第十六話 バルガス家の人々
俺達の事を改めて紹介する事になったので、バルガス公爵様は侍従に部屋の事の話をしていた。
「サトー殿は暫く屋敷に滞在する事になる。宿泊する部屋を用意してくれ。ビアンカ殿下は、そのまま当初予定している部屋を準備してくれ」
「畏まりました。直ぐに準備いたします。それまでの間、サトー様には応接室にご案内いたします」
「うむ、宜しく頼む。私はビアンカ殿下と執務室にいる。何かあったら呼んでくれ」
「畏まりました」
という事で、ここからは夕食まで別れる事になった。
俺達は、ご夫人と娘様と共に応接室に向かって行った。
「さあ、こちらの部屋です。どうぞソファーにお座り下さい」
「「はーい」」
ご夫人の先導で、俺達は応接室に案内された。
シロとミケは、スライム達と共にソファーに飛び込んでいた。
俺もソファーに座った所で、話をする事に。
「では、改めて自己紹介を。私はマリー・フォン・バルガスと申します」
「私はリリー・フォン・バルガスです。お父様を助けてくれて、どうも有難うね」
マリー様がバルガス公爵様のご夫人で、リリー様がバルガス公爵様の娘様。
マリー様は明るい茶色のウェーブがかったロングヘアで、スタイル抜群だ。
あと、妊娠五ヶ月で五月頃に出産予定だという。
リリー様はバルガス公爵様に似た暗めの茶色いセミロングで、しっかりとした性格の様だ。
「ご紹介頂き、誠に有難う御座います。私はサトーと申します。白い犬獣人の子がシロで、三毛の猫獣人がミケです」
「シロはシロです」
「ミケはミケだよ」
俺も、出来るだけ丁寧にマリー様とリリー様に挨拶した。
シロとミケは、相変わらず元気よく挨拶をしていた。
「サトー様もそうですが、シロちゃんとミケちゃんも強いのですね」
「確かに、シロとミケもゴブリンやオークを沢山倒していましたね」
「ええ! シロちゃんとミケちゃんってとっても強いんだ」
「「えっへん」」
シロとミケはマリー様とリリー様に褒められて胸を張っているけど、確かに今日は頑張っていたもんな。
「サトー様は随分とお若く見えますけど、お幾つになられるのですか?」
「今は十四で、今年十五になります」
「へえ、そうなんだ」
俺は異世界に来る際に若返ったから、改めて十代に戻るのは不思議な感じだ。
しかし、俺は次のシロとミケの話を聞いてびっくりした。
「シロは十歳で、今年十一歳になるんだ」
「ミケも同じだよ。今年十一歳なんだ」
「ええ! シロちゃんとミケちゃんって、今年十一歳になるんだ。私やビアンカ様と同じ歳だよ」
まさかの、シロとミケがビアンカ王女殿下とリリー様と同じ歳だったとは。
シロとミケは背も小さいし、もっと年齢が低いと思ったぞ。
とは言え、それでも小学四年から五年生の年齢か。
「それじゃあ、シロちゃんとミケちゃんも来年は学園に行くんだね」
「「「学園?」」」
おっと、ここで新しいワードがリリー様から出てきたぞ。
ここで言う学園とは、前世でいう学校と同じなのかな?
すると、ここで俺の疑問に部屋に入ってきた人が答えてくれた。
「ふむ、まさかシロとミケが妾と同い年とは。これは、中々に面白い事じゃな」
「ビアンカ王女殿下。バルガス公爵様との打ち合わせは終わったのですか?」
「うむ、国への報告も済ませた」
応接室に入ってきたのは、ビアンカ王女殿下だった。
どうやら今日の襲撃事件は、ひとまず片付いたらしい。
ビアンカ王女殿下はリリー様の隣に座って、出された紅茶を口につけ一呼吸置いてから学園の説明をしてくれた。
「学園とは、王都にある教育施設の事じゃ。四年制で、十二歳から入園が可能となる。貴族の子女は、全員入園が義務づけられておる」
成程、どちらかと言うと貴族の為の学校なのかな?
となると、貴族ではない俺達には学園には関係ないのかもしれないぞ。
「最近の学園生の半数は平民じゃ。テストをパスすれば、誰にでも門戸を開いておる」
「あれ? 貴族の為の学園ではないのですね」
「学園はあくまでも優秀な人材を集める為にあるのだ。例えスラム出身だろうが、成績優秀なら官僚の道が開けるぞ」
おお、それはとても良いシステムだ。
家や領地を継がない様な次男以降の貴族や、優秀な平民を逃さないシステムともいえよう。
ある意味、学園は実力主義の世界なのか。
「そして、サトー達は王族と公爵当主を魔物から救ったのだ。そんな人材を国が逃す訳がなかろう。恐らくサトー達へ勲章を与えて、シロとミケを貴族扱いで学園へ入園させるだろう。サトーも、学園へ編入させるのは間違いないぞ」
「うわあ、その光景が目に浮かびました。でも、俺はともかくとして、シロとミケにとっては良い体験になりそうです」
異世界に来て一日目で、俺達は学園への入園がほぼ決定的です。
まあ、俺はともかくとして、シロとミケはビアンカ王女殿下とリリー様が同学年になるので心配は少なそうだ。
「じゃあ、シロちゃんとミケちゃんと一緒に学園に通えるね」
「おお、シロとっても楽しみだよ」
「ミケもリリーちゃんと学園に行けるの楽しみ」
幸いにして、既に三人は意気投合している。
ここは、とても良い事になったと思うべきだろうな。




