第十一話 皆で魔物の後始末
色々と確認したい事があるのだが、先ずは目の前の惨状をどうにかしよう。
百体を超えるゴブリンの死骸に、オークの死骸が転がっているのだからだ。
すると、森から複数のスライムが現れたのだ。
スライムはゴブリンやオークの死骸に集まってきた。
「あれ? 沢山のスライムが森からやってきたよ」
「何だか、ゴブリンとかの血を吸っているみたいだよ」
「スライムは森の掃除屋ですから。これだけの死骸があれば、沢山現れても不思議ではないですな」
「ですよね」
シロとミケの質問に騎士が答えていた。
まあ、沢山の死骸があるこの光景を見れば、沢山のスライムが集まっても納得できるよね。
とは言え、このままスライム任せにしてはいけない。
キチンと死骸を処理しないと、オオカミとかがやってくる恐れがあるそうだ。
「俺達もゴブリンとオークを倒したので、後始末を手伝います。どうすれば良いですか?」
「おお、それは助かります。オークは食料になるので、解体などを行います。ゴブリンは討伐証である右の耳と、胸にある魔石を取り出してから燃やしてしまいます」
成程、魔物によって処理の仕方が違うんだ。
それに、漫画とかでもオーク肉は美味しいって書いてあったな。
そんな事を思っていたら、シロとミケが俺の袖をちょんちょんと引っ張っていた。
「お兄ちゃん、豚さんがいっぱいだからお兄ちゃんのアイテムボックスに入れたら?」
「ミケのマジックバッグには、豚さん入らないよ」
成程、シロとミケの意見はもっともだ。
俺のアイテムボックスなら、多分オークも全く問題なく収納できるだろう。
「なんと、旅の者はアイテムボックスをお持ちか。それなら、是非ともオークを収納して頂きたい」
「分かりました。では、一旦俺のアイテムボックスにオークを収納しますね」
騎士からも俺のアイテムボックスにオークを入れてくれと言われたので、俺はせっせとオークをアイテムボックスに収納した。
これだけの数のオークだから、肉も沢山取れるだろうな。
「お兄ちゃん、シロは何をしたらいい?」
「ミケもどうするの?」
「じゃあ、二人は騎士と一緒にゴブリンを埋める穴を掘ってもらおうかな」
「シロにお任せだよ!」
「ミケが大きな穴を掘ってあげるね」
オークをアイテムボックスに収納しているとシロとミケが近づいてきたので、アイテムボックスから出したシャベルを渡して穴掘りをお願いした。
流石に、二人にゴブリンの討伐証と魔石を取るのを任せるのはできないぞ。
シャベルを受け取ったシロとミケは、嬉々として穴掘りをしている騎士の所へ走っていった。
さて、俺はゴブリンから討伐証と魔石を取る作業を続ける。
異世界に来たからなのか、血や内臓を見ても何故か平気だ。
これが元の世界だったら、絶対にゴブリンの解体とかできないだろうな。
討伐証と魔石は騎士に預けて、解体したゴブリンは騎士とシロとミケが掘った穴に入れていく。
「お兄ちゃん、すごい数だね」
「穴から出ちゃっているよ」
結構深い穴を掘ったはずなのに、大量のゴブリンで穴からはみ出ていた。
因みにスライムはお腹いっぱいなのか、シロとミケの側に集まっていてゴブリンには近づいていなかった。
さて、ゴブリンの解体は終わったけど、この大量のゴブリンを焼却するのは一苦労だぞ。
すると、立候補した人が一人。
「お兄ちゃん、ミケがゴブリンを燃やしてもいい?」
「えーっと、騎士様、この子に火魔法を使わせても良いですか? どうせ大した魔法は使えないと思いますが」
「これだけゴブリンがいると、私どもも処分の準備が必要なので良いですよ」
「ありがとうございます」
確かにこれだけのゴブリンの死骸だと、処分するのも準備が必要だよな。
という事で、魔法の練習を兼ねてミケが魔法を使ってみる事に。
「それじゃあ、いくよ!」
ミケはゴブリンの死骸の山に向けて手を向けていた。
どうせ小さな火の玉くらいだろうと思っていた。
「えーい!」
ズドーン!
「わあ、凄い凄い!」
シロとスライムがぴょんぴょんと跳ねて喜んでいるけど、俺や騎士は度肝を抜かれていた。
ミケが放った火魔法は、高さ十メートル程の火柱を上げていたのだ。
火柱が消えた後は、熱い熱気と骨になったゴブリンが残っていた。
「じゃあ火事にならない様に、水をかけるね」
ばしゃーん。
今度はシロが巨大な水玉を作って、骨だけになったゴブリンの入った穴に放った。
今度はミケとスライムがぴょんぴょんと跳ねて喜んでいた。
勿論、俺と騎士は魔法の衝撃に呆然としている。
「すみません、完全にやり過ぎました」
「いえいえ、処分の手間が省けたと思えばいいでしょう。しかし、凄い魔法使いですな」
うん、騎士様がとても良い人で良かった。
シロとミケには、魔法の制御をもっと勉強してもらわないといけないぞ。
完全に過剰な魔法だったな。




