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2話:暇な移動

 ◇ ◇ ◇


 フェイドは現在、アゼッタと千の兵と共に東部へと向かっていた。

 馬車の荷台に座るアゼッタが地図を片手に眉間にシワを寄せて難しい表情をしており、対面に座っているフェイドは一瞥する。

 しばらく沈黙が経過してアゼッタが口を開いた。


「何を考えているのですか?」


 フェイドは答えない。


「答えなさい!」


 詰め寄ったアゼッタがフェイドの胸倉を掴み問い質す。


「何を答えろと? 質問の意図が分からないな」


 殴りたい衝動に駆られるアゼッタだが、自分ではフェイドに勝てないどころか、傷すら与えられないことを理解している。

 内包する魔力量ですら自身を遥かに上回り、魔王であるエリシアすらも超える化け物なのだから。

 魔王軍の総戦力を挙げてようやく勝てるかどうかの存在であり、人間である連合軍と勇者を相手した方が遥かにマシと言えた。


「いいから答えてください。どうして千程度の戦力で十分と言えたのですか? 魔王様は理解し納得しているようですが私は納得していません」

「別に納得しなくてもいい」

「なっ⁉」


 フェイドの予想外の発言に、思わず目を見開いた。

 そのようなことを言うとは思っていなかったのだ。だが説明を聞かなければ部下を死地に追いやるだけになってしまい、結果無駄死にとなってしまう。

 そのようなことはあってはならない。


「私は部下を無駄死になどさせたくないのです」


 部下を持つ者なら、理解できる言葉だったのだが、残念ながらフェイドには部下や配下などは存在しない。

 いるのは死んで闇の軍勢として取り込まれた者や魔物達だ。そこに意識などあるはずがなく、魔力が続く限り無限に蘇るのだから。

 フェイドはアゼッタに理解できるように説明する。


「俺には闇の軍勢がいる。ドラゴンもいるから上陸される前に空から一方的に殲滅するだけだ」

「闇の軍勢?」


 フェイドの力を一部しか見ていないアゼッタには『闇の軍勢』がどれほど強いのか理解できないでいた。

 ハウザーと戦った時にフェイドは、漆黒の、それも厄災と恐れられるドラゴンを呼び出していた。

 アレが闇の軍勢の一部なのだと考えたら、どれほどの軍勢がいるのか想像すらできなかった。


「そうだ。だから問題ない」


 それ以上は語ろうとしないフェイドに、アゼッタは問い詰めるのを引き下がった。

 それでもまだ納得できないでいた。


「そう。この私がしっかりとあなたを見極めます」

「勝手にしろ」


 フェイドにとってアゼッタもただの駒に過ぎず、それ以上でもそれ以下でもない。

 手を組んだエリシアの配下であるというだけで、これは互いに利用する関係なのだから。

 それから話すことはなかった。

 目的地の場所は出立前に聞いており、魔王城がある王都デルザストから東の要塞までは徒歩で四日の距離となっている。

 現在は二日目となっており、フェイドは退屈していた。

 フェイドだけではない。アゼッタや兵達も暇そうにしていた。


「俺に対する反発はないんだな」


 フェイドの何となく呟かれた言葉にアゼッタが当たり前のように答えた。


「それは魔王様がフェイドのことを話していますから。「魔王である私と対等な立場であり敵対することは許さぬ」と。私達にとって魔王様の命令は絶対です。人間であるあなたに敵意を持つ者もいるでしょうが、魔王様の命令には逆らえないのですよ」


 話を聞いたフェイドは「なるほどな」と感心していた。

 話すことがなくなり静かになる。聞こえるのは行軍の音と風邪で草木が揺れる音のみ。

 すると、フェイドの影から数匹の黒い鳥型の魔物が現れた。大きさは一メートルに満たない。

 突然現れた魔物にアゼッタが驚きの声を上げる。


「どこから⁉」

「落ち着け。暇だから周囲を偵察しておくだけだ。待ち伏せでもされていたら面倒だからな」

「……そうですか。ありがとうございます」


 空からの偵察は有難いので、アゼッタは素直にお礼を言った。


「気にするな」


 魔物は飛び立ちフェイドが目を瞑った。

 アゼッタはフェイドが目を瞑ったのを見て尋ねた。


「もしかして、視覚を共有しているの?」

「ああ。だが一匹しか共有ができない」


 目を瞑りながら答えるフェイドに、アゼッタは空からの偵察がどれだけ有利になるのかを考えていた。


「森の中でも魔力を感知できるから、隠れていても無駄だ」


 その言葉に驚くばかりであった。

 そして何事もなく数日が経過してフェイド達は東の要塞に到着するのだった。



最後までお読みいただいてありがとうございます!

次の更新は明日になります。


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