第百三十一話 使い勝手の悪い屋敷
何とか自己紹介も終わったので、屋敷内を案内してもらいます。
でも、その前に少しやる事があります。
「お兄ちゃん、この人具合悪そうだよ」
「この人もそうだよ」
「おもちに治療して貰いながら、ゆっくりと休んで貰った方が良さそうだな」
「す、すみません」
シロとミケの言う通り数人の侍従の体調が悪そうなので、おもちに治療して貰いながら侍従の部屋で休んで貰う事にした。
案内の侍従を残して、他の侍従は持ち場に移動します。
「ご主人様、お気遣い頂きありがとうございます。実は、侍従の何名かは以前の職場で酷い扱いを受けた者がおりまして」
「それは酷いですね。心身ともに良くなる様にしないといけないですね。幸いにして、治療の手は沢山ありますから」
「ありがとうございます」
オーカス子爵とオーカス男爵なら、侍従を虐待するのは当たり前と考えていたのかもしれないぞ。
体調が悪い侍従は、しっかりと休んで貰わないと。
そんな事を思いながら、先ずは一階の案内です。
「こちらが食堂になります。奥に厨房があります」
「テーブルはかなり大きいですね」
「でも食器の数が足りませんね」
俺達は食堂を色々と見回すけど、リンさんの言う通り食器の数が足らないなあ。
「続いては、書斎になります」
「本の数が少ないですね。コタロー向けに絵本を買ってあげないと」
「そもそも書斎の広さが足りんのう。もう少し拡張しても良いじゃろう」
書斎を見ただけで、オーカス子爵が勉強をしないのが良く分かった。
書斎も改修対象に入れておこう。
「続いては浴室になります」
「これは、ちょっとまずいなあ。浴室内の壁にヒビが入っているぞ」
「そもそも狭いね。リンちゃんの領地の屋敷くらい大きなお風呂があれば良いね」
浴室は全面改修が必要だな。
この際だから、エステル殿下の言う通り大きな浴室にしても良さそうだ。
「一階に客室がございます。後は奥に侍従の部屋もあります」
「客室はともかくとして、侍従の部屋は良くしないと駄目だな」
「狭いし、これじゃあ可哀想だよ」
「もっと良い部屋にしないと」
シロとミケの言う通り、侍従の部屋は狭すぎる。
客室を一つ潰して、侍従の部屋の拡張に充てよう。
「二階が皆様の部屋になります」
「無駄に広いね。自分達だけ贅沢していたのか」
「数部屋は客室に回せよう。こんな豪華な部屋なんぞ、王城でも中々ないぞ」
「凄いね。私の部屋よりも広いよ」
主の部屋も他の部屋も、王城のエステル殿下の部屋よりも大きいぞ。
これも、部屋の改修をして大きさを小さくして部屋数を増やそう。
屋敷を一回りしたので、俺達は応接室に集まります。
「何というか、使い勝手が悪い屋敷ですね」
「うむ、これでは良くないぞ。パーティールームもないのじゃ」
ビアンカ殿下も呆れる程の使い勝手の悪さだった。
この分だと、隣のオーカス男爵邸も使い勝手が悪そうだぞ。
「私が言うのも何ですが、バスク子爵邸はとても使いやすいかと」
「リンちゃんの屋敷は使いやすいよね」
「そうですね。お隣のバスク子爵邸を参考にして、この屋敷の補修と改修を計画しましょう」
お隣の屋敷を参考にするという方針が決まったので、早速動く事になりました。




