第百十四話 学園見学 その三
「くそ、何が救国の戦士だ。ただの冒険者じゃないか!」
「「そうだそうだ!」」
僕達の所に下級生の女子生徒が集まってきて騒いでいると、突然食堂に複数の男子が入ってきた。
特にボスっぽい男子生徒が、かなり不満そうな顔で俺の事を見ていた。
うーん、ぽっちゃりを超えた肥満体質の男子生徒だな。
どうもぽっちゃり君は、俺に対して文句を言っている様だ。
「ダイン、自分は何もしていないのに大きな功績を上げたサトーに嫉妬か? とても見苦しいぞ」
「エステル、貴様!」
そしてエステル殿下が物凄い不満顔で例のぽっちゃり君に指摘をすると、ぽっちゃり君はなお一層激怒している。
僕達の元に集まっている下級生も、嫌な顔をしてぽっちゃり君を見ていた。
どうも、このぽっちゃり君は学園の中でもとても嫌われ者の様だ。
「貴様、名は何だ!」
「サトーでございます、ダイン様」
「なっ! 貴様、何で俺の名前を知っている!」
俺はあえて丁寧な返答をしたのだけど、ぽっちゃり君は俺が自分の名前を言った方にびっくりしていた。
さっきエステル殿下がぽっちゃり君の名前を大声で言っていたのだが、どうも
このぽっちゃり君は頭も良くなさそうだ。
「この騒ぎは一体なんですか!」
「や、やべえ」
「おい、行くぞ」
「くそ、覚えていろ」
一触即発になりそうな所で、エステル殿下のレポートを受け取った職員が食堂に入ってきた。
職員を見たぽっちゃり君達は、蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げていった。
「エステル殿下、あの人は誰ですか? エステル殿下の事を呼び捨てにもしていましたが」
「ランドルフ伯爵家の嫡男ダインだよ。両親は素晴らしい人と言われるけど、アイツは本当にアホなんだよ。常日頃、世界の王になると言っているよ」
あのぽっちゃり君は、エステル殿下がアホ呼ばわりするある意味大物か。
ダインとその取り巻きは、俺の中で要注意人物に指定だな。
「貴族にはプライドの塊って人がいるのよ。サトーさんが大きな功績をあげても、その功績を妨害する者もいます」
「忠告ありがとうございます」
「残念な事に、生徒だけでなく教職員にもサトーさんの功績に嫉妬している人がいるのよ。十分に気をつけてね」
注意してくれた職員が、あまりありがたくない事も教えてくれた。
生徒はともかくとして、職員にもアホな人がいるのか。
本当に気をつけないといけないな。
教室は新年度に向けて色々と準備しているとの事なので、今日は入れません。
という事で、学園の見学は終わりとして、再び馬車に乗ってバスク子爵邸に戻ります。
うーん、あのぽっちゃり君とはまた出会いそうな気がするなあ。




