第百四十八話 入園式のお手伝い
入園式当日、俺はお隣の屋敷のリンさんと共に学園に向かいます。
「在校生は、式担当以外は入園式に参加しないんですね」
「幾つかの理由があるそうですけど、警備上の理由もあるそうです。私が入園した時はエステル殿下もいましたので、かなり警備が厳重でした」
まあ、エステル殿下は王女様だもんな。
今回は侯爵家が最上位らしいけど、それでも昨今の闇組織騒ぎもあるので警備は厳重にします。
何かあっても、魔獣化した敵くらいなら俺達でも十分対処できる。
そんな事を話していたら、殆ど生徒が見当たらない学園に到着。
俺とリンさんは、教室ではなく生徒会室に向かった。
「おはようございます、フローレンスさん」
「おはようございます、サトーさん、リンさん」
既に準備万端って感じのフローレンスさんが、俺とリンさんを出迎えてくれた。
ヘレーネさんもいるけど、エステル殿下の姿が見当たらないぞ。
「フローレンスさん、エステル殿下は遅れているんですか?」
「エステル殿下は欠席になりました。元々役割も軽微なものでしたし、フローラ様が是非ともエステル殿下を指導したいとの事で」
あー、うん、そういう事ですね。
俺に限らず、リンさんも直ぐに納得していた。
「サトーさん、そろそろアルス殿下が到着されますのでお願いします。私達は体育館に移動しますので」
おっと、早速お仕事の時間だ。
俺はみんなと別れて、体育館前に移動する。
アルス殿下を出迎える為だ。
おっ、一際豪華な馬車がこちらにやってきたぞ。
間違いなく王族が乗っている馬車だ。
馬車が停まり、中から豪華な服を着たアルス殿下が降りてきた。
「アルス殿下、お忙しい中学園に来て頂き恐縮です」
「う、うーん。サトーに丁寧な挨拶をされると、調子が狂うな」
アルス殿下、そんな言い方はないですよ。
俺だって、公式な場では丁寧な口調で話しますよ。
お付の兵も、何故か笑いを堪えています……
俺は、アルス殿下を体育館内にある控室に案内します。
「サトーが来賓対応になったと聞いて、父上が入園式に出ようとしていた。勿論、母上に止められたがな」
「そこは王妃様を褒めていいと思います」
アルス殿下を控室に案内すると、いきなり愚痴を聞かされた。
そりゃ、陛下といえどもいきなり入園式にくるのは無理でしょう。
「あと、エステルの事は気にしなくていいぞ。というか、私でもフローラ母上に話しかけられない」
「学園が始まる前後から、エステル殿下は色々とやらかしていましたからね……」
エステル殿下は、罰掃除と淑女になるための教育を徹底的にされているそうです。
でも、エステル殿下の淑女への道は相当厳しそうだと、俺だけでなくアルス殿下も感じていました。
「アルス殿下、そろそろ入園式の時間になります。来賓席に移動して下さい」
「ああ、行こうとするか」
こうして、入園式前のアルス殿下との愚痴の言い合いは終わりました。
因みに、入園式は何事もなく終わりました。




