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<R15>15歳未満の方は移動してください。

おねえさんが少年(?)にペロっとされちゃう話

作者: 沢木 香丹

初投稿になります。

豆腐メンタルです。

よろしくお願いします。

お下品なネタですので、ご注意ください。

キスまではR15、ですよね?


「っん……んふぅ……」


なぜに私は口付けをされてるんでしょうか?

しかも、結構濃厚なやつな気がする。

離れては寄せ、離れては寄せ。何度も唇で食まれる。

何だこれは、正直初めての感覚。


なんで、なんでこんな事に?


えっと確かそう、お客様にケーキを運んでたはずだ。

あと紅茶も。うちの紅茶とケーキは絶品。世界一。


「お待たせ致しました」


なんてパーフェクトな営業スマイルで完璧なサーブを披露した私はそのまま腕を引っ張られソファに座らされたんだったっけか。

なんてふかふかなソファ。さすが高級店だわなんて考えてたのも束の間、そのままのしかかられて今に至るわけだ。


「っふ……んむ……」


これは完全にセクハラだと思うんですよ。

店長、助けて! 私は今お客様にセクハラされてますよ! うっひゃあ、なんかヌメっとしたの入って来た!?


あぁ、なんだかすごく卑猥な音がするわ。ただキスしてるだけなのに……。


いやいや、私だって抵抗してないわけではないんですよ。

でもね、なんかこう、力が抜けるのよ。なにこれ。

押し返そうとする腕に力が入らない……。


「……っは。おねえさん、僕のお嫁さんになってください」


あー……糸引いてるー……。

ちょっと朦朧としてる私に向かって、とてつもなくいい笑顔で少年は言った。


そう、少年。

年の頃は10歳か12歳くらいだろうか?

赤い瞳を細めて笑う少年は綺麗な顔立ちをしていた。

そんな子供に組み敷かれ、えげつない口付けをされ、さらに求婚と来た。

意味がわからない。


「あれ、おねえさんもしかして、軽くイッちゃった?」

「教育的指導!!」

「痛いっ」


私の燃え盛る手刀が炸裂した。





====================





それから、少年は定期的にサロンに来るようになった。


「おっねえっさん! 結婚しよ」

「ぐっふっっ」


やめて、勢い良く抱きついて来ないで。

お腹に顔スリスリするのやめて、くすぐったいから!


「お客様、困ります」

「おーねーえーさーん、名前でよんでよぉ」

「お客様、困ります」

「ぶー」


私は真顔でやり過ごす事にした。完全に目が死んでいる。

口を尖らせてかわいい顔したって……したって……。


くっそかわいいなぁもうムカつく!!


「お客様、お席へご案内します」

「ねーえー、結婚してー」

「……大人になったらね」

「!! ほんと!? 絶対! 約束だよ!! 僕大人になるからね!」


あらあらうふふと、同僚たちは生暖かい目で私たちを見守っている。

やめて、まじで、未成年に手なんか出したら、犯罪だから。

私は少年が大人になる頃にはおばちゃんだよ。

その前にこの高級サロンで金持ちのイケメンゲットするんだから、少年には申し訳ないけど、君が望む未来は来ないんだよ。

だから諦めて可愛い女の子をってコラァ! キスしようとするんじゃない!


……っんむぅ! 舌を入れないで!!


「教育的指導!!」

「痛ぁーい」


私の燃える手刀が炸裂した。





====================





「会うたびにキスするの、やめなさい!」

「やだ、キスしたいもん」


ググッと背伸びして唇を寄せる少年。

私の首に腕を回してキスを強請るんじゃない! それは女の子がするから可愛いんだよ!

いやまぁ、少年も中性的で可愛い顔してるけどさ、20代の干物女にする事ないじゃないの。

少年の注文した紅茶とケーキをプレートに乗っけて持ってるもんだから、顔を反らすくらいしか抵抗方法がない。


「いいから席に座りなさい!!」


少年を座らせて紅茶をサーブする。

茶葉をクルッとするやつ、私上手くなったよ、店長!

いやほんと店長の紅茶トレーニング、超キツかったのよ。

そんなオニチク店長は今カウンターの隅で佇んでいる。

私が顔を向けるとサッと目を逸らしてしまう。

いや、グキィ、だ。首グキィって音がするんじゃないかってくらいの勢いで顔を背けられた。

なぜか少年のセクハラの時は助けてくれないダメ店長。貴方の筋肉は飾りですか? と、小1時間問い質したい。


「お待たせ致しました」


琥珀色の紅茶を少年の前に差し出す。


「えへへ、ありがとうおねえさん。あ、そうだ」


紅茶をひと口含んでから、少年は照れ笑いで言った。


「僕、精通したよ! 大人になった! 結婚して!」

「おばか!」

「いーたーいー」


私の手刀が炸裂した。





====================





「こんのエロクソガキィィ! 神聖魔法で消し去ってくれるわぁぁ!!!」


私はキレた。

ある日突然に。ではない。

これまで溜まりに溜まった鬱憤が爆発したのである。


度重なる私への狼藉、許すまじ。

子供を叱るのも、大人の務め。決して個人的な感情ではない。ないったら。


同僚も先輩も青い顔ででワタワタしてる。

店長なんか、カウンターの影から腕で大きくバッテン作ってるけどんな事知るか!


コンプライアァァァァァァアンス!!!


従業員助けてくれないダメ店長なんて知らん!


私の感情に呼応する様に、胸の前に白い光が収束していく。


元聖女舐めんなよ!!


たっぷり魔力を込めた超特大神聖魔法は、私の前で収縮し、そのまま消えていった。


ぽんっ


何とも気の抜けた音である。


「あ、あれ? 魔法が、使えな……い?」


私ボー然。一同安堵。


「そりゃそうだよおねえさん。口移しでたくさん僕の魔力注がれたんだから、反属性の神聖魔法なんか、使えるわけないじゃん」


少年キラキラいい笑顔。


「おねえさんは、僕色に染まっちゃったんだよ」


ニヤニヤすんな!


めっちゃ見下されてる!

私めっちゃ見下されてるぅぅ!!


給料が2カ月減った。





====================





「んんっ……む……」


最近、少年との攻防がめんどくさくなってきた気がする。

別に少年のキスは嫌いじゃない。ただほら、道徳的な問題で嫌なのよ。


「おねえさぁん……」


切ない顔して見つめてくる、熱っぽい赤い瞳は嫌いじゃない。


化粧室へ続く細い廊下。人気はない。

これはあれ、壁ドンってやつだ。

世の乙女にとってはロマンなのかもしれないけど、相手が少年じゃあ……いや、顔はいいのよ。でも子供はちょっと。


最近気がついたんだけど、少年はどうやらどっかのボンボンらしい。お金持ちって事。

だからさ、店長も見て見ぬ振りするし、廊下占領してても誰も文句言えない。

横暴じゃない? これだからお貴族様は。


とか言いつつ、私がこのサロンで働いてるのだって、イケメンなお金持ちと出会うためだし、でも相手は子供……うーん。


おでことおでこを擦り合わせて、瞳を覗き込んでくる。


「おねえさんの瞳、大分赤くなったね。もう僕と結婚するしかないよ」


そう、私の深い青の瞳が、最近燻んできた気がする。

神聖魔法の使いすぎで髪の色が抜けた事があったから、これもその類いだと思ってたんだけど。

これは赤く変色してきてるのか……。


「え、何で?」

「僕の魔力の影響だよ。本当はおねえさんのお腹の奥に直接魔力を注いであげたいんだけどね、それは結婚するまでお預けね!」

「教育的指導!」

「あ痛ぁーい」


やっぱムカつく。





====================





立っている私の頭に、少年の顎が乗る

背中からギュッと抱きしめられた。

おや、少年、いつの間にか私より背が高くなったんだね


「おねえさん、僕、家業を継いだんだ。だから結婚して」


あれ、あれれ?

つい最近まで私の腰くらいの身長だった少年が、何を言ってるの?


「おねえさん、好き」


おおっとぉ!?

耳許で囁くのはちょっとダメよ。低すぎず高すぎずな何とも艶かしい声で耳がゾクゾクする。

この間までの高音エンジェルボイスは何処へ!?


「好き」


後ろからぎゅうっと強い力で抱きしめられる。

少年の黒髪が、頬を掠めてくすぐったい。

ちょっと苦しいけど、むせる程でもない力加減が心地良くて、お腹の下あたりがムズムズする。


なんだこれ、不快。


私が混乱のあまり何も言えずにいると、体をくるっと回転させられた。

赤い瞳と見つめ合う。


「おねえさん、もしかして時間感覚バグってる? あぁ、そっか、寿命が伸びた弊害だね、そのうち慣れるよ」


腰を屈めて覗き込んでくる赤が、心配そうな色をする。


「寿命? どゆこと?」

「おねえさんと僕が出会ってから、20年くらい経ってるんだよ」


気付いてる? って、小首を傾げる少年は、男性の顔をしている。これじゃあ少年とは呼べないじゃないか。

あんなにくりくりだったぱっちりおめめは切れ長の怜悧な目に。

ぷくぷくのマシュマロみたいだった唇は薄く何とも艶かしい。

あと左右対象。笑うと右目の方が細くなるのは変わらないみたいだ。


「おーねーえーさーん? 聞いてる?」


あ、聞いてる聞いてる。

何だっけ、そう20年?

え、じゃあ私40代? もうおばちゃんじゃん。


「大丈夫だよ、おねえさんはずっと綺麗なまんま。魔王の伴侶は魔王と同じ時を生きるんだよ」

「は……? まお……う? 誰が? え?」

「僕が。あれ、稼業継いだって、説明したよね?」


ばかわいいー。とか言いながら鼻をツンツンするのはやめなさい。

潰れちゃうでしょ。


「おねえさん、僕のこと嫌い?」

「嫌い……ではない……よ」


上目遣いで見ないで欲しい。

そんな顔してももう可愛くは……絵になるなぁもう!


「じゃあ好き?」


「……す……んむぅ!」


だからね、あのね、舌入ってるんだってば!

もう少し上品なキスは出来ないわけ?

あーもう、別にいいかぁ……。


「……っは、あー。かわいい。結婚までお預けとか言ったけど、ちょっと我慢出来そうにない。いいよね、もう」


私の頭をこねくり回しながら、少年はとんでもない事を言い出した。


「はぁ!? ちょっと何言ってんの!?」

「てんちょーう! おねえさんは早退しまーす! あと明日お休みね!」


店長! 筋肉に見合った見事な敬礼ですね! っておい!


「早退!? いやいや、明日も仕事来るからね!?」

「何言ってんのおねえさん。仕事する体力なんて、残るわけないでしょ! これから朝までセッ……」

「おばか!! ちょっと! 抱えないでー!」


サロンのスタッフ達はいい笑顔で手を振ってる。

私を見捨てる気だ。薄情者!


「はーなーしーてー!!」


こうして私はみんなに見送られながらドナドナされたのであった。






「はーなーせー!」


「おねえさん、あんまり騒ぐと、その口塞いで腰砕けにするよ?」


!!??






おねえさん(21)

人族 人間種 聖女

青目 白髪(元茶髪)

勇者とその仲間たちが次々結婚していく中、自分だけ聖女として生涯乙女であり続ける為に神殿に篭る事を強制され逃亡。

教会の力が及ばない魔族領に移住。

お金持ち御用達のサロン・ド・テで、イケメン金持ちと結婚して乙女卒業するのが夢。

元聖女と本人は言っているが、乙女である限り聖女。


少年(43)

魔族 魔王種 魔王子

赤目 黒髪

魔王vs勇者を後学のために柱の影から見学していたところ、聖女が超特大神聖魔法で魔王城の半分を吹き飛ばした姿に一目惚れ。

魔族領に移住してきた聖女をドロドロのぐずぐずに甘やかしたい。

赤い瞳は、魔王種とその伴侶にのみ現れる色である事は、魔族領では常識。


年齢は魔族領移住時。歳の差(笑)

人間と魔族の関係とか、細かい設定は皆様のご想像にお任せします。


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