第百二十四話 謁見式当日の朝
いよいよ謁見当日になりました。
俺達は王城で謁見用の服に着替えるので、今は普段着で良いことになっています。
「サトーさん、お待たせしました」
「「「「お姉ちゃん、とっても綺麗だね!」」」」
「あ、有難うございます」
シロ達に褒められて少し顔を赤くしたリンさんと、リンさんの後ろからやってきたオリガさんとマリリさんも今日は謁見用のドレスを着ています。
リンさんはこの前も着ていたドレスで、今日は気合を入れて髪をセットしています。
オリガさんとマリリさんは、髪の毛の色に合わせたドレスを着ています。
何だか、オリガさんとマリリさんもいつもと印象が違って見えるぞ。
「リン、褒めてくれているのだから、恥ずかしがらずに堂々としなさい」
俺達と一緒に王城に行くリリーナ様も、やはり謁見用のドレスに着替えていました。
フローラ様の親戚だけあって、リリーナ様は堂々としています。
「あうあう」
「コタローは、王城で預かってくれる人がいるんだってよ」
「あう?」
「そうね、誰だろうね」
謁見の間、コタローは王城の人が預かってくれるという。
誰が預かってくれるか教えて貰っていないのか、ちょっとだけ不安です。
という事で、馬車に乗って王城に向かいます。
「「もぐもぐもぐもぐ」」
「陛下、エステル殿下、何でここでケーキを食べているんですか……」
服飾用の部屋に案内されて出来上がった謁見用の服に着替えが完了です。
うーん、何だか豪華な刺繍がされていて、目がチカチカするぞ。
そして着替え終わった俺達は、侍従に応接室に案内された。
応接室にはリンさん達の他にも王族が勢揃いしていたけど、何故か陛下とエステル殿下はもぐもぐとケーキを食べていました。
因みに他の方は、呆れた目で陛下とエステル殿下を見ていました。
「そりゃ、これからの為に英気を養う為だ」
「そうだよ。多分謁見は揉めるよ」
「なら、二人とも朝食をしっかりと食べなさいよ」
「朝食は朝食でしっかりと食べたぞ」
「そうそう、食べたよ」
「あなた達ねぇ……」
陛下とエステル殿下の言い訳に、王妃様も呆れています。
しかし、この後の謁見で揉める要素はあるのかな?
「どちらかというと、サトーよりもシロとミケの事で揉めるじゃろう。なにせ二人は獣人じゃ。勲章ならともかくとして、爵位までとなると騒ぐ馬鹿がいるのじゃ」
「ビアンカ殿下、それって例の貴族主義の勢力ですか?」
「貴族主義の中でも人族主義というのがある。要は人間は選ばれた存在だと思っている馬鹿がいるのじゃ」
うわあ、ビアンカ殿下の説明は聞きたくなかったなあ。
自分は特別な存在だと思っているから、こちらの話は通じない可能性が高いぞ。
「とはいえ、人族主義の連中は、殆どがバスク子爵領で発覚したリストに載っておる。奴らはプライドは高いから、下手に動けば自分の罪を突っつかれるじゃろうな」
「それって、ほぼ闇組織と関わりがある勢力じゃないですか。確かに変な事を言ったら、自滅しそうだろうな」
ちょっと不安な気持ちになったけど、こちらも手札があるのは助かる。
という事で、いよいよ謁見に向かう事になります。
因みに、陛下とエステル殿下はケーキのお代わりまで平らげていました。




