第六話 再び病院へ?
あれは確か、ある晴れた日の昼下がりだった。日向ぼっこでもしてノンビリ過ごそうと思ってた矢先にご主人が、
「ばんびぃの、病院に行くよ。」
(ん?病院?)
確かに前回は風邪をひいていたので仕方なかったが、ここんところ病気どころか風邪一つひいてないのである。
「おいお前!いや失礼。ご主人。私は健康だぞ!」
「私はどこも悪くはないぞ!」
「何を寝ぼけたこと言ってるんだ⁈」
などと最大限に抗ってみたが徒労に終わり、いつものお出掛け同様、いつ壊れてもおかしくないご主人の愛車の助手席に乗せられると無理矢理連れ出されたのである。
ところが、ところがである。
ご主人に連れて行かれた先は、先日の病院同様に診察台のようなモノはあったが、どうも雰囲気が違っていたのだ。
ご主人は私をそこの店員らしき女性に預けると
「じゃあ◯時に迎えに来まぁ〜す。」と言うとソソクサと帰ってしまったのである。
(薄情な奴め!呪ってやる!)
取り残された私は少々不安ではあったが、持ち前の好奇心旺盛な性格と相手が女性だということで腹を括った。
しかし、しかしである。
その後が大変だったのである。
私はキッチンのシンクのような所に入れられ、訳の分からない液体をかけられ、やたらワシャワシャと体を揉まれ始めたのだ。すると、その訳の分からない液体が泡立ち始めたではないか。初めてのことなので不気味な感じではあったが、しかしその気持ちの良さと言ったら今までに味わったことのないものだったのだ。
私は思わず
「チョ〜気持ちいい!」
「何も言えねェ〜」
と、あの水泳選手の有名なフレーズを口走っていたのである。
ワシャワシャが終わると、今度は診察台のような所に乗せられ温かい空気の出る機械を体にあてられたのだ。またまた、これも気持ちの良いものだったので、
本日2度目の
「チョ〜気持ちいい!」
「何も言えねェ〜」を発してしまったのである。
その後、ケツ、失礼、お尻の周りを何度も触られた。女性に触られてる気恥ずかしさで思わず赤面したが、私の全身は艶やかな黒毛で覆われているため、その赤面はほぼほぼ分からなかったようである。これは、お尻の近くにある穴から肛門線液なるモノを絞り出す【肛門線搾り】というらしい。これをやっておかないとダメなのだそうだ。
その後、爪を切られたり、耳の中の掃除をされたりと様々なことされたのである。
全てが終わると頭にリボンを付けられた。どうも可愛さをアピールさせたかったらしいが、こんなのが無くても私は充分可愛いのである。
つまり今回は、私が【美容院】を【病院】と聞き間違えたというのがオチである。
お後がよろしいようで。