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不良品の自宅療養

作者: クリエイターTなか

今年もすぐに流行りというものが、トレンドという名に変えて近くに現れる。

流行りとはやっかいなものだ。

いや、やっかいなものにかかってしまっただけなのかもしれない

コロナ

これを聞かない日がなくなってしまったほどの、世界的に流行ってるもの。

流行り?そういった言い方が正しいのはわからないが、猛威をふるってるのは確かだ。

俺はそんなやっかいなものにかかってしまったからやっかいだ。

本当にやっかいだ。

どこでかかったのかもよく分からないが、夜の町ってやつで生きてきていたら時間の問題なのかもしれない。

いやどこにいても時間の問題なのかもしれない。

誰でもかかる

そう言うのはかかった自分への言い訳になのかもしれない。

言い訳。する必要はあるのだろうか

抗体検査にはたいした時間はかからなかった。

鼻に綿棒のような物を突っ込まれて、それで終わり。痛みも一瞬だ。

検査結果は医者に聞くこともなくわかった。隔離だ

看護士は俺に声をかけると別室で待つように指示された。

検査を受けると決めた時から覚悟はしていたつもりだが、いざなっていると思うと変な汗が出るものだ。

焦り、いや、不安がとにかくあった。

体がやばくなること、働けなくなること、金がなくなること、誰にも会えなくなること。

だが、実際のところ本当は何にだったのだろうか。

医者の説明はシンプルなものだ。陽性反応。それが出ましたとさ

俺は僅かに思っていた。陰性なんじゃないかって

いや、ここまできたら言われたかったのかもしれない、たしかに陽性だと。

役所から連絡を待つために足早に家に帰った。

すれ違う人に申し訳なく感じる。誰も見ていないのに視線が冷たく感じる。

患者、犯罪者、いや、そんなものじゃない。

誰とも接触出来ず、話すことも出来ない、そして自分が必要じゃないと分かった時。俺は不良品になった。


初日は何も考えることや行動することも乏しくなる。

役所からの連絡はまだない。

食事をする。寝る。ただそれ以外にすることを思いつかない。

母親、職場に連絡をする。

心配の声をいただく

この時から俺は可哀想な人になる

可哀想な人

不安がよぎる

金銭面だってそうだ

動けなければ働けない

働かなければ金がない

金がなければ食べれない

食べられなければ生きていけない

悪循環は始まる

今はないのだ。これをたちきる方法が。

2021年

スタートってものがあるのなら、最悪のスタートだ。

スタートすることすら出来ないのだから。

ぼーっとスマホをいじる

ネットでコロナについて調べる

不安はさらに膨れ上がる

不良品の価値はさらになくなった。


2日目昨日とすることは変わらない

食事をして、寝る。スマホで動画や映画を観る。

内容は入ってこない。

またコロナについて調べる。不安ったやつがまた現れる。

気がつけば嗅覚が失われた。

臭いを感じない。自分は死ぬのだろうか。

味覚もなくなるという話を聞く。

これがなくなれば食欲も失ってしまうのだろう。

役所からの連絡はまだない。


3日目昨日とすることは変わらない

すると、スマホが鳴った。

知らない市内ナンバー。

時は来た。役所からの指示がきた。

症状について聞かれる。

会った人について聞かれる。

検査を受けるきっかけを聞かれる。

メモを取っておくべきだった。

久しぶりに声を出すのだから人と上手く会話をすることは出来ない。

俺には一緒に住んでる家族ってやつはいない。

彼女ってやつもいないし、友達もいない。

俺は元々品物でもないのかもしれない。

そんなやつが選べる選択肢は自宅療養。

もちろん外出は禁止だ。

禁煙、禁酒、当たり前のことを言われる。

なら、なぜ世の中に煙草や酒があるのだろう?

いや、そんなことはどうでもいい

それを求めても叶うことはないのだから。

話の最後に言われる

心を強く持てと

そういえば同じ事を検査を受けた医者にも言われた。

コロナは無症状のまま終わるものもいる。もちろん急変したり死に陥ったりするが、俺は今のところ嗅覚はやられてるが無症状。

病は気から。

ここで終わるわけにはいかない。

まだ始まってすらいないのだから。


4日目朝からLINEが鳴る。自宅療養患者用のアンケートが届く。ほとんどがはいといいえで答えるものだ。

咳は出るか?だるいか?鼻水や鼻づまりはないか?目が充血しているか?下痢はしているか?手足のふしぶしに痛みは感じるか?頭は痛いか?吐き気はあるか?または吐いたか?痙攣やしびれはあるか?生き苦しいか?

不幸中の幸いなのか、これに関しては全部いいえと答えることが出来た。

食欲はあるか?良く寝れているか?

これに関してははいと答える。

体温を答える。

酸素飽和度これに関してはわからないと答える。

このアンケートに答えると自分が正常なんじゃないかと思える。

だか、急変する。油断は出来ない。だけど何をすれば良いのかわからない。

良く食べて寝る。療養生活にはこれしかないのだ。

食事といえば、食料が、もう尽きている。

このような時の為に食料を備蓄しておくものなのだろう。自分を責めていてもしょうがない。

この街には出前業者がある。餓死することはなさそうだ。

気がつくとスマホの電話に起こされる。これまた知らない番号だ。

出るといきなりアナウンスが流れる。どうやらアンケートに答えないと安否確認をされるようだ。

1日2回。8時と15時。このアンケートにはしっかり答えよう。

電話にも出ない日が続くと役人や警察が家に入って来るようだから。

孤独死。

それを考えるとまた不安になる。


5日目することは変わらない。

少しだけ勉強を初めてみる。

社会復帰を考える。未来に向けているのか、過去を埋めようとしているとかはわからないが、価値をあることをしたい。

例え不良品でも。

LINEがなる、店にいるのかどうか?こんな俺でも仲間ってやつはいるようだ。

いない理由を話す。またここで俺は可哀想な人になる。

飯は食えているのか?何か運ぼうか?

人の優しさに触れる。

少し泣きそうになる。

心配して協力してくれる人がいる。

また、笑って飲みあいたい。

そういったことを考えると生きがいが生まれる。

俺はここでは終われない。

早く復帰しよう、まだ始まってもいないのだから。


6日目役所からの配膳はまだ届かない。

急にコロナ患者が増えたからてんやわんやしているのだろう。

体調は今日も悪くなっていない。

本当にコロナ患者なのだろうか?

だが、不安から運動をしたいなんて全く思わない。

熱が出る行為はしたくない。

気力が奪われていく。

時の流れも感じなくなる。

無症状で、無気力。

本当不良品になったものだ。

同じ療養生活をしている人と連絡を取る。

療養生活を分かってもらえるだけで少し安心する。

急変しないことを祈って。

今日も食べて寝る。


7日目まだ役所からの配膳は届かない。

今日も出前を頼む。

いろんな物を食べるのが楽しみになってきた。そりゃそうだ。

良く食べて良く寝る。これしか出来ないのだから。

この日は同級生の店の弁当をオーダーしてみた。袋を開けると中にはメッセージカードが入っていた。

ご注文ありがとうございます。またよろしくお願いいたします。と、

暖かいサービスに心が揺れた。

また人の優しさに触れた気がする。

優しい気持ちで食事をすると、元気になった気がした。

早く復帰して笑顔で、皆と食事をしたいものだ。


8日目10日間というゴールが見えて来た頃に、ようやく配膳が届いた。中身を開けると、レトルトのご飯22個、3ヶ月持つパンが5種類を2個ずつ、レトルトのカレーが2食分、160缶のオレンジキャロットジュースがワンケース。ティッシュとトイレットペーパーが入っていた。

ご飯に対してカレーの量って思ったが、貰えるものに文句を言ってもしょうがない。

物が届いただけでもありがたいのかもしれない。 

物が全く届かない人もいるようだ。

これ以上重症者や死者を増やすわけにはいかない。


9日目にまた役所から配膳が届いた。

冷凍のお好み焼き、冷凍のおがず盛り合わせが5種類。

こういうことだったのか。

下手にクレーム等しなくて本当に良かったと思う。

こう言った時の弁当なのか栄養バランスが取れているようなラインナップだった。

久しぶりに食べる食材が多い。

普段から食べるものは自分でチョイスしてきた。

食べるものをこっちが選べないのは本当に久しぶりのことだ。

たまには悪くないな。

食事が出来る喜びを感じるようになってきた。

たしかに、孤独ではあるけど、こうして配膳してくれる人がいるのだ。

人の優しさには触れていくものだ。

ゴールは近い今日も食べて寝る。


10日目いよいよ最終日だ。

役所からの追加のおがずが5種類届く。

もう最終日だがありがたい。冷凍食品だ。これからも食べ続けられる。

最終日と知ってる友人から連絡が届く。

お疲れ様でしたと。

実感がわかない。

だから振り返った。

この10日間を。

初めは信じることが出来なかった。

ネットにある情報や死亡することを聞くと、どんだけ辛い思いをするのかと。

辛いだけならいいのかもしれない。

死んでしまう。

これだけは避けたい。

ダメな時の相談窓口も紹介されていた。

そして何より急変したら救急車を呼べと。

だが、俺にはその機会はなかった。

無症状。

俺は本当にそうだったのだろうか?

自宅療養では全てが自己判断になる。それは宿泊療養でもそれは同じ事なのだろう。

それにまだ終わりではない。

まだ役所の人と話していないから。

これで終わりなのか?まだ続くのか?再検査をするのか?

聞きたいことをメモに取るようにアドバイスを受けて、連絡が来た時に話すことをまとめておいた。

向こうはとんでもなく忙しい。

チャンスは1度きりしかないのだ。

時は来た。

役所の人と話をする。

アンケートとほとんど変わらない内容。

最新の医療では発症後、又は検査が出てから10日間でウイルスは死亡すると言われている。

体の中に死亡したウイルスは残っているが、人に感染させる可能性は極めて低く、この時期に検査を受けると死んだウィルスに反応が出て陽性になるということ。

つまり、再検査の必要はない。

もちろんアンケートに書いてあることや、高熱が出ていないことが条件だ。

療養生活の終わりを告げられる。

明日から日常生活に戻って良いと。

日常生活って何なのだろうか?

素直に喜べない。

まだ不安は消えていない。

再発するのでは?人に感染させるのでは?

いや、むしろ不良品となった俺は社会復帰出来るのだろうか?

2週間仕事をしていない。職場の人に合わせる顔がない。

これからもまた悪循環が続いていく。

いや、だからこそ心を強くもとう。

明日から俺は外に出る。

不安を振り切り、不良品から品物になっていく。

そう俺には不要不休などもう存在しないのだ。





最後まで読んでいただきありがとうございました。

療養は各都道府県の指示に従ってください。

食料等の備蓄もしてください。

助けてくれる家族や友人を普段から大切にしてください。

フェイクニュースには気をつけてください。

例えかかっても心を強く持ってください。

そして今も心を強く。


コロナ終息を心から願っております。


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