第百六十二話 女装してみた結果
そして屋敷に帰ったのだけど、何故かお隣のバスク子爵家の御用商人も来ていた。
単にある任務の為に俺が女装するとだけ聞いていたらしいけど、任務の為に女装するのは普通にあるらしく、変装グッズを沢山持ってきていた。
「「「ワクワク」」」
フェアとレイア、それに最近言葉が達者になってきたコタローまでやってきました。
従魔にも囲まれながら、変装タイムの始まりです。
「うーん、もう少し眉毛を細くした方がいいですね。産毛も剃りましょう」
「髭が薄くて、処理が楽で良いわ。腕毛もすね毛も殆どないわね」
「元々細いので、服も問題なさそうですね」
女性陣が、寄って集ってあーだこーだと俺の顔をイジっていた。
更に、腕毛やすね毛も剃られていきます。
というか、あなたたちは年頃の乙女なのに、目の前にパンツいっちょの男性がいても平気なんですね。
ウィッグを付けて、簡単なメイクまでしていきます。
更に、フリフリのワンピースまで着せられました。
うう、男性としての尊厳がゴリゴリと削られていきます。
そして、手鏡を持たされてあら不思議。
鏡に、銀髪セミロングの美少女が映っていました。
しかも、自分の動きに合わせて鏡の中の美少女も動きます。
なんというか、とても変な感じだ。
「くっ、なんで私よりも美人になるなんて……」
「うむ、同意見じゃ。女性として、ちと悔しいのう」
エステル殿下とビアンカ殿下だけでなく、何故か女性陣も激しく同意していました。
そして、女性陣だけでなくちびっ子三人も目が飛び出しそうなほどびっくりしていた。
「おねーちゃんだ!」
「パパがママになった」
「ママー」
そして、ちびっ子三人だけでなく従魔まで僕に抱きついてきた。
もう、何がなんだか。
でも、俺にはある懸念があった。
「でも、このままじゃ姿だけ女性で声は男性だぞ。無理矢理女性っぽい声を出す訳には行かないぞ」
全く喋る事なく本命に接触するなんて無理なので、どうやって切り抜けるかが問題だった。
でも、そこは対策済みだと、リンさんがあるものを持ってきた。
「これは、豊胸パットが入ったブラジャーです。そして、こちらは女装用のショーツです。更に、声を女性に変える腕輪もあります」
「なんで、ここまで女装道具が揃っているのだろうか……」
「逆に、男装するための道具もあります。調査の為にとだけ、言っておきます」
意外とこの世界も何でもありだと思いつつ、俺はボイスチェンジャーの効果がある腕輪を身に着けた。
さてさて、結果はどうでしょうか。
「あっ、あっ、あー。本当に女性の声になっているよ……」
俺は変わった自分の声を聞いて、思わず崩れ落ちてしまった。
とても儚げな声になっていて、女装した姿とぴったりだった。
「うん、もう女装して学園に登校しても全く違和感がないよ」
「ここまでマッチするとは思わなかったです」
「ははは……」
エステル殿下とリンさんも、思わず苦笑しかできなかった。
しかし、これで終わりではなかった。
「では、次は女性らしい所作を身に着けることじゃな。リンよ、サトーに教えるのじゃ」
「あの、ビアンカちゃん? なんで、私はスルーするの?」
エステル殿下の呟きは無視され、その後も俺への厳しい指導が続いた。
何でこうなったか、俺は心の中でさめざめと涙を流していた。




