましょう。完璧な女性に仕上げますよ」
サーシャさんまでもが、俺を見ながら目を輝かせていた。
もう、俺の意見が通ることはないだろう。
心のなかで号泣していた。
パタパタ、パタパタ。
「うーん、もう少し眉毛を調整しましょう。うぶ毛も剃りますね」
「「「おおー!」」」
またもや銀髪セミロングのウィッグを付け、更に女装用の下着までつけることに。
胸のある自分に、もの凄い違和感があるよ。
仕上げにサーシャさんに軽くメイクをしてもらい、またもや女装姿が完成です。
女性陣が歓声を上げているけど、鏡に写る自分の姿が美少女で本当に変な気分です。
「あーあー、本日は晴天なり、晴天なり」
「また、お兄ちゃんかお姉ちゃんになった!」
「パパがママになった」
「ママー!」
「えーっと、サトーでいいの?」
またもやちびっ子三人が俺に抱きついてきたけど、美少女声になっている自分がとても気持ち悪い。
でも、我慢をしないと。
リーフも、俺の姿を見て混乱しているぞ。
他のメンバーは、ウィッグをつけて終了です。
とても気軽で羨ましい。
では、ルキアさんにちびっ子三人をお願いして、さっそく偵察に行きましょう。
「おっ、お前らもいたのか」
「「ヒヒ……ヒヒン???」」
「グルル?」
屋敷を出ると、庭にいた馬二頭と飛竜のバハムートが俺の姿を見て大混乱していた。
匂いは俺なのに、姿が女性だから仕方ないだろう。
「あー、これは俺が女装した姿だから気にするな」
「「ヒッ???」」
「グル???」
駄目だ、女性の声で喋ったら馬もバハムートも余計に混乱していた。
女性陣と従魔が爆笑をこらえてプルプルしているのが、ちょっとムカつきます。
ルキアさんが説明してくれるそうなので、ここはお任せしましょう。
あー、本日の俺の心の中は豪雨なり……




