第百三話 謎の黒っぽい石
「「「「わあ、大きい!」」」」
馬車は城門を抜け、目の前に大きなお城が見えてきました。
王城の防衛の為に、三重の城壁が築かれているそうです。
他の城門では厳重なセキュリティチェックが行われているが、俺達の乗った豪華な馬車はライラック様が乗っているのもあってか簡易チェックでパスされます。
そして馬車は、王城の横に隣接している軍の施設に到着します。
「さあ、到着よ。皆降りましょうね」
「「「「はーい」」」」
ライラック様に促されて、俺達は馬車から降りた。
流石に息子がいるだけあってライラック様はシロ達の扱いがとても上手で、フェアとレイアもライラック様に懐いた様だ。
因みにバスケットの中に入っているリーフや従魔達は、未だにぐーぐーと眠っています。
「ライラック様、お待ちしておりました」
「ええ、案内をお願いね」
馬車を降りると、直ぐに兵が出迎えてくれた。
俺達は、兵と共に歩くライラック様の後をキョロキョロとしながらついて行きます。
流石は軍の施設とあって、多くの軍人が忙しそうに働いています。
そして俺達は、闘技場の様な訓練所に案内された。
すると、二人の人物が兵の護衛を受けながら俺達の事を待っていた。
「フローラ様、お待たせしてもうしわけありません」
「良いのよ、サトーは子どもの世話で大変なのですよ」
待っていた人物の一人は、昨日もあったフローラ様だった。
今日のフローラ様は、騎士服をバッチリと着ていた。
フローラ様の隣にいるのは厳つい強面の大男で、如何にも歴戦の戦士って感じだ。
「サトーは初めてだな。軍務卿をしているウェリン公爵だ。この度は色々と世話になったな」
「「「「おおー」」」」
なるほど、重要な事件だから軍のトップが出てきたのか。
シロ達も軍務卿の風貌にびっくりしているけど、怪しいとは思ってない様だ。
「おい、他の連中も呼んでこい」
「はい」
「サトーも、他の連中が来たら例の物を出してくれ」
「分かりました」
軍務卿は兵に命じて、他の幹部を呼ぶように言っていた。
大事件の物的証拠だから、多数の目で見た方が良いだろう。
十分後、兵が十人の幹部を連れて準備が整ったという。
「では、出しますね」
「「「うお、これが例の闇組織の幹部の成れの果てか」」」
俺がブレッドの成れの果てを出すと、軍の幹部達が一斉にどよめいた。
フローラ様とライラック様、それに軍務卿もブレッドの成れの果てを見て顔を歪ませていた。
すると、ライラック様がブレッドの成れの果てを見て何か気がついた様だ。
「誰か、この遺体の胸の辺りを切り裂いて下さい。もしかしたら、石の様な物がある可能性があります」
「は、はい。直ぐに行います」
ライラック様の指示に従って、兵がブレッドの胸あたりを切り開いた。
すると、黒っぽい五センチ位の石が出てきた。
ライラック様はハンカチを出して、黒っぽい石をハンカチで掴んだ。
「やはり何かありましたか。胸の所に魔力が集まっている感覚がしましたので、何かあるかと思いました」
「流石はライラック様ですね。この様な物は人には無い物です。併せて確認させましょう」
軍務卿は兵に指示を出して、ライラック様が見つけた黒っぽい石を鑑定にまわした。
しかし、人の体内に謎の石ができるとは。
あのドーピング剤には、何か体内に作用する物があるのだろうか。
ともあれ、謎の黒っぽい石の鑑定結果が待たれる事になった。




