第百三十三話 再度の引っ越し作業
そして、数日後。
僕達はオーカス男爵邸の前にやってきました。
軍による捜索も終わったので、僕達に引き渡されます。
因みに名義変更手続きは王妃様パワーでゴリゴリ進めているそうで、オーカス子爵邸の建物の確認不足もあってか陛下も何も言えないそうです。
「それじゃあ、いきますよ」
ピカー。
「おお、これがご主人様の魔法の力ですか」
「物凄い魔法です。流石はご主人様です」
久々の全力生活魔法で、男爵邸を丸ごと綺麗にします。
シロやミケ達は俺の生活魔法を見ているから全然平気だけど、初めて俺の全力生活魔法を見た侍従は度肝を抜かれていました。
「ふう、こんなものかな?」
「うわあ、新築みたいにピカピカしているよ」
「相変わらず物凄い魔法じゃな」
屋敷の引っ越しリベンジという事でエステル殿下とビアンカ殿下も来たのですが、流石にピカピカになった建物に呆れていました。
ともかくこれで屋敷の準備完了、引っ越し作業に入ります。
「ぶどうちゃん。これも入れてだって」
「こっちもだって」
先ずはアイテムボックスが使える俺とぶどうで、オーカス子爵邸からオーカス男爵邸に持っていく荷物を次々に収納します。
食堂や侍従の部屋などの直ぐに使う荷物はぶどうが担当して、使うかどうか分からない物は俺が片っ端から収納していきます。
キングサイズベッドとか絶対に使わないけど、念の為にアイテムボックスに入れておこう。
「じゃあ、食器を出しますね」
「はい、宜しくお願いします」
オーカス男爵邸に戻ったら、アイテムボックスから必要な物を取り出します。
何処にしまうかは、侍従にお任せです。
「ここには壺を置いた方が良いじゃろう」
「じゃあ、アイテムボックスから出します」
美術品についてはさっぱり分からないので、ビアンカ殿下に言われるまま置いていきます。
因みにオーカス子爵邸の庭には趣味の悪い像が置いてありましたが、流石に持って来ませんでした。
庭師が張り切って花のあふれる庭にするそうです。
俺としても、奇妙な像が立ち並ぶ庭より全然良いと思います。
「流石にオーカス子爵邸の主人の部屋よりも狭いとはいえ、それでも大きいなあ」
「「わーい」」
「あうー」
自分の部屋は、アイテムボックスから荷物を取り出してクローゼットに服をしまって終了です。
うん、やっぱり広い部屋だなあ。
コタローと追いかけっこをしているフェアとレイアを見れば、その広さが良くわかるよ。
因みに、シロとミケの部屋も用意したけど、夜は俺と一緒に寝ると宣言しています。
学園に通う様になれば変わるかなと、ちょっと期待するしかないのかな。
「ふう、終わったよ」
「あの、エステル殿下。何をしていたのですか?」
「勿論、私の部屋の荷ほどきだよ。王城だと、お母さんがうるさいからね」
「流石に未婚の令嬢が別の屋敷に住むのはマズイかと」
「そんなの気にしなーい」
そして、とある部屋から仕事をやりきったという表情のエステル殿下が出てきた。
エステル殿下、ここに住み着くつもりですか?
あなたには、この屋敷とは比べ物にならないとっても大きなお家がありますよ。
「まあ、たまに泊まる程度じゃと思えば良い。妾は客室に泊まる様にするぞ」
「ですよね。そう願います」
嬉々としているエステル殿下を、俺とビアンカ殿下は少し呆れた目で見ていました。




