第十二話 高貴な方と新たな仲間
騎士がゴブリンの燃えカスの詰まった穴を埋めている時、別の騎士から声がかかった。
「旅の方、お館様が討伐と後処理のお礼をしたいと申しております」
「わざわざすみません。直ぐにお会いします」
シロとミケはスライムと遊んでいるから、後で挨拶させよう。
という事で、俺は騎士と共に豪華な馬車の側に移動した。
「お館様、旅の方が来られました」
「うむ。直ぐに行こう」
豪華な馬車の扉が開き、馬車の中からシンプルだけど品の良い服を着たジェントルマンが降りてきた。
黒に近い茶髪をしっかりとセットしていて、如何にも貴族の当主といった感じだ。
そして、もう一人の少女も馬車から降りてきた。
シロとミケよりも背が高く、旅用のドレスを着ている。
金髪のウェーブのかかったセミロングヘアは丁寧に手入れをされていて、如何にも高貴な出だと一目見てわかる。
俺は二人を見て、反射的に膝を着いていた。
「旅の者、顔を上げてくれ。私はこのバルガス公爵領を預かっているナッシュだ。そして、私の横にいるのはこの国の王女、ビアンカ殿下になります」
「ビアンカじゃ。旅の者、此度は大義であった。其方は名を何と申す?」
「サトーと申します。スライムと遊んでいる白毛の犬獣人がシロで、三毛の猫獣人がミケと申します」
おお、本物の貴族当主と国のお姫様ではないか。
二人から高貴なオーラが出ていて当たり前だ。
だからこそ、これだけの豪華な馬車に乗れる人物なのだろう。
「サトー殿か、改めて礼を申す。しかし、道中見た時はサトー殿と戯れている二人の少女にしか見えなかったのが、まさか強い上に有能な魔法使いだとは」
「うむ。サトーも中々の強さであり、治癒魔法使いでもある」
「恐れ入ります」
おお、やっぱり異世界に来た直後にシロとミケに抱きつかれていた所を見ていたのは、このお二人だったのか。
しかし、二人はとても良い人で助かった。
横柄な貴族がいると漫画で読んだ事あるし、歴史の授業でも実際にいたらしいな。
そんな事を思っていたら、シロとミケがこちらにやってきた。
おや?
二人は、カラフルな小さなスライムを抱えているぞ。
大きさは野球の球程だ。
他のスライムよりも随分と小さいぞ。
「ちょうど良い。シロ、ミケ、バルガス公爵様とビアンカ王女殿下にご挨拶して」
「おお、挨拶するよ。シロはシロです!」
「ミケはミケです。宜しくね」
「うむ、元気よく挨拶できたな」
「そうじゃのう。めんこいのう」
シロとミケが元気よく挨拶したのを見て、バルガス公爵様とビアンカ王女殿下は微笑ましく二人を見ていた。
本当に、バルガス公爵様とビアンカ王女殿下がとても良い人で良かったよ。
ひょっとしたら、挨拶がなってないと切り掛かる貴族もいるだろうな。
「それで、このスライムはどうしたの?」
「他のスライムは森に帰ったんだけど、ちっちゃなスライムは残ったんだ」
「ミケ達と一緒にいたいみたいだよ」
確かにシロとミケの腕の中にいるカラフルな小さなスライムは、俺の事をジーッと見ていた。
とあるゲームで見た、仲間になりたそうにこちらを見ている状態だ。
「おお、これは珍しい。カラースライムの幼生体ですな」
「カラースライムは魔法が使えるが、レアな種類もおる様じゃな。大事に育てるが良い」
「「はーい」」
あ、俺ではなくバルガス公爵様とビアンカ王女殿下が、シロとミケにカラースライムを仲間にする許可を出していた。
シロとミケとカラースライムは、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねていた。
うん、これで俺がダメとは言えない雰囲気になってしまった。
まあ、スライムだし餌は何でも良い様なので、連れて行ってもいいか。




