第百四十六話 生徒会室に拉致られた
昼食後の入園式の準備も順調に進み、帰るだけだと思ったらそうは問屋がおろさなかった。
「えっと、ここはどこでしょうか?」
帰ろうとしたらエステル殿下に拉致られ、とある部屋に連れて行かれた。
部屋に入る直前に、部屋のネームプレートに生徒会室って書いてあったぞ。
「生徒会長閣下、任務完了しました!」
「エステル殿下、人を拉致しておいて何を言っていますか!」
ゴチン。
「あたっ。うう、ゲンコツは良くないよ……」
エステル殿下が頭を押さえて何か言っているけど、ここはスルーして目の前にいる人に色々と聞いてみよう。
「サトーさん、すみませんが生徒会のお手伝いして欲しいのですが」
「フローレンスさん、普通に頼んでくれれば良かったんですけど。別に逃げやしないですよ」
「あの、その、えーっと、サトーさんを拉致したのはエステル殿下の独断で……」
うん、まだ涙目のエステル殿下に回復魔法をかけるのはやめておこう。
取り敢えず、生徒会長様の説明を聞こう。
「入園式に関わる事前準備はほぼ終わっています。実は、当日の手伝いをして貰いたくて」
「何をすれば良いのですか?」
「来賓の対応をして頂ければ助かります。陛下や王妃様はおみえになりませんが、アルス殿下が来賓として来校する予定です」
そのくらいなら全然大丈夫だ。
アルス殿下とは顔見知りだし、当日のスケジュールさえ押さえれば全然問題ない。
そのスケジュールも、フローレンスさんから明日渡して貰う事になった。
入園式関連はこれで終わりなのだが、生徒会室の中を見回すとちょっと気になる事が。
「フローレンスさん、女性が多いんですね」
「たまたまなんですよ。先輩が成績優秀者をスカウトするのですが、私達は仲良かったのでそのままみんなで生徒会に入ったんです」
あのぽっちゃり君辺りは、スカウト基準にすら達していないだろう。
集団で入っても、みんな成績優秀者だから全然問題ないらしい。
「じゃあ、また明日生徒会に寄るで良いですか?」
「ええ、宜しくお願いします」
フローレンスさんのオッケーも貰ったので、俺は帰り支度を始めた。
すると、連れて帰り支度をする人が。
「じゃあ、フローレンスちゃんまた明日ね」
「エステル殿下、お疲れ様です」
俺の事を拉致した張本人が、一緒にカバンをもって隣に来た。
これってもしかすると……
「エステル殿下、どこに行くつもりですか?」
「勿論、サトーの屋敷に遊びに行くよ。ちびっこ達と遊ぶのだ!」
エステル殿下は、ウキウキしながら俺と共に生徒会室を後にした。
しかし、俺はとある事が想像出来てしまった。
きっと、俺の屋敷にあの人がいるはずだ。
「ピィ……」
ショコラも誰がいるか何となく想像出来てしまったのか、溜息みたいな鳴き声をあげていた。




