第百二十九話 リリーナ様にご挨拶
謁見が終わったので、俺達はリンさん達と共に屋敷に戻ります。
これからバスク子爵邸からお隣の屋敷への引っ越し作業を行います。
「で、何でエステル殿下とビアンカ殿下がついて来ているのですか?」
「どんな屋敷なのか気になったからだよ」
「これから何回も行く事になるじゃろうからな」
屋敷に戻る馬車には、エステル殿下とビアンカ殿下が当たり前の様に乗っていた。
この二人は王族なのに、屋敷に入り浸りそうだな。
そんなこんなで、バスク子爵邸に到着です。
「おかえりー」
「「「「ただいまー!」」」」
早速お留守番していたリーフの出迎えを、シロ達が受け止めています。
タラちゃんとホワイトとスライム軍団も、こちらにやってきました。
シロ達は、応接室でリーフ達とコタローの面倒を見てもらおう。
その間に、俺は客室の片付けをします。
「こんなものかな?」
俺は、借りていた客室に置いてある荷物を纒めてきます。
アイテムボックスにしまったら、客室を生活魔法で綺麗にしておきます。
使ったら綺麗にしないと。
「お兄ちゃん、終わった?」
「終わったよ」
「じゃあ、新しいお家にいこーよー」
俺が客室から出てきた所を見計らったのか、シロとミケが俺に抱きついてきた。
とはいえ、まだやる事はあります。
「リンさん、あの馬はうちで預かった方が良いですよね?」
「できればそうして頂けたらと。とても賢いので苦労はないのですが、普通の人では扱えませんので」
先ずは魔法を覚えた馬の事を、リンさんに確認します。
確かに普通の人じゃあ、あの馬は制御できないよなあ。
そして、俺はリリーナ様に向き直ります。
「リリーナ様、宿泊代をお支払します」
「いらないわ。あなたはバスク子爵家の客として招いたのだからね」
「そうですか。申し訳ないです」
「ふふ、サトーは本当に良い人ね。もし、どうしても払いたいなら、リンをお嫁に貰ってくれないかしら?」
「ええ! ちょっと、お義姉様?」
リリーナ様の発言に、リンさんは顔を真っ赤にしてあたふたしています。
というか、いきなり何を言うのですか。
「別に冗談ではないのよ。サトーは今大注目の貴族よ。爵位差も問題ないし、リンもサトーの事は嫌ってはないですから。まあ、この話はおいおいにしておきましょうね」
「全くもう……」
リンさんは顔を真っ赤にしながらリリーナ様に文句を言っているけど、リリーナ様は至って貴族的な考え方だ。
そう考えると、今後は俺に接触しようとする貴族が増えてきそうだぞ。
色々と気をつけないといけないなあ。
「この際じゃから、エステルお姉様もサトーに輿入れしてはどうじゃ?」
「おお、良いね。サトーとリンちゃんにずっと面倒を見てもらえるよ」
「あの、エステルお姉様? そういう事で言ったのではないぞ」
「???」
うん。
あっちのダメダメ王女様の事は置いておこう。




