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3話:魔王

 フェイドは少し離れた場所で一人と一匹の戦いを観戦する。

 他にもう一点あり、それはあの少女が何者なのかということだった。

 このような辺境の、しかもドラゴンが多く棲み着くこの山脈に単身で来れる者は世界でも極僅かしか存在しない。

 勇者ですら、ここのドラゴンを複数相手に戦うのは困難と言えた。

 少女は無数に放たれた火球を躱し、ドラゴンへと接近して近距離で魔法を放った。

 周囲が爆炎で彩られる。

 バサッと音がしてドラゴンが飛び立ったことで周囲の砂塵が晴れる。飛び立ったドラゴンの体には傷一つなく、攻撃した少女を睨みつけた。


「威力がある一撃だったのにも関わらず無傷となると、それなりの魔法耐性があるということになるな」


 加えてあのような高威力の魔法を使える者は限られてくる。


「一体何者だ……?」


 両者はドラゴンの背に乗って気配を隠すフェイドの存在には気付いておらず、戦闘を繰り広げていた。

 フェイドが気になったのはドラゴンよりもそれと戦う少女の方であった。

 見た目は人間のようだが、雰囲気が人間のそれと異なっていた。

 少女は地形が変わるようなドラゴンの猛攻を凌ぎ反撃へと出るも、容易くあしらわれていた。

 攻撃はどれも通用せず、振るわれた鉤爪が少女を切り裂こうと迫る。

 空中にいる少女に避ける手段などないと思われたが、足元に火球を生み出して爆発させることで回避した。

 振るわれた鉤爪は地面を深く切り裂き、食らっていればただでは済まないことを証明していた。

 地面へと着地した少女は睥睨するドラゴンを見つめつつ問いかける。


「黒龍よ、どうして協力してくれないのだ! お前とて長年人間に苦しめられてきただろう! 住処を奪われ、こうして誰も近寄らない山脈へと棲み着いたではないか!」


 麓は自然豊かだが、高い山となれば背の低い木々や草しか生えない。

 それも標高が高くなるにつれてなくなっていく。

 フェイドがいるこの山脈の名前は『ガラ・オクトス山脈』と呼ばれ、平均標高は四千メートルある。その中で最も高い山の標高は一万メートルもある。

 その最も高い山の麓で戦闘が繰り広げられていた。

 少女の問いにドラゴンが答えたが、フェイドは喋るとは思っていなかったので内心で驚いていた。

 それもそのはず。広まってはいないが、高位のドラゴンは意思疎通を取ることが可能であった。

 そして少女が相手している漆黒のドラゴンは、『黒龍』と呼ばれる最上位に君臨し、厄災とも恐れられる最強の一角であった。

 その最強を前に、数多の勇者や英雄が散っていった。

 人族には傷跡としてその歴史は残っており、黒龍によって滅ぼされた国はいくつか存在する。


『ここへ棲み着いたのは偶然であり、人間に追いやられたというのは下位の弱いドラゴンだけだ。我ら古の時代から生きるドラゴンは、時の流れに身を任せているのみに過ぎない。ここも慣れれば住み心地は良い。邪魔者はいないのだから』

「力を貸してほしい、それだけなのだ」

『それでもだ。小娘。本当に死ぬことになるが、いいのか?』

「だとしても。私達を助けるために力を貸してほしい」


 必死の懇願であった。


『我は協力などしない。即刻立ち去るがいい』


 少女は立ち上がり両手に炎を灯した。

 やる気は満々。

 一人と一匹は再び激突する。

 ドラゴンが振るう鉤爪が大地を切り裂き、ブレスが辺りを焼き尽くす。

 負けずと少女も魔法で応戦する。

 次第に少女はボロボロになっていき、この長いようで短い戦いにも終わりが見え始めた。

 傷だらけになりながらも、少女はヨロヨロとゆっくりだが立ち上がる。

 フェイドは少女の魔力が残りわずかなことに気付いていた。


『これで終わりにしよう。哀れな魔王(・・)よ』


 ドラゴンの口から『魔王』という言葉が聞こえ、フェイドの思考が一瞬だが停止した。

 今、ドラゴンは少女のことを『魔王』と呼んだのだ。

 魔王とは人類の敵と呼ばれ、戦ってきた邪悪なる存在とされてきた。

 だが現実はどうだろうか。

 傷ついてもなお、必死で仲間のために戦っているこの姿を見て、勇者の方がよほど悪ではないか。

 ドラゴンからヒュゴッという空気を吸い込む音が聞こえ、胸部が紅く染まる。

 フェイドですら今まで感じたことのないほどの尋常ではない魔力量。

 そして、少女に向けて放たれた。

 空が白く染まり、滅びのブレスが少女へと迫る。

 迫るブレスを見て少女は防ぐ手段がないと悟り地面に膝を突いた。

そして静かに目を瞑って己を待つ配下へと心の中で謝罪する。


(すまない。どうやらこれまでのようだ。私はただ、同胞を、魔族を救える方法を探し求めていただけなのだ。このままでは魔族は勇者によって蹂躙されるだけ。誰か、私の代わりに魔族を救ってくれないだろうか……)


 諦めたその時、何かが降り立った音がして男の声が聞こえた。


「飲み込め。――深淵の渦(アビスフィア)


 向けられた手のひらから現れた漆黒の渦が、迫る破壊の権化ともいえるブレスを飲み込んだ。

 数十秒間続くブレスは止み、黒龍から驚きの声が聞こえた。


『我がブレスを防いだというのか⁉』


 無傷で少女を庇うように立つ黒衣に身を包む男に黒龍は尋ねた。


『我がブレスを防ぐとは。一体何者だ……?』

「俺は――復讐者だ」


最後までお読みいただいてありがとうございます!


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