第百四十五話 入園式の準備と昼食タイム
さてさて、体育館に移動するのは良いのだが念の為に、朝胸ポケットに寝ていたのに聞いてみよう。
「リーフ、起きたか?」
「うーん、今起きた……よ……」
薬草採取用のカゴの中で寝ていたリーフに声をかけると、完全に寝起きって声が聞こえてきた。
こいつ、ずっと寝ていたな。
「体育館に移動するが、リーフはここに残るか?」
「うーん、いくー」
リーフはふらふらとカゴから飛び上がって、俺の制服の胸ポケットに入った。
暫くすれば完全に起きると思い、そのまま他の人と共に体育館に向かった。
「何で貴族たるこの俺が、体育館で椅子を並べないといけないのか!」
「ダイン! 無駄口を叩いてないで手を動かせ!」
体育館に入った瞬間、ぽっちゃり君のどうでもいい無駄口と先生の叱る声が聞こえてきた。
俺達には関係ないので、スルーしておこう。
「男子は椅子を運んで下さい。細かい所は女子が直して下さい」
流石は生徒会長なだけあって、フローレンスさんが的確な指示を出していきます。
現場監督はロベルタ先生とフローレンスさんに任せて、俺達は肉体作業に徹します。
「よっと、ほいっと。リンちゃん、これで良い?」
「椅子の数は大丈夫です。次を持ってきて下さい」
「任せて!」
エステル殿下は、男子に混ざって椅子の運搬をしています。
リンさんも適材適所って分かっているので、特に何も言いません。
三十分もあれば、うちのクラスの担当分は終わりです。
隣のクラスはぽっちゃり君が完全に戦力外だけど、無視して進めていますね。
「はい、ご苦労です。では、少し早いですが昼食にしましょう。午後は体育館の外に集まって下さい」
「「「はい!」」」
ロベルタ先生がこの場をしめて俺達は終了、クラスメイトと共に食堂に向かいます。
「サトー、ご飯の時間?」
「リーフ、お前は昼食になったら目を覚ましたな」
「サトーの魔力を吸収すれば、起きていたかも」
ずーっと胸ポケットの中でぐーぐー寝ていたリーフが、食堂の良い匂いにつられて目を覚ました。
いくらまだ子どもの妖精とはいえ、寝過ぎだぞ。
「おばちゃん、A定食大盛り!」
「あいよ。また元気なのが来たね」
そしてエステル殿下は、食堂のおばちゃんからもある意味愛されていた。
王族扱いされてなくても、エステル殿下も全然気にしていなかった。
リンさん達と一緒に昼食タイムになったのだが、ここでちょっとしたトラブルが起きた。
「うわあ、最上級生の女神様がお揃いですわ」
「隣にいるのは、確かバルガス公爵領とバスク子爵領の危機を救った方だそうですわ」
「確か子爵になられた方ですよね」
俺達の周りを、下級生の女子が囲んでいたのだ。
そして、ちらちらとこちらを見ながら頬を赤らめていた。
うん、この視線は落ち着かないぞ。
「別にやましい事はしていないんだから、堂々としていればいいのよ」
「そうですわ。サトーさんは慣れないかもしれませんが、よくある事なので」
「ぱくぱく」
エステル殿下とリンさんにも言われたので、俺は周囲からの視線を気にしない事にした。
でないと、このままではリーフに昼食を食べられてしまう。
俺は目の前にあるパスタを口に頬張った。
うん、十分に美味いぞ。
「サトーの料理も美味しいんだけどなあ」
「リーフよ、それは俺に料理を作れって言っているのと一緒だぞ」
「「「くすくす」」」
うう、ここでも俺はツッコミ役だった。
エステル殿下やリンさんだけでなく、周囲にいた下級生の女子もくすくすと笑っていた。




